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吉村 昭 黒船 [日記(2008)]


黒船 (中公文庫)

黒船 (中公文庫)

  • 作者: 吉村 昭
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1994/06
  • メディア: 文庫


 ペリーの来航と開国を、幕府のオランダ語通詞・掘達之助の目を通して描いた幕末ものです。ペリー来航に際し達之助が通詞として活躍し、ささいな事で咎を受け入牢の憂き目を見る前半。達之助の語学の才能を惜しんだ幕府の蘭学者の招聘により蕃書調所で英和辞書の編纂に携わり、函館を経て故郷長崎で72歳の生涯を閉じる後半、の2部構成です。
 幕末というと尊皇攘夷を思い浮かべますが、作者は次第に英語に取って代わられるオランダ語の衰退や職能集団としての通詞を描くことにより、もうひとつの幕末の姿を見せてくれます。

 後書きで作者が書いていますが、『海の祭礼』に登場させた『掘達之助という人物になにか物悲しい気配を感じ、小説の対象として関心を抱いていた。』経緯のなかで、達之助の子孫から資料提供を受けその要請もあって本書を執筆してします。『黒船』を読んだ違和感はこうした経緯からきたものでしょうか。

 オランダ会話が如何に堪能であろうが、外交の舞台が英語に移る中で、通詞の主役を次々と後輩に奪われ、英和辞書編纂の栄誉も束の間函館へと異動を命じられ、確かに作者の意図する『なにか物悲しい気配』は伝わります。大黒屋光太夫や長英逃亡で描かれた完結した人生とは異なり、歴史の脇役にスポットを当てた小説ですから、そうなんでしょう。
 達之助の函館時代の挿話として、イギリス人によってアイヌの墓が暴かれ、遺骨が海外に持ち出される事件が描かれています。この挿話も主人公は函館奉行所の奉行・小出大和守で、達之助は最初に通訳として関わるだけで、もっぱら文書の翻訳に携わるだけです。異国人と云うだけで卑屈になる日本人ですが、一歩も引かずイギリス領事と交渉の末遺骨を取り戻すこの挿話は、これだけで一遍の小説になる程迫力があります。ただこのエピソードがこれほどの紙数を割いて本書で描かれる必然は、分かりません。本書は堀達之助の物語ではないかと思うのですが。

英和対訳袖珍辞書で検索をかけると、京都外大のHPに画像がありました、拝借。
英和対訳袖珍辞書.jpg 英和対訳袖珍2.jpg

吉村 昭にしては出来がいまひとつ →★★


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