SSブログ

映画 アウェイ・フロム・ハー君を想う(2006加) [日記(2013)]

アウェイ・フロム・ハー 君を想う <デラックス版> [DVD]
 原題はaway from herですから、「彼女から遠く離れて」となり、「君を想う」という文言がくっつくと、これはもうラブストーリーということになります。ところが最後まで見ると、これはラブストーリーどころか、辛口のドラマだということが分かります。何も、アルツハイマーが背景になっているということだけではありません。
 原作は、先日ノーベル文学賞に輝いたアリス・マンロー、監督が、『死ぬまでにしたい10のこと』『あなたになら言える秘密のこと』のサラ・ポーリー。

 元大学教師グラント(ゴードン・ピンセント)とフィオーナ(ジュリー・クリスティ)夫婦の物語です。結婚して44年、カナダの田舎に隠棲して暮らすふたりに、突然老いが襲いかかります。フィオーナがアルツハイマーを発症したのです。家に帰れなくなったり、ワインの名前を忘れたり、自分が消えてゆくようだというフィオーナの言葉は、身につまされます。アルツハイマーは、最近の記憶は消えてゆきますが昔の記憶は残っているようで、ふたりの過去が徐々に明らかにされます。グラントは大学教師の頃、教え子との浮気騒動をお越し、再出発のために20年前にこの田舎に引っ越してきたようです。フィオーナは、グラントが女子大生と手当たり次第に付き合い、それでも私を棄てなかったと言います。グラントの身勝手を非難するでもなく、妻を棄てなかった彼を褒めるでもなく、この言葉は、通奏低音としてストーリーの最期まで奏でられます。
 
vlcsnap-2013-12-29-22h25m11s83.jpg vlcsnap-2013-12-29-22h27m03s175.jpg

 フィオーナは施設に入ることを自ら望みます。施設に入ると、30日間は家族との面接は禁止されます。44年の結婚生活で30日はほんの短い期間だとフィオーナは言いますが、この30日が映画のターニングポイント。30日後グラントが面会に訪れると、フィオーナはグラントが夫であることを忘れ、同じ入居者のオーブリーと恋に陥っていました。グラントはフィオーナの記憶を取り戻そうと、毎日のように施設に通いますが、そこで目にするのは記憶を失った妻と彼女の恋です。目の前で妻の恋を見せつけられるわけですから、これはなかなか切ないです。グラントは、これはフィオーナの復讐の演技ではないだろうかと、自らの過ちを重ねあわせるわけです。こなると、「君を想う」という邦題は、吹っ飛んでしまいます。
 経済的理由でオーブリーが施設を出たことで、フィオーナの病状は悪化します。自分の殻に閉じこもり外界との接触を絶つようになり、重症患者のための病棟に移ります。

 グラントは、妻を助けるためにオーブリーを施設に戻そうと自宅を訪ねます。グラントの愛情の深さです。そして、オーブリーの妻マリアン(オリンピア・デュカキス)と出会い、第3幕が始まります。
 認知症で妻を失ったグラントと、同じく認知症で夫を失ったマリアンは親しい関係になります。これは、恋とは少し違い、妻と夫を失った男女が心の空白を埋めるようにお互いが寄り添う、ということなのでしょうか。監督サラ・ポーリーの演出は、もう少し残酷です。
 
vlcsnap-2013-12-30-10h29m31s105.jpg vlcsnap-2013-12-30-10h33m00s153.jpg
 
ここからネタバレ



 グラントとマリアンは、オーブリーを施設に戻し、同居するという約束ができたようです。グラントはオーブリーを連れて施設に戻り、フィオーナと再会させようとします。フィオーナの記憶からはすでにオーブリーが消え、グラントが毎日のようにフィオーナを訪れ、本を読んでくれた記憶が甦っていたのです。そして、私を棄てなかったとフィオーナはつぶやき、棄ててもいいとつぶやきます。フィオーナはとまどいを見せるグラントの胸に飛び込み、幕。
 
 ジュリー・クリスティというと『ドクトル・ジバゴ』のラーラですね。40年経って美貌に年輪が加わりました。『遥か群衆を離れて』もよかった。
 これはお薦めです。『アウェイ・フロム・ハー 君を裏切る』というタイトルがふさわしいような映画です。老いるということは、大変なことなんだと思います。

監督:サラ・ポーリー
出演:ジュリー・クリスティ、ゴードン・ピンセント、オリンピア・デュカキス

nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0