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映画 逃走迷路(1942米) [日記(2011)]

 逃走迷路 [DVD]ヒッチコックが米国に渡って映画制作を始めた初期の作品です。1942年ですから第二次世界大戦の真っ最中で時代を反映した内容となっています。また、ヒッチコックがハリウッドに来て制作した映画ですから気負いの様なものを感じます。今観ると、その辺りに少し違和感を感じなくもありません。

 主人公バリー・ケイン(ロバート・カミングス)は飛行機工場の破壊工作事件に巻き込まれ警察に追われる身となります。潔白を証明するため、犯人と思われる男を捜して東部から西海岸へ、カリフォルニアからニューヨークへと旅と人との出会いが描かれるロードムービーのかたちをとっています。

 面白いのは、1943年の映画にアメリカの破壊活動分子を登場させたことです。いつの時代の何処の国にも反体制運動というものはあるんでしょうが、1943年の映画に彼らを登場させてこれを叩くという映画が国策に沿うほど、そうした分子がいたとも思われません。昭和18年の日本映画で共産党の非合法活動を描くようなものです。
 おまけに、バリーを助ける人たちや彼を巻き込んだ破壊工作組織が、これでいいのかなと思うほど反米的?。盲目の老人は、警察に追われていると分かっていて自分の直感でバリーを助けます。『時には法律を無視するのも国民の義務だ』とか言ってますが、検閲に引っかからなかったんでしょうか。
 このバリーを助ける人々の中に骸骨人間、ヒゲ女、小人、シャム双生児などのサーカスの一行がいます。虐げられる者同士の連帯で、バリーをかくまうのですが、こういうのもアリなんです。
 余談ですが、ここで『ロスト・チルドレン』を思い出しました。サーカスの奇人など、アメリカ人の監督なら絶対に登場させないと思うのですが、如何なものでしょう。

 ファシストかコミュニストか分かりませんが(原題はSaboteur)、破壊活動組織のほうも言いたい放題で『大衆は馬鹿だ』目覚めさせるのは俺たちだ、みたいな発言が出たり・・・アメリカっておおらかな国ですね(後のマッカーシズムもありますが)。

 こうして見ると、『俺はハリウッドに来たけど、アメリカには媚びないぞ』というヒッチコックの自負が透けて見えます。ヒロインのパットの描き方は意地悪です。バリーの味方のような、そうでもなさそうな中途半端さで、『ヒロインに美人女優を使えと言われているから使うけど』みたいな扱いです。
 ラストで、破壊活動組織のひとりを自由の女神のテッペンまで追いつめますが、犯人はバリーの手をすり抜けて転落してしまいます。自由の女神はアメリカの象徴でもあるのですが、これも斜めから見るとどいなんでしょう。反米分子の哀れな末路と考えるべきか、『手をすり抜けた』と見るかです。

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監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ロバート・カミングス プリシラ・レイン

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