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映画 ヒマラヤ杉に降る雪(1995米) [日記(2011)]

ヒマラヤ杉に降る雪 [DVD]
 一言で言ってしまうと、第二次世界大戦における米国の日系人排斥を背景に、偏見と差別によって殺人事件の被告となった日系人をめぐる法廷サスペンス。この殺人事件の謎に地元紙の新聞記者と被告の妻の過去を絡め、人種、祖国、偏見、愛、嫉妬が錯綜する人間ドラマに仕上がっています。

 第二次世界大戦が終わって10年近くが経つ1954年、ワシントン州の海辺の小さな町。殺人の容疑でカズオ・ミヤモト(リック・ユーン)の裁判が開廷されます。被害者は土地の譲渡でカズオともめていた事実が明らかになり、人種的偏見もあって状況証拠だけで逮捕されたわけです。

 この事件には、日系人が差別と闘いアメリカで生き抜いてきた歴史が背景にあります。1941年の真珠湾奇襲によって日米は交戦状態となり、アメリカの日系移民は財産を放棄させられ強制収容所に入れられます。カズオの父はアメリカ国籍を持つ息子の為に7エーカーの農地を買い取る契約をしていましたが、最後の2回の支払を残して収容所に送られ、土地はこの事件の被害者のものとなっていました。土地の買い戻し交渉の最中に死体となって網にかかったわけです。被害者の漁船からカズオのバッテリーが発見され、カズオの船からは被害者の血の付いた鈎竿が発見されます。

 この法廷ドラマに、地元記者イシュマエル(イーサン・ホーク)とカズオの妻ハツエ(工藤夕貴)の秘められた過去が重ねられます。ふたりは幼なじみで、結婚を約束する恋愛関係にあったわけですが、人種の壁を越えられずハツエは別れの手紙を書き同じ日系人のカズオを結婚します。
 地元の新聞記者としてイシュマエルはこの事件を取材し、カズオが無罪である証拠を見つけ出しますが、過去のわだかまりでカズオを助けることにためらいが生じます。このあたりを弁護士(マックス・フォン・シドー)はイシュマエルにこんな風に諭します。

おまえさんのハツエを見つめる目つきでだいたい想像はつくがね、
It takes a rare thing, a turning point, to free one's self from any obsession.Be it prejudice or hate or even love.
(自分を執着から解き放つことは難しいことだ。それが偏見、憎しみまたは愛でも。)

なかなか渋いです。この弁護士は、私は棺桶に片足突っ込んでいる老いぼれだ、とか言いながら、なかなかどうして迫力があります。
 イシュマエルはハツエたち家族と弁護士、判事に真実を告げ、カズオは無罪となります。
 カナダ国境に近いワシントン州の灰色の自然描写がすばらしいです。イーサン・ホークの訴えるような眼差し、工藤夕貴の耐える表情もこの自然があってはじめて生きてくるのではないかと思います。お薦めです。

脇役に渋い役者を集めています、知っているのこの3人。

保安官:リチャード・ジェンキンス ⇒『扉をたたく人
弁護士:マックス・フォン・シドー  ⇒『野いちご』『処女の泉
判事:ジェームズ・クロムウェル   ⇒『LAコンフィデンシャル

マックス・フォン・シドーはイングマール・ベルイマンの初期の作品の常連です。『レナードの朝』『潜水服は蝶の夢を見る』にも出ていて、最近では『シャッター・アイランド』『ロビン・フッド』にも出演しています。
 監督は、『シャイン』『アトランティスのこころ』『幸せのレシピ』のスコット・ヒックス。
 原作『殺人容疑(デイヴィッド グターソン)』が評判良さそうなので読んでみます(読んでみました)、但し絶版。

殺人容疑 (講談社文庫)

殺人容疑 (講談社文庫)

  • 作者: デイヴィッド グターソン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/09
  • メディア: 文庫
監督:スコット・ヒックス
出演:イーサン・ホーク 工藤夕貴 リチャード・ジェンキンス マックス・フォン・シドー

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