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映画 オリバー!(1968英) BSシネマ [日記(2014)]

オリバー! [DVD]
 チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツイスト』を原作にしたミュージカルです。以前、ポランスキーの『オリバー・ツィスト』を見ましたが、これがロマンスキー?と面白くもなんとも無かったです。ミュージカルということもあるのですが、今回は楽しく見ることができました。
 話というのは、ミュージカルもポランスキーも同じです、たぶん孤児のオリバーが孤児救済院を抜けだしてロンドンに出て、子供のスリ集団に入って犯罪に巻き込まれ、最後は身内の叔父さんか誰かに助けられてhappy endという話です。

 孤児院で暮らすオリバー(マーク・レスタ)は、夕御飯のお粥をもう一杯くれと言った(言わされた)ばっかりに葬儀屋に売り飛ばされます。葬儀屋を逃げ出してロンドンに行き、ストリート・キッズのジャック(ジャック・ワイルド)と出会います。ジャックは子供ばかりのスリ集団の一員で、ジャックの紹介で子供のスリを束ねるフェイギン(ロン・ムーディー)という老人の家で暮らし始めます。

 フェイギンは、子どもたちがスリ取ってきたものを横流しする故買屋です。タイトルにあるオリバー君が主役だとは思うのですが、中盤からフェイギンが影の主役を演じます。ちなみにポランスキーの映画では、このフェイギンをオスカー俳優のベン・キングスレーが演じていました。ベン・キングスレーの演じるフェイギンは、子供に悪事を働かせてその上前をはねるシャーロック(ベニスの商人)のような悪役のイメージでしたが、こちらのフェイギンは、ミュージカルということもあって、歌って踊ってかなりコミカルな老人です。ロンドンの孤児たちに宿と食事を提供し、彼らがカッパラってきたものを巻き上げるという、共存共栄のような関係を結んでいます。孤児のスリ集団とそれを牛耳る老人という陰惨な設定も、歌って踊ると、陽気な人生!という雰囲気なります。
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 フェイギンは、殺人事件に巻き込まれそうになって、この商売から足を洗って結婚しようかなどと迷うシーンがあります。毎日職場に通って上司に気を使う生活など出来そうにもない、やはりこの道しかないと歌い、一旦逃げ出しかけてまた元に戻るのですが、笑えます。ラストで、溜め込んだ宝石貴金属を無くすのですが、またイチからやり直そうとジャックと共に朝日に向かって消えるシーンもなかなかのものです。
 この映画監督は、『第三の男』のキャロル・リードなんですね。

 もうひとり、酒場の女ナンシー(シャニ・ウォリス)が重要な役どころで登場します。ナンシーはフェイギンに盗品を売るビル(オリヴァー・リード)の情婦。ビルに誘拐されたオリバーを恋人を裏切って助け、最後はビルに殺されます。このナンシーが“as long as he need me”と切々と慕情を歌うわけで、なかなか泣かせます。オリバーを逃がすために酒場で歌うのが“oom-pah-pah”で、これ有名ですから私でも耳にしたことがあります。最後はあっけなく殺されるのですが、フェイギンに次ぐ第2の影の主役であることは間違いありません。

 『オリバー!』はフェイギンとナンシーでもっているようなもので、ロンドンの下層で生きる彼、彼女が主役と考えると、俄然おもしろいです。チャールズ・ディケンズの原作は、オリバーを主人公としたビルドゥングスロマンのようですが、キャロル・リードはこれを換骨奪胎、ロンドンの犯罪集団のミュージカルに仕立てあげたわけです。
 歌と踊りを楽しめて、これはおすすめの一本です。『シカゴ』も面白かったので、ちょっとミュージカルも見ようかと思います。
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監督:キャロル・リード
出演:マーク・レスター ジャック・ワイルド ロム・ムーディー ジャニ・ウォリス オリヴァー・リード

タグ:BSシネマ
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