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村上春樹 女のいない男たち [日記(2015)]

女のいない男たち
 5人の『女のいない男たち』の物語です。
 
ドライブ・マイ・カー
 「あの手が、あの指が妻の裸の身体を撫でたのだ、と家福は思った。

イエスタディ
 「サリンジャーの『フライニーとズーイ』の関西語訳なんて出ていないでしょう?
 「出たらおれは買うで
私も買います。ついでに云うと、源氏物語の現代語訳は京都弁で書くべき →谷崎さん。

独立器官
 「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものがうまれつき具わっている。
実感!。

シェラザード
 「千夜一夜物語」のシェラザードのように、週に二度語り手のアパートを訪れ、抱き合い、物語をして帰るという主婦の話です。
 シェラザードが17歳の頃、片想いの男子生徒の家に忍び込み、彼の持ち物を丹念に調べ、鉛筆を一本盗み代わりに生理用品を置いてくるという奇妙な「空き巣」の物語が語り継がれます。丸善にレモンを置いてきた梶井基次郎の女高生版です。
語り手は、シェラザードが訪れなくなることを怖れ、

女を失うというのは結局のところそういうことなのだ。現実の中に組み込まれていながら、それでいて現実を無効化してくれる特殊な時間、それが女たちの提供してくれるものだった。

ともっともらしいことを思うのですが、主婦シェラザードは魅力的です。

木野
 出張から1日早く帰ったため、会社の同僚の上に裸でまたがる妻を見た木野の話です。木野はすぐさま会社を辞め離婚してバーを始めます。そのバーをめぐる怪異譚です。

そう、蛇というものはもともと両義的な生き物なのよ。そして中でもいちばん大きくて賢い蛇は、自分が殺されることのないよう、心臓を別のところ隠しておくの。

 なにものとも知れぬものが、(たぶん)木野の隠した心臓を探して部屋をノックします。

女のいない男たち
 「女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。一人の女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ。

 タイトル通り"boy meets a girl"の短編集です。この短編集で魅力的な登場人物は、《イエスタディ》の木樽と《シェラザード》の主婦です。
 《イエスタディ》は、阪神タイガースのために関西弁を習得したの浪人・生木樽の話(彼は生まれも育ちも田園調布)で、木樽が関西弁でビートルズの"イエスタディ"を歌うと

昨日は/あしたのおとといで
おとといのあしたや

となり、彼はサリンジャーの『フライニーとズーイ』の関西語訳が出たら買いたいと言います。語り手は、この不思議な浪人生の恋人とデートをするのですが、恋人はミニスカートの似合う美人で上智大学の仏文科の学生。デートは、ウッディ・アレンの映画を見、イタリアン・レストランでピザを食べキャンティーワインを飲むというもの。語り手が村上であるなら、小説の舞台は1969年です。当時、高倉健の任侠映画を見て「王将」で餃子を食べビールを飲むという「地方」の青春もあったのではないかと思いますが(笑。

 詰めが甘かったのですが、『1Q84』でいいところまで追い込んだ主題を放り出して、村上春樹はいつまでこんな小説を書いているんでしょう。

タグ:読書
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