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映画 パットン大戦車軍団(1970米) [日記(2012)]

パットン大戦車軍団 (特別編) [DVD]
 タイトルを見て大スペクタクル戦争映画を期待しましたが、見事裏切られました。当然に戦車は登場し、パットン大戦車軍団がかの「砂漠の狐」ロンメルと派手に戦車戦を演じてくれますが、映画の実態は「偉大なる時代遅れ」(アナクロニズム)のアメリカ陸軍大将ジョージ・パットンの物語です。これは歓迎すべき期待ハズレで、ジョージ・C・スコット演じる口の悪い頑固親爺パットン将軍は最高です。

 アメリカの軍人と云うと、日本人ならGHQ司令官マッカーサーを連想します。パットンは、戦車にその名を残す以外もうひとつ馴染みがありませんが、東南アジアで軍政に携わったマッカーサーに比べて、北アフリカ、ヨーロッパでナチスドイツと戦ったパットンの方がはるかに絵になる軍人の様です。
 自らを、カルタゴのハンニバル、ナポレオン・ボナパルトの生まれ変わりと信じ、カルタゴの古戦場跡でハンニバルとして戦った己を振り返り、雪の戦場ではモスクワから撤退するナポレオンに思いを馳せるという自己陶酔型。ドイツ人に「パットンは現代に迷い込んだロマンの騎士」と分析されていますがその通りですね。
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カルタゴの古戦場                 ロンメルを叩く 
 
 パットンは有言実行の人なのですが、とにかく一言多く、言わないでもいいことを言って周りの、特にアメリカ政府中枢の顰蹙を買います。そこがまた魅力でもあるわけですが、かつての副官で今では追い越されて上官にあたるブラッドレーから「君は忠実で献身的な名指揮官だが、黙り所を心得ない」とか言われています。「黙り所を心得ない」、これは耳が痛いです(笑。

 北アフリカでロンメルの戦車軍団を破り(ロンメルは既にいなかったらしい)、イタリアではシチリア島を解放し、ノルマンディーで第3軍を率いてからは破竹の進撃。例のバルジ大作戦でドイツを叩き降伏に追い込みます。
 ドイツが降伏した祝賀会で、ソ連の将軍が乾杯しないかと誘います。その時のパットンの答えが振るっています、

ソ連のクズ野郎とは飲みたくない(パットン)
そう言うお前もクズ野郎だ(ソ連将軍)
OK、それに乾杯だ(パットン)

 まぁ演出でしょうがありそうな話です。
 
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 OK、それに乾杯だ!
 
 一方これは事実らしいですが、パットンは占領したバイエルンで、郵便や鉄道事業を引き続きナチ党員にやらせています。これを記者会見で突かれ、ナチスも民主党、共和党と同じようなものであると言う発言をして、第3軍の司令官を首になります(首にしたのはアイゼンハワー)。
 
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お前はクビだ! 左 からブラッドレー、アイゼンハワー、パットン
 
 映画では遺族に配慮して、民主党、共和党云々は記者の誘導尋問を装ってぼかしてあります。ドイツはナチの一党独裁ですから、政党に入るとすればナチしか無いわけで、そう言う意味では民主党も共和党も一緒じゃないか。郵便や鉄道は、ナチであろうが無かろうが、そのまま現職にやらせたほうがうまくゆく。この考えは合理的ですが、ホロコーストのナチですから、言い過ぎでしょうね。ブラッドレーの言う「黙り所を心得ない」見本みたいなものです。

 この唯我独尊の将軍パットンが、WWⅡの北アフリカ、ヨーロッパ戦線を駆け抜ける映画ですが、ある種の爽やかさを感じます。

 パットンを演じたジョージ・C・スコットは、この映画でノミネートされたアカデミー主演男優賞を辞退しています。そういう意味では、一徹な役者が一徹な軍人をものの見事に演じた、と云えるのではないでしょうか。一言多い直言居士にはお薦めの映画です。

監督:フランクリン・J・シャフナー
出演:ジョージ・C・スコット カール・マルデン

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