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A.J.クィネル 燃える男 [日記(2008)]


燃える男 (新潮文庫)

燃える男 (新潮文庫)

  • 作者: A.J. クィネル
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1994/12
  • メディア: 文庫


 解説によると、A.J.クィネルは『外人部隊や傭兵の経験があり、ヨーロッパ、アフリカ、中東、アジアの戦場渡り歩いた猛者』であり、本書は『40代の終わりまで人生の経験をしこたま詰め込み、満を侍して放った作品』だと云うことです。おまけに覆面作家だと云うのですから、興味津々ですね。

 主人公は、(上記の解説を信じるなら)作家を彷彿とさせる中年にしては少しトウたった49歳のアメリカ人の元傭兵・クリーシィ。(アメリカが介入する前のヴェトミンと戦った)ベトナム、ベルギー領コンゴ、アルジェリア、ルワンダと転戦した手榴弾とサブマシンガンの名手という設定です。しかもアル中。

 戦場以外生きる場所が無いにもかかわらず戦場から見放されたこの元傭兵が、イタリアの富豪のボディーガードとし生きる術を見つけることから物語は始まります。冒険小説としては静かな幕開けです。守る対象はなんと11歳の少女です。子供と接したことがない無骨な兵士と、兄弟もいない孤独な少女との交流は、後に用意される復讐と冒険を引き立たせる上でなかなかよくできています。殺し屋とかボディーガードと少年少女の組み合わせ等よくある設定ですね。ブルース・ウィルス、ケビン・コスナー、シュワルツネガーの映画もあったようです。

 第2部でクリーシィはアルコールと怠惰で鈍った体力の回復を図るため、マルタ島に渡ります。マルタ島で出会う人達が全員これ善意の塊。人生にとって何が大切で何が価値があるかを熟知した人々との交流が、マルタ島の風物、旨い酒と旨い食事ともに描かれます。これも、第3部の活劇の効果を高める伏線です。

 第3部は本書のクライマックス。シュワルツネッガーの『コマンドゥ』ですね(どっちが先?)。

【グィドーとサッタ】
 この二人が後半の物語に重要な役割を演じます。グィドーは傭兵時代の友人でペンションのオーナー。サッタは貴族の名門に生まれた憲兵隊・大佐です。
 クリーシィにボディーガードの職を世話したのはグィドーで、当然影でクリーシィを助けます。サッタは伊達で女性と美食に目が無いハンサムな38歳。サッタが女性を口説こうとするとクリーシィが何かをやらかし、緊急電話が鳴るという設定は笑わせます。後半、グィドーとサッタが狂言回しとなり物語を運びますが、このでこぼこ?コンビは本書の脇役としてはピカイチですね。

 翻訳は、冒険小説にしてはなかなか重厚で好感が持てます。

【クリーシィ・シリーズ】
・燃える男
・パーフェクトキル
・ブルーリング
・ブラックホーン
・地獄からのメッセージ

出張の友にはぴったり →★★★★

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