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時計仕掛けのオレンジ(1971年米) [日記(2008)]


時計じかけのオレンジ

時計じかけのオレンジ

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


 スタンリー・キューブリックの作品です。スタンリー・キューブリックと云えば『巨匠』ですから、その作品は無条件に傑作ということとなります。『時計仕掛けのオレンジ』なる傑作があると云うので観ました。
 冒頭の主人公アレックスの登場からして、なるほどキューブリックです。片目だけ「付けまつげ」を付け、シルクハットをかぶり鋭い目つきで登場します。カメラが「引いて」ゆくと、そこはクラブ?の様な場所で、テーブルはすべて白い裸体の女性マネキン。アレックスと同じ格好をした4人の若者が登場します。斬新です。彼らの服装も、揃いの白い上下にブーツ、シルクハット、男性の大事な部分を覆うプロテクター姿です。近未来という設定らしいのですが、時代未詳、場所不明、年齢不明。キューブリックは米国人ですから、アメリカだとばかり思っていたのですが、途中でお金の単位が「ペンス」だという会話があり、英国なのだ分かりました。おまけに喋る言葉は英語なのですが、スラングの連発です。1972年にこの映画を観た観客の驚きが想像されます。

 ストーリーはいたってノーマル。4人の若者の無軌道な非行とその顛末に、政治がからんだメッセージ性の強い映画です。非行グループ同士の乱闘、暴力、婦女暴行、強盗と何でもあり。優美なクラシックをバックに、シルクハットとプロテクター、ステッキを持ったアレックス達の非行は、観ていて気持ちがいいほどあっけらかんとしています。かっこいいですね。青少年に悪影響を与えると上映に制限がかかったことも頷けます。

 アレックスが殺人を犯し刑務所に入る辺りから、映画は本題に入ります。刑務所の過密状態を解消するため、特殊な精神治療を受け再犯の可能性が無くなった受刑者は短期間で出所できる、という制度を政府が実験します。この治療を受け、アレックスは14年の刑期を2年で出所します。この治療法が、ちょっと説得性に乏しいですが面白いです。軽いロボトミーの様な治療です。治療を受けると、暴力とセックスに精神と肉体が拒否反応を示し再犯をしないという理屈です。アレックスは、治療の副作用でベートーベンをの第九聞くと吐き気を催すようになります。
 『時計仕掛けのオレンジ』は音楽にも特徴があります。音楽は詳しくないのでwikiの受け売りですが、

・『交響曲第9番』ニ短調(ベートーヴェン)
・『泥棒かささぎ』序曲、『ウィリアム・テル』序曲(ロッシーニ)
・『威風堂々』第1番、第4番(エドワード・エルガー)
・『メアリー女王の葬送音楽』(ヘンリー・パーセル)
・『雨に唄えば』(アーサー・フリード)
・『シェヘラザード』(ニコライ・リムスキー=コルサコフ)

この第九のエピソードは何を意味しているのでしょう。『雨に歌えば』も事件のトリガーとして使われていますが、キューブリックですから、何かのメタファーでしょうね。
 何だかんだで、ストーリーはアレックスの治療を巡って、人権問題とする反体制派と治療を推し進めた体制との政争へと発展しますが、この辺りは退屈です。

 アレックスが治療を受けて軽いロボトミーになる辺りで、結末はアレックスの暴力的性格の再発だと予想したのですが、裏切られました。女性との絡みの場面で幕を閉じますから、アレックスは見事に「復活」したのでしょうが、単なる復活ではなく「更なる」復活を遂げてほしかった、というのが本音です。それとも原作の制約でしょうか。

 『時計仕掛けのオレンジ』はアレックスを演じたマルコム・マクダウェルでもっています、それも目で。演技がどうこう云う以前に、存在感がすごいです。この映画が面白いとすればそれはマルコム・マクダウェルの存在の故で、面白くないとすればそれはキューブリックの演出のせいです。

 良くも悪くも、映画がメッセージであること許された1970年代の映画ですね。

・製作・監督・脚本:スタンリー・キューブリック
・原作:アンソニー・バージェス
・キャスト
 アレックス:マルコム・マクダウェル
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