SSブログ

映画 フィクサー(2007米) [日記(2015)]

フィクサー [Blu-ray]
 原題、“Michael Clayton”。誰でも連想するのは、マイケル・クライトン(Michael Crichton)ですが、無関係。
 弁護士には、訴訟を取り扱う法廷弁護士、もっぱら書類に埋もれる事務弁護士、企業に雇われて法務を担当する企業内弁護士があり、この映画の主人公マイケル・クレイトン(ジョージ・クルーニー)は「フィクサー(揉み消し屋、掃除屋)」と呼ばれる弁護士です。「揉み消し屋」とは穏やかではありませんが、事件は示談で解決する場合が多いですから、このフィクサー弁護士の活躍の場は多そうです。

【クレイトン】
 主人公であるクレイトンは、17年も勤めたにもかかわらず弁護士事務所のパートナー(共同経営者)になれず、フィクサーという汚れ役を担当させられています。仕事の憂さをギャンブルで紛らわし、離婚した息子と週1回会うことが唯一の楽しみという、NYの弁護士にしては冴えない生活です。「フィクサー」の将来に不安を感じたクレイトンは、レストランの経営に乗り出しますが、従兄弟に金を持ち逃げされ逆に多大な借金を抱えてしまいます。この「個人的な問題」が延々と描かれますが、ラストを華やかにする伏線です。
【アーサー】
 農薬会社が自社製品で大きな環境汚染を引き起こし、30億ドル集団訴訟を起こされます。会社側に立ってこの訴訟を担当するのが、クレイトンが属する弁護士事務所の同僚アーサー(トム・ウィルキンソン)。アーサーは、農薬が人体に深刻な影響を与えると云うことを知りながら販売を続けたという会社の内部文書を入手し、犯罪を犯した会社を弁護することに疑問を感じ精神のバランスを失います。これを克服したアーサーは、依頼人を裏切り原告側に協力して農薬会社の不正を暴こうとします。
【カレン】
 『フィクサー』には、もうひとり弁護士が登場します。農薬会社の企業内弁護士カレン(ティルダ・スウィントン)。カレンは、農薬の薬害を隠蔽して訴訟を和解に持ち込むことが仕事です。カレンにはアーサーにあった倫理感は無く、会社の利益を守ることに腐心し、ついには殺し屋を使ってアーサーを殺し真相に近づくクレイトンの車に爆薬を仕掛けます。嘱託殺人は極端ですが、カレンが和解のために演説のリハーサルをする孤独な姿は、企業内弁護士という職業と倫理の間で引き裂かれる姿に他なりません。この演技でティルダ・スウィントンはオスカー助演女優賞です。

 和解に持ち込みたい弁護士事務所は、クレイトンにこの問題の「揉み消し」を命じます。アーサーの死の真相を知り薬害事件を知ったフィクサー・クレイトンは、如何なる「掃除、揉み消し」を行うのか、これが『フィクサー』の核心です。
 クレイトンの幼い息子が読むファンタジー『王国と征服』という架空の本が登場します。この本には「崇高な目的のために招集された」主人公たちが登場するようで、アーサーとクレイトンは「崇高な目的のために」行動を起こす仕組みになっています。

 クレイトンの破綻した生活、アーサーの奇矯な行動、クレイトンの車の爆破から始まり、『王国と征服』という架空のファンタジーが登場するなど構造が複雑ですが、それなりによく練られたストーリーで面白いです。

監督:トニー・ギルロイ
出演:ジョージ・クルーニー トム・ウィルキンソン ティルダ・スウィントン シドニー・ポラック

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0