SSブログ

映画 夏の夜は三たび微笑む(1955スェーデン) [日記(2010)]

夏の夜は三たび微笑む [DVD]
 難解、深刻と思いこんでいたイングマール・ベルイマンにも、こんな映画があるんですね。

7人の登場人物が夏の夜にくりひろげるロマンチック・コメディーです。ベルイマン版『夏の夜の夢』です。






エーゲルマン(グンナール・ビョルンストランド) ⇒50歳を過ぎた弁護士。
アン(ウーラ・ヤコブソン) ⇒エーゲルマンの妻、19歳で処女。
ヘンリック ⇒エーゲルマンの息子。神学生。
ペトラ(ハリエット・アンデルセン) ⇒エーゲルマン家の召使い。映画の狂言回し。
デジレー(エヴァ・ダールベック) ⇒女優。エーゲルマンの元愛人。エーゲルマンと同じ名前の息子がいる。
マルコム伯爵(ヤール・キューレ) ⇒軍人。デジレの愛人。
シャーロッテ ⇒マルコム伯爵婦人。
アルムフェルト婦人 ⇒デジレーの母親。デジレーに頼まれパーティーを開く。

 弁護士のエーゲルマンは妻に先立たれ、親子ほど歳の離れた妻アンと再婚しています。あまりの歳の差に気後れしたのかアンは何と未だ処女!。このストレスで未だ昔の愛人が忘れられない始末。エーゲルマンの息子ヘンリックは、あろうことかこの若い母親アンに恋慕を抱き、一方召使いペトラの肉体に翻弄されるという神学生。冒頭で、エーゲルマン一家の複雑な愛憎関係を手際よく描き、さすがベルイマン演出の技は冴え、舞台劇を見ているようです。

 エーゲルマン一家の四人だけでも相当に異常な関係ですが、これに加え、エーゲルマンの昔の愛人デジレー、デジレーの現在の愛人マルコム伯爵が登場し、ストーリーは錯綜して行きます。

 冒頭近くでエーゲルマンとアンが観劇に行き、劇中でデジレーが独白するシーンがあります。

男は自尊心の生き物
女は夫や恋人を裏切ってもいいけれど
自尊心だけは傷つけぬように
面倒なことになりますからね
むしろ男の自尊心を味方につけるのです
自尊心をくすぐり、なだめ、玩具のようにかわいがる
そうすれば男は女の思いのまま
どんなことでも許してくれますわ

それは真実の愛と両立するものかしら?

お忘れなきよう 恋愛はゲームです
玉は三つ 愛情、言葉、あそこ
操るのは簡単ですわ その一つを失うのもね

このセリフ通り物語は進行します。

この映画がよくできているのは、いくつもの心理的な三角関係をモザイクの様に組み合わせていることです。

●エーゲルマン、妻アン、息子ヘンリックの心理的葛藤の関係
●ヘンリックとアンと召使いペトラのゆるい関係
●エーゲルマン、女優デジレー、マルコム伯爵の文字通りの三角関係
●マルコム伯爵、伯爵夫人シャーロッテ、デジレーの関係

 デジレーの家でエーゲルマンとマルコム伯爵が鉢合わせしたことで、デジレーは『
みんなの幸せのため』にパーティーを開くことを決意します。招かれたのは当然ドラマの配役の7人。仕掛けたのはデジレーですから、ターゲットは男の自尊心、武器は三つの玉。
 このパーティーでキューピッドが矢を放つように、しかるべき関係が再編され、デジレーが望んだ『みんなの幸せ』が実現するのかどうか。

 『野いちご』『処女の泉』『叫びとささやき』『秋のソナタ』でベルイマンが苦手になった諸兄も、『夏の夜は三たび微笑む』はお楽しみいただけると思います、おすすめです。
『叫びとささやき』で黄泉がえりの次女を演じるハリエット・アンデルセンのきらきらと輝く姿を見ることもできます。

監督・脚本:イングマール・ベルイマン
出演:グンナール・ビョルンストランド ウーラ・ヤコブソン ハリエット・アンデルセン エヴァ・ダールベック ヤール・キューレ

夏の夜.JPG 夏の夜2.JPG


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0