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映画 シャイニング(1980英米) [日記(2013)]

シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン [DVD]
 先日、『2001年宇宙の旅』を見て、キューブリックは難解でもないじゃないかと調子にのり、今度は有名なホラー『シャイニング』です。ホラーというの『アザーズ』辺りならなんとかなるのですが、どうも苦手です。‘巨匠’キューブリックのホラーというのも興味があります。

 オーバールック・ホテルというリゾートホテルの冬季管理人に雇われた作家ジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)が、狂気の末妻子を殺害するという話です(正確には殺害しようとする物語です)。
 
 ホテルは冬の6ヶ月間、雪のために閉鎖されます。外界から隔絶された孤独に耐え切れず、狂気の果てに斧で妻と2人の娘を惨殺して切り刻んで自殺した管理人がいた、というネタ振りがあります。このホテルは、アメリカ先住民の墓地の上に建てられたいうのですが、この辺りも...。
 もうひとつネタ振りは、作家の息子ダニー(ダニー・ロイド)。ダニーはその登場からしてあやしさ満点。頭のなかにトニーと称するもうひとりの人格を飼っている二重人格者で、ホテルに行く前から、大量の血が噴出るエレベーターや怪しい双子の幻覚を見ます。ホテルのコックは、ダニーを‘シャイニング(超能力者)’だと見抜きます。このコックも‘シャイニング’で、ホテルには過去の出来事の痕跡が染み付いている、特に237号室には近寄るなとダニーに警告します。
 まぁもっとも怪しいのが主人公のジャック・トランスですね。もっとも、ジャック・ニコルソンが演じると、どんな人物でも怪しくなってしまいます。もうひとり、ジャックの妻ウェンディ(シェリー・デュヴァル)、この人も特異な風貌で怪しさ満点、モディリアーニの描く女性そっくり。
 ということで、怪しい親子3人が、従業員が去り雪に閉ざされたオーバールック・ホテルで生活を始めます。
 
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 トランス一家                    ジャック・トランス
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 妻ウェンデ                    超能力者  ダニー

【死霊たち】
 ‘シャイニング’のダニーは、さっそくエレベターからあふれる血の洪水と双子の姉妹、姉妹の惨殺死体の幻覚を見、237号室に入って首を締められたような傷を負います。
 ジャックもまた、小説執筆が進まない苛立ちや、ホテルに閉じ込められたストレスから幻覚を見始めます。誰もいない筈のホテルのバーでバーテンからスコッチを振る舞われ、237号室では全裸の美女が腐乱死体となる幻覚を体験します。ホテルでは舞踏会が開かれ、着飾った男女が踊り、ジャックは妻子を斧で殺した管理人に出会います。ジャックは幻覚を見ても不思議ともなんとも思わないわけで、この時点でもう狂っているということです。
 双子の姉妹も237号室の美女も、パーティに集う男女も、このオーバールック・ホテルに棲む「地縛霊」のようなもの。コックがダニー話したように、人と人が行き交い様々な事件が起きるホテルにはその痕跡が残されている。そして、オーバールック・ホテルに流れる時間の裏には、こうした過去の痕跡が息づいている、そういうことなんでしょう。
 元管理人は、この霊の世界に取り込まれて妻子を殺し、ジャックもまた幻覚を見ることで徐々に霊の世界に取り込まれます。そして、元管理人に促されてウェンディとダニーの殺害を企てることとなります。
 
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 ダニーの幻覚
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 謎の237号室                   ジャックの幻覚
 
【迷路】
 この映画にはいろいろ不思議な映像が挟まれているます。ダニーやジャックの幻覚は、ストーリーの一部ですから何の不思議見ありません。ところが、これです。
 
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          迷路の模型の中にウェンディとダニーが映っている
 
 ホテルには生け垣で作った迷路があり、この迷路でウェンディとダニーが遊ぶシーンです。まずタイプライターがアップで移り、続いてジャックが壁にボールを投げつけるシーンにパンし、ジャックはロビーにある迷路の模型に近づきます。そして、ジャックはこの模型の迷路の中に小さなウェンディとダニーを発見します。しかも模型の中で動き回るふたりを見ても、驚く様子も見せません。
 
 ふたつの勝手な想像が成り立ちます。このシーンで
 
①ジャックは既に狂っていた、ホテルに棲む霊の世界に取り込まれていた
②ジャックは正常でありジャックの妄想を映像化したものである
 
わたしは後者ではないかと思います。タイプライターのアップが出ますから、ここから以降はすべて「小説の世界だよ」と言っているのだと思います。
 この後、ジャックが小説を執筆する(タイプライターを叩く)シーン、ジャックとウェンディのちょっとした諍いが入り、

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 雪で覆われたオーバールック・ホテルの前で、ウェンディとダニーが遊ぶ姿を見つめるシーンです。これはもう狂っているとしか見えません。但し、狂っているのは、ジャックが書いた小説の中のジャックです。
 『シャイニング』の世界はジャックの書いた小説世界なのです →ホンマカ?。

【謎の写真】
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 『シャイニング』はこの写真のクローズアップで終わります。
 舞踏会の記念写真のようで、‘Overlook Hotel July 4th Ball 1921’と記され、この写真が1921年に撮られたものであることが分かります(ちなみにホテルは1907年創建)。
 写真には、「いらっしゃい」と言うように手を広げてジャック・トランスが映っています。1921年にジャックがこのホテルにいるはずはありません。この舞踏会は、ジャックが紛れ込んだ霊たちの舞踏会を連想します。ジャックは、殺そうとしたウェンディとダニーに逃げられ、迷路で迷って凍死します。死んで後、オーバールック・ホテルの霊たちの世界に仲間入りを果たした、そういうことでしょう。ある意味、めでたしめでたし。

 古いホテルに霊たちが棲みつき、夜な夜な舞踏会を開いている世界、その世界に紛れ込んだ男の物語。それとも、外界と隔絶された世界で次第に狂気に蝕まれ、妻子を殺害しようとする男の物語なのか。それとも一冬の管理人生活の間に、作家が書いたホラー小説の再現なのか。どうとでもとれます、というところがこの映画の面白さでしょう。
 で、お薦めかというと、ジャック・ニコルソンの狂気、シェリー・デュヴァルの恐怖、ダニー・ロイドの幻覚、これは見ものです。

 ホラー映画はほとんど見ないので、『シャイニング』がホラーの傑作であるのかどうかよく分かりません。『シャイニング』には143分版と119分版があるようで、わたしが見たのは119分版です。143分版も見てみたいです。
 
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監督:スタンリー・キューブリック
原作:スティーブン・キング
出演:ジャック・ニコルソン シェリー・デュヴァル ダニー・ロイド

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