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フィリップ・マルマン 黄金の羅針盤 [日記(2008)]


黄金の羅針盤〈上〉—ライラの冒険

黄金の羅針盤〈上〉—ライラの冒険

  • 作者: フィリップ プルマン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/10
  • メディア: 文庫


 『ハリー・ポッター』『ナルニア国』などファンタジーが流行ってます。映画化された『ライラの冒険ー黄金の羅針盤』はヒットの様ですね。ファンタジーと云えば英国と相場が決まっていますが、本書も英国の大学の先生が書いた"Northrn Light/The Golden Compass”です。
冒頭に

 『黄金の羅針盤は全3作からなる物語の最初の部分をなしている。この
第1作の舞台は、我々の世界と似た世界であるが、多くの点で異なる。
第2作の舞台は、われわれが知っている世界である。
第3作は、各世界間を移動する。』

と、あります。ということは、この世界とファンタジーの世界がパラレルに存在し、3作目でこの二つの世界が接触あるいは融合されるということでしょうか。 ストーリーは、オックスフォード大学の学寮に住むヒロイン・ライラ、叔父で探検家のアスリエル卿、船上生活者ジプション(ジプシー?)が誘拐された子供たちを救い出し、その背後に潜む陰謀を暴くと云う冒険ファンタジーです。
 ファンタジーの例に漏れず、本書も時代が不明瞭です。硝酸銀の写真技術とスライド映写機があり、空には飛行船が行き交い、船はガスエンジンで進む様ですが、電話があるわけでも、ロンドンに地下鉄も走っていません。貨幣は金貨で、物理学上は素粒子の存在が知られています。ファンタジーにリアリズムを求める方がおかしいのでしょうが気になります。
 題名となっている黄金の羅針盤ですが、作中では『真理計』と書かれ、三本の短針を質問のシンボルに合わせると、四本目の長針が真理を指し示すという羅針盤です。

【守護霊=ダイモン】
 ライラの世界では、人間はだれしも守護霊を持ち守護霊と共に生きています。ライラの守護霊はパンタライモンといい、物語冒頭では蛾の姿で登場し、次いでオコジョ、ハリネズミへと変身します。この守護霊は何にでも(人間以外?)姿を変えることが出来るのです。守護霊は年をとるとともに変身をしなくなり、自分の一番気に入った姿を取るようになります。イルカとなった守護霊とともに死ぬまで海で暮らした水夫のエピソードが紹介されますが、人間は守護霊と離れて暮らすことは出来ません。人間が死ぬと守護霊も死に、コインとなって一緒に葬られます。

 本書で一番気に入っているのがこの守護霊=ダイモンの設定です。独立した人格を持った自分の分身というのはいいですね。何を象徴しているのかなどと詮索は抜きにして、時に助け合い時に反目し合う人間とダイモンの二人三脚が物語に大きな膨らみをもたらせています。ダイモンの存在そのものが大きなテーマとも言えるでしょう。何故なら、この世界ではダイモンを持つことが人間の証だからです。物語もこのダイモン存在がkeyとなっています。

【よろいグマ】
 映画でライラが駆る鎧を着た熊です。よろいグマ、イオレク・バーニソンの登場はふるっています。熊の国を追放され、鎧を失って人間の街でアルバイトをしています。アルバイトの報酬が酒と肉だと云うのは笑わせます。ライラと出会うのも、よろいグマが晩酌している場面です。

【ダスト】
 ダストで物語の幕が開き、ダストの謎を解きに北極に行った叔父を追ってライラの冒険が始まるのですから、ダイモンとともに物語のkeyなのでしょう。第1作ではもうひとつピンと来ません。パラレルワールドがダストで繋がっている様なので、第2作で明らかになるのでしょうか。

 ファンタジーと云うと、マキャモンの『少年時代』やキャロル・オコンネル『クリスマスに少女は還る』の様に現実世界の狭間からのぞく異世界は分かるのですが、本書の様に全編これ異世界の物語はついて行くのがしんどいです(年ですかね)。『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド゙』を始めとした村上春樹の小説は、ほとんどファンタジーですが。個人的にはこっち方が好みです。

で、世界的ベストセラーには申し訳ないのですが →★★
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コメント 2

Betty

大人になってファンタジーを楽しむのは難しくなってきますよね・・・
「ナルニア」は小学生時代に読んだので楽しめましたが「指輪物語」は大人になって読み始め断念しました><;
「ライラ」も映画で楽しむほうが良さそうですかね

映画の公式HPで、質問に答えてピッタリの「ダイモン」を教えてくれるコーナーがありました。(まだあるかな~)
わたしは「うさぎ」でした☆べっちゃんさんは何でしょうかね~^^


by Betty (2008-08-05 16:11) 

べっちゃん

ブラック・ファンタジー、サイエンス・ファンタジー?なら大人になっても楽しめます。ブラックやサイエンスはファンタジーでは無いかも。
by べっちゃん (2008-08-06 23:37) 

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