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映画 天井桟敷の人々(1946仏) (2) 『白い男』 [日記(2014)]

天井桟敷の人々 [DVD]
《お断り →ダラダラと長いです》

 第一部『犯罪大通り』は、ガランスをめぐる恋の輪舞曲ですが、第二部『白い男』は、ガランスをめぐる男たちの嫉妬の物語です。

 第一部から6年後、ガランスはモントレー伯爵と生活を共にし(結婚はしていない)、バチストはナタリーと結婚してフュナンビュール座の花形役者となり、フレディックは無言劇を捨てシェイクスピア劇で主演を演じていますからこちらも成功者。
 ガランスとモントレー伯爵が外国から帰ってきたことで、また恋のロンドが回り始めます。

【嫉妬】
 バチスタを忘れられないガランスは密かにフュナンビュール座に通い、これも無言劇を見に行ったフレデリックはガランスと再会します。フレデリックはガランスに再会し、今なおガランスがバチスタを忘れられないこと知り、嫉妬に駆られます。「君らのおかげで、私はついにオセロを演じることができる!」と。シェイクスピアの「オセロ」は、不倫を疑い妻を殺す嫉妬の物語です。この後、映画は男たちの嫉妬がストーリーを回転させていきます。

 ガランスの帰国を聞きつけ、ラスネールはガランスに会いに行きます。このふたりの関係は、、「15歳で親を無くした私を男たちは放って置かなかった」と自ら述べていますから、かつて関係があったのでしょう。ラスネールは、モントレー伯爵の事実上の妻となったガランスを忘れられず、激しい嫉妬の炎を燃やします。ラスネールは、ガランスがモントレーの富に眼が眩んで情婦となったのならこんなに嫉妬しない、モントレーの女でありながら自己を放棄していないから嫉妬するんだ、と言います。
 モントレー伯爵は、ガランスの窮地を救ったことで一緒に暮らすようになったのですが、ガランスに愛されていないことを知っています。ガランスが青年に笑いかけたというだけで、その青年を決闘の挙句に殺したことが明らかにされ、ガランスを訪ねたラスネールにも嫉妬します。
 ガランスをめぐる嫉妬は男たちだけではなく、バチストの妻ナタリーをも巻き込みます。無言劇を見にフュナンビュール座を訪れたガランスに、息子を差し向け、私たちの幸せを壊すなと伝言します。

 バチストはというと、フュナンビュールでガランスを見かけただけで昔の恋が燃え上がり、挙句の果てに公演をすっぽかして恋の悩みで雲隠れ。妻子もある身ながら、6年も前のそれも実らなかった恋に執着するのですから、純粋というか身勝手な男です。そんなバチストを、6年間も想い続けていたガランスという女性も不思議な存在で、6年間モントレーの女でありながらバチストを想い続けていたために堕落することも無かった、とラスネールに告白しています。これがまたラスネールの嫉妬に火を付けます。
 ラスネールは殺人も犯す悪党。嫉妬からバチストとフレデリックを殺そうとしたことがあると告白しています。フレデリックを殺そうと楽屋に訪ねるシーンは描かれています。恐喝に行ってあっさりとフレデリックが金を出したので、殺人とはなりませんでした。

【嫉妬の果て】
 フレデリックの「オセロ」がハネた後、モントレー伯爵はフレデリックの演技とシェイクスピアに難癖をつけ、フレデリックとモントレーは決闘ということにまでなります。そこへラスネールが割り込みます。「オセロ」の悪口を云うモントレー伯爵に、コキュ(寝取られ夫)はオセロではなくアンタの方だ、とカーテンを開けてテラスで密会するガランスとバチストの姿を見せます。そう、バチストもまたフレデリックのオセロを見に来ていたのです。面目を潰されたモントレー伯爵はラスネールを劇場から追い出し、フレデリックとは決闘をすることになり、ガランスとバチストは「今夜は帰さないよ」となります(そんなことは言ってませんが)。
 登場人物が一同に会する劇的なシーンです。三人の男が嫉妬に狂って争い、当のガランスは恋人に抱かれるわけです。

 ラスネールは、劇場を追い出された腹いせにモントレー伯爵を刺殺します。不思議なことに、モントレーを殺した後ラスネールは逃げません。おまけにニヤッと笑っています。この笑いは謎です。

 では、バチストだけが幸運のクジを引き当てたのかというと、そうでもありません。バチストは、ガランスを初めて会った思い出の部屋に連れて行き、6年前の想いを遂げます。翌朝、さぁふたりで新天地へ!というところにナタリーが現れ、愁嘆場が演じられます。ガランスは、ナタリーの出現とは関係なく、バチストと新天地へゆくつもりは無かったと思われます。この愁嘆場の隙に部屋から出てゆきます。犯罪大通りは折からのカーニバル、バチストはガランスを追いかけ、ガランスはカーニバルの群衆に消えます・・・幕。

 4人の男とひとりの女(正確にはふたり)が織りなす、メロドラマです。バチストとガランスはお互いに惹かれながらもすれ違い、ガランスはフレデリックの、後にはモントレー伯爵の女となりますが、心はバチストの上に留まったままで、フレデリックとモントレーは満たされぬ愛に苦しみます。ラスネールは、ガランスに昔の愛を求めますが、ガランスの身体はモントレーに奪われ、その心はバチストに奪われます。バチストはナタリーと結婚しますが、彼女を棄てガランスの元に走ります。ガランスの周りを惑星のように回る、愛と嫉妬のメロドラマです。

 長くなったので、(3)に続きます(未だあるのあかぁ!)。

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