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BSシネマ 映画 羅生門 デジタル完全版(1950日) [日記(2012)]

羅生門 デジタル完全版 [DVD]
 原作は芥川龍之介の「藪の中」。ひとつの殺人事件が、それに係わった4人によって4つの「真相」が語られるという、「真相は藪の中」の物語です。

杣売り(志村喬)
事件の第一発見者。市女笠、烏帽子、切られた「縄」、短刀などの遺留品と侍の惨殺死体を発見し検非違使に届け出る。後、事件の一部終始の目撃者であることが発覚する。
 
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多襄丸(三船敏郎)
 盗賊。人妻・真砂に懸想しこれを襲って陵辱する。加害者として事件を語る。
 出来れば殺人を避けたかった多襄丸は、武士を騙して縛り上げ、武士の目の前で真砂を陵辱する。陵辱された真砂は、多襄丸と武士(夫)が戦い、勝った方の妻となると多襄丸をけしかける。多襄丸は戦いに勝ち武士を殺すが、戦いの最中に真砂は消えてしまう。
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武士(森雅之)
 事件の被害者。妻・真砂と共に旅?の途中、多襄丸に妻を奪われ命を落とす。巫女の口を借りて事件の真相を語り始める。
 多襄丸に肌を許したばかりか多襄丸の妻となることを承諾し、夫の殺害を依頼する。多襄丸は真砂の頼みに腹を立て、真砂を生かすも殺すも武士の一存であることを告げる。その間に真砂は逃亡してしまった。武士は自分の運命に絶望し自殺を図る。
 
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真砂(京マチ子)
 多襄丸によって陵辱され姿を消す。後、検非違使に現れ陵辱の被害者として事件を語る。
 多襄丸は陵辱の後に姿を消す。犯された自分を見る夫の目は軽蔑の眼差しでであり、それに耐えきれず自分を殺してくれと夫に頼む。錯乱状態で夫を殺してしまい、自分も死のうとするが死にきれなかった。
 
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再度、杣売り
 実は、杣売りは事件の一部終始を見ていた。真砂を犯した多襄丸は真砂の魅力の虜となり妻となることを迫る。真砂は、目の前で妻を犯されてなお手をこまねいている夫をなじり、多襄丸には腕ずくで自分を奪えとふたりをけしかける。多襄丸は武士と闘いこれを殺すが、真砂を許すことができずこれも殺そうとするが逃げられてしまう。杣売りは、真砂が残した短刀を盗む。

 多襄丸、武士、真砂とそれぞれ自分に都合のよい供述をさせて謎を深めておいて、最後に杣売りに真実を述べさせると云う構造です。さらに、棄てられた赤ん坊を登場させ、生きるために赤ん坊の着ていた着物を剥ぐリアリストとして下人(上田吉二郎)、赤ん坊の運命を心配するヒューマニスト旅の僧(千秋実)を登場させ、最後は杣売りが「6人育てるも7人育てるも同じだ」と赤ん坊を育てる決意をするところで終わっています。餓死するか盗賊になるかという暗黒の平安時代を、人間の善意という希望で締めくくったわけです。

 というラストシーンは映画を完結させるために謂わばデッチ上げられた結末です。杣売りによって語られる「真実」も同様で、事件の真相を宙ぶらりんにする訳にはいかないために作られた「真実」でしょう。「羅生門」が1951年のヴェネツィア国際映画祭グランプリを受賞した理由は、まさに「真相は藪の中」にあるこの世の不可思議さ、人間のエゴイズムを描いたために他なりません。
 もうひとつの重要な要素が、真砂です。多襄丸の供述では、真砂は、多襄丸と武士が闘って生き残った方と連れ添いたいと云う提案をします。また武士は、犯された後の真砂の表情は武士がかつて見たことがないほど美しかったた云い、多襄丸と添うためには夫を殺してくれと頼みます。この存在そのものが不可思議で魔性の女性・真砂こそがこの映画の主題ではないかと思います。
 いみじくも下人が言います。「女という者は、涙で人を欺し自分さえ欺してしまう。」この辺りはあまり深追いすると何処からか文句が出そうなので止めますが、男にとって女性とは永遠に謎の存在ですね(笑。
 この女性の「謎」を、ある時は少女の如くある時は娼婦の如く演じるのが京マチ子。「雨月物語(1953)」でも男を取り殺す死霊をやってますが、この女優さんは魔性を演じさせれば一番かもしれません。
 
監督:黒澤明
出演:京マチ子 三船敏郎 森雅之 志村喬 千秋実 上田吉二郎

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