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映画 天井桟敷の人々(1946仏) (1)『犯罪大通り』 [日記(2014)]

天井桟敷の人々 HDニューマスター版 [DVD]
 『嘆きのテレーズ』が面白かったので、同じ監督マルセル・カルネの名作の誉高い『天井桟敷の人々』を見てみました。
 1946年の映画ですからさすがに古いです。セリフも大げさで時代がかっています。どうしても映画にリアルさを求めてしまいますが、劇的空間でヒーロー、ヒロインが語るセリフですから、これでいいんでしょう。と考えると、フレデリックの「愛するふたりにはパリも狭い」とか、ガランスの「恋なんて簡単」も、モントレー伯爵の歯の浮くような愛の告白も、フレデリックの饒舌も、これはこれでなかなかのものです。作り物を作り物として楽しむと云うことなんでしょう。脚本は、『枯葉』の作詞をした、詩人のジャック・プレヴェールだそうです。
 映画は3時間の長編で、第一部『犯罪大通り』、第二部『白い男』の2部分かれています。インターミッションが入るようなものです。
 一見カラーのようなパッケージですが、モノクロームです。モノクロームのほうが雰囲気が出ます。
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犯罪大通り                     バチストのパントマイム 
 
 『犯罪大通り』は、劇場や見世物小屋、怪しげな店が並ぶパリの盛り場の俗称。時代は19世紀、この『犯罪大通り』にある芝居小屋「フュナンビュール座」とそこに集う人々が舞台です。フュナンビュール座の出し物は無言劇、パントマイムです。登場人物にセリフは無く、音楽とパントマイムの道化芝居です。タイトルの「天井桟敷の人々」とは芝居小屋の天井近くにある「桟敷」のことで、舞台から一番遠い格安の席です。映画でもたびたび登場しますが、「天井桟敷の人々」は野次をとばし、気に入らない芝居には「金を返せ!」と騒ぎ立てます。座長のフュナンビュールは、「天井桟敷の人々」こそが本当の芝居好き、芝居の真の評価者だと言ってます。

 『犯罪大通り』の雑踏に次々と登場人物が現れ、手際よく紹介されます。
 後にフュナンビュール座の役者となりバチストの恋敵となる役者のフレデリック、フレデリックが声を掛ける美貌の女性ガランス(アルレッティ)、表稼業は代書屋の犯罪者ラスネール。そして劇場の呼び込みの傍らに、案山子の様に「フュナンビュール座」の役者バチスト(ジャン=ルイ・バロー)が登場します。
 この呼び込みを見ている紳士のポケットからラスネールが金時計を掏摸取り、横にいたガランスに嫌疑がかかります。ガランスの疑いを晴らしたのが、一部終始を見ていたバチスト。バチストはパントマイムでガランスの無実を「証言」し、バチストとガランスの運命的な出会いが描かれます。鮮やかな幕開けです。

 続いてシーンは「フュナンビュール座」に移り、無言劇と天井桟敷から野次を飛ばす観客、楽屋裏の芸人たちが描かれます。パリ下町の芝居小屋の雰囲気はかくの如しというシーンです。フレデリックはフュナンビュール座に就職が決まり、座長の娘ナタリーがバチストを愛していることが明かされ、登場人物が揃います。
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  無言劇                       天井桟敷 
 
 第一部では、美貌の女芸人ガランスを中心に、バチスト、フレデリック、モントレー伯爵、ラスネール、ナタリーのそれぞれの成就しない恋が描かれます。バチストは「犯罪大通り」で初めて会ってガランスに一目惚れ、ガランスもバチストに好意を寄せますがフレデリックと暮らし始めます。フレデリックはガランスを手に入れたものの、ガランスの心の奥にバチストへの愛を感じ取り、ナタリーはバチストが振り向いてくれない事を嘆きます。
 「恋なんて簡単よ」とささやく妖艶なガランスに、バチストも観客も翻弄されることとなります。ガランスをめぐるバチスト、フレデリック、ナタリーの関係が、無言劇の劇中劇として演じられます。白衣装のピエロ(第二部の白い男、バチスト)が女神(ガランス)に恋をし、女神はギター弾きの男(フレデリック)の誘惑に乗せられて舞台を去ります。悲嘆にくれる白い男が、樹の枝にロープを架ける首を吊ろうとした時に洗濯女(ナタリー)が現れ、ロープに洗濯物を干し始めます...。四人の関係を寓話的に描いたこの無言劇は、ジャン=ルイ・バローの名演技もあって見応えがあります。
 ジャン=ルイ・バローは、身振り手振りで恋に身悶えするバチストを演じますが、セリフの無い「無言劇」はまるで舞踏のようです。
 
 「フュナンビュール座」に出演するガランスを見て、その美貌の虜になるモントレー伯爵が登場します。伯爵は花束をもってガランスの楽屋を訪れ、ガランスに愛を告白し、富と身分でガランスを口説きますが誇り高いガランスは拒絶します。ガランスは、(後に自ら語るように)孤児として育ち、洗濯女、モデル、役者と職業を転々とした女性の誇りでしょう。バチストに密かに想いを寄せながらもフレデリックと同棲し、ラスネールの様な悪党とも付き合いのある奔放な女性。そんなガランスが、地位も富もあるモントレー伯爵を袖にします。女心はよく分からない、と云うのが第一幕『犯罪大通り』。
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ガランス                       バチスト
 
 3時間10分は長いですね。感想も、(2)へつづく
 
監督:マルセル・カルネ
脚本:ジャック・プレヴェール
出演:アルレッティ ジャン=ルイ・バロー ピエール・ブラッスール マルセル・エラン ピエール・ルノワール

タグ:映画
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