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映画 ミケランジェロの暗号(2011墺) [日記(2016)]

ミケランジェロの暗号 [DVD]
 ナチスというのは芸術についてこだわりを持っていたようで、ナチス好みの美術品を集めた「大ドイツ芸術展」や反ナチ的な作品を集めた「頽廃芸術展」を催したり、ヒトラーやゲーリングはダ・ヴィンチ、ラファエロを始め美術品の収集に余念がなかったようです。収集というより、圧力をかけて巻き上げる、ユダヤ人から略奪するというもので、ゲーリングに至っては、「退廃芸術」として没収したピカソやゴーギャンの絵を横取りしていたようです。そうやって集めた美術品が戦争のドサクサで行方不明になり、21世紀にひょっこり出てきてはニュースになっています。

 冒頭、ナチスの飛行機がレジスタンスによって撃墜され、親衛隊(以下SS)大尉とユダヤ人の二人が助かります。SS大尉の名はスメカル、ユダヤ人は画商のヴィクトル・カウフマン。『ミケランジェロの暗号』は、ナチスの美術品略奪をベースに、ミケランジェロの絵をめぐるこのSSとユダヤ人の物語です。
 1938年、ウィーンのユダヤ人の画商カウフマン一家は、ナチスに財産を没収され収容所に送られます。1938年という年は、ドイツ(ナチス)がオーストリアを併合した年で、ドイツではユダヤ人迫害(水晶の夜)が始まった年です。カウフマンがミケランジェロの絵画を秘蔵していることが知れ、SSが現れます。カウフマンはいち早く絵を隠し、スイスへの亡命と交換に精巧な偽物を渡します
 実は、ミケランジェロの絵をカウフマンが持っていることをSSに漏らしたのは、カウフマン家の使用人の息子、カウフマンの息子ヴィクトル(モーリッツ・ブライプトロイ)と兄弟同然に育ったスメカル(ゲオルク・フリードリヒ)でした。スメカルはアーリア人ですがカウフマン一族の使用人でユダヤ人に使われる身分。ミケランジェロの絵をナチスに引き渡す代わりにSSの身分を手に入れ一気に身分的上昇を図ろうとしたのです。おまけにヴィクトルの婚約者まで我が物にするという厚かましさ。

 ここから、ナチスによるユダヤ人迫害のシリアスなドラマがコメディに変わります。ミケランジェロの絵が偽物であるあることが判明し、スメカルはヴィクトルを拷問にかけるためウィーンからベルリンへ飛行機で飛びます。つまり冒頭の、飛行機事故に繋がるわけです。
 事故で助かったふたりは近くの小屋にたどり着きます。この小屋がレジスタンスの小屋であったことで、ふたりの運命が入れ替わります。レジスタンスに発見されればSSのスメカルの命は無いわけで、スメカルとヴィクトルは制服を交換します。ユダヤ人収容所の囚人服を着た親衛隊員と、SSの制服を着たユダヤ人のコンビが出来上がります。ところが二人を発見したのはドイツ軍だったという皮肉な結果。オレがスメカルだと言っても誰も信用せず、ふたりのスメカルに困惑したSSはどうやって黒白をつけたのか?、これが面白いです。ユダヤ人なら割礼している筈だとスメカルを調べると、見事割礼の痕跡があります。これは包茎手術の痕ダ! →コメディです。ユダヤ人がSSの制服を着て「ハイル、ヒトラー」 →制服を着れば誰でもSSになれるというブラックコメディです。日本人には大してブラックでもありませんが、オーストリア、ドイツでは結構ブラックなのかもしれません。
 ミケランジェロの絵はどうなったか?、ヴィクトルはとSSの身分とユダヤ人スメカルを利用して絵と婚約者、収容所から母親を取り戻して(父親は収容所で亡くなっていた)ハッピーエンド。
 原題は"Mein bester Feind" →"My best Enemy"、これもブラックユーモアでしょう。「ミケランジェロの暗号」というタイトルは、中身とほとんど関係ありません。

 ヒトラーやゲーリング、「大ドイツ芸術展」や「頽廃芸術展」も登場しませんから、もうひとつ奥行きに欠けます。

監督:ヴォルフガング・ムルンベルガー
出演:モーリッツ・ブライプトロイ ゲオルク・フリードリヒ

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