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映画 サラの鍵(2011仏) [日記(2013)]

サラの鍵 [DVD]
 ナチのホロコーストを背景とした映画です。1942年に屋内競輪場に「狩り集め」られたパリのユダヤ人(ヴェル・ディヴ事件)の運命を描いている点で、『黄色い星の子どもたち』とよく似ています。女性ジャーナリストが、1942年のユダヤ人少女サラの姿を追うというミステリの構図をとり、現在と1942年の過去のふたつの時間軸を持つ映画です。

 米国人のジャーナリスト・ジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、ナチのホロコーストを取材するうちに、転居しようというパリのアパートが、ホロコーストの舞台となっていたことを知ります。
 ナチに命じられたヴィシー政権は、ユダヤ人をアパートから追い出し、屋内競輪場に集め、男女子供を分けて各地の収容所に送りました。ジュリアのアパートにも多くのユダヤ人が住んでおり、転居予定のアパートの部屋には1942年当時スタルジンスキという一家が住んでいたことが判明します。スタルジンスキ夫妻は東欧の収容所で殺されていますが、ふたりの子供、サラ・スタルジンスキとその弟は行方不明となっていることを知り、ここからジュリアのサラ姉弟探索が始まります。

【サラの物語】
 アパートから追い立てられる時、サラはとっさの判断で弟を納戸に隠し外から鍵を掛けます。タイトルの『サラの鍵』の謂れです。サラたちは屋内競輪場に集められそこから収容所に送られますが、アパートに残してきた弟が気になって仕方がありません。ここから、サラの弟救出劇が始まります。

 サラは収容状を脱走しパリに向かう途中、デュフォール(ニエル・アレストリュプ)という老人夫妻に助けられ匿われます。デュフォールは、脱走したユダヤの少女だと知ってサラを追っ払いますが、同じく脱走した少女が病気になり、老人の犬とともに納屋で寝ている姿を見て同情心が湧くわけです。サラたちを救ったのは、この犬かも知れません(犬好きにはちょっと胸に滲みます)。
 病気の少女は亡くなり、ユダヤ人隠匿はナチの知るところとなりますが、老夫婦はサラを守り通します。
 サラとデュフォール夫婦は、納戸に閉じ込めた弟を救出するためパリに向かいます。サラがアパートを出てから何日、何週間が経過しているのか明らかにされませんが、弟は餓死しているものと思われます。サラの渡した一瓶の水であるいは生き延びているかも知れません。生きていて欲しいと願うサラに感情移入し、果たして生きているのか?という‘suspense’が観客を引っ張ってゆきます。
 サラのアパートの部屋には新たにフランス人が入居しています。新しい住人と老夫婦の前でサラが納戸の鍵を開けると、そこには変わり果てた弟の姿が現れます。

【ジュリアの物語】
 ジュリアはサラのその後を追跡するわけですが、同時にもうひとつのサイドストーリーが展開します。ジュリアは45歳で二人目の子供を妊りますが、夫はこの妊娠を喜ばず、ジュリアに中絶を言い渡します。「いのち」の話しです。ホロコーストも中絶も命を「摘む」ということにおいては同じ意味を持ちます。ユダヤ人絶滅収容所で命を摘まれた子供たちのように、ジュリアに芽生えた命もまた摘み取られるのか、です。

 サラと弟について新たな事実が、それも夫の父親からもたらされます。サラとデュフォール夫婦が弟の遺体を発見した現場にいたフランス人とは、この義父とその父親だったのです。この偶然が、さらにジュリアの探索を後押しします。

 ジュリアは、サラを追跡するうちにデュフォール夫婦に行き当たります。デュフォール老人の孫を探し当て、サラは、デュフォール夫婦に引き取られますが、ある日突然に失踪した事実を知ります。その後一度だけ結婚を知らせる手紙がNYのブルックリン?から来たことで、サラ追跡の舞台はNYに移ります。

 デュフォール夫婦のもとから失踪したサラはNYに渡り、アメリカ人と結婚しますが、ひとり息子を残して交通事故で亡くなっていたことが判明します。サラ追跡の中で、ジュリアは子供を生むことを決意したようです。

 ジュリアの旅は、サラのひとり息子の住むイタリアへと続きます。サラの息子ウィリアム(エイダン・クイン)は、サラがユダヤ人であることに衝撃を受け、ジュリアンの探すサラが母親であることを認めません。サラの半生を知ったウィリアムは、NYの祖父(サラの夫)を訪ね、祖父から母親の遺品を受け取り、サラの事故が自殺であったことを知らされます。
 サラの遺品からは弟を閉じ込めた納戸の「鍵」が発見され、納戸に閉じ込めて死なせてしまった弟を忘れることができず、自責の念で自らいのちを断ったことが明かされます。

 ウィリアムはジュリアと再会し、ジュリアの娘の名が「サラ」であることを知ります。この映画で語られるのは、いのちの連環の物語です。
 この手の映画には弱いので、文句なくお薦めです。

【この手の映画】
ヒトラーの贋札(独墺)
愛を読むひと(米独)
ライフ・イズ・ビューティフル(伊)
イングロリアス・バスターズ(米独)
ディファイアンス(米)
黄色い星の子どもたち(仏)
ブラックブック(蘭独英ベルギー)
戦場のピアニスト(仏独伊ポーランド)
暗い日曜日(独ハンガリー)

監督:ジル・パケ=ブランネール
出演:クリスティン・スコット・トーマス メリュジーヌ・マヤンス ニエル・アレストリュプ エイダン・クイン

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cocoa051

なかなか平和がやってきませんね。
by cocoa051 (2013-12-28 15:18) 

べっちゃん

ホロコーストがなぜ起こったのか知りたくて『ヒトラーの戦い』を読み始めたのですが、途中で止まってます。来年は、全10巻、頑張ります。
by べっちゃん (2013-12-28 22:09) 

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