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映画 麻雀放浪記(1984日) [日記(2016)]

麻雀放浪記 角川映画 THE BEST [DVD]
 原作は阿佐田哲也の同名小説、監督がイラストレーターの和田誠という異色の映画です。
 今時麻雀などやる人はあまりいないでしょうが、教室で見つからない友人は雀荘を探せば大抵会えると言う時代に育った人間には、郷愁の一編です。

 映画は、「東京の花売り娘」をバックに戦後の焼け野原から始まり、主人公の「坊や哲」と「上州虎」が出会いバラック小屋に消えます。見ている方は、違和感なく昭和21年の東京にタイムスリップします。監督の和田誠はこの映画が第一作なのですが、鮮やかな立ち上がりです。
 小屋では賭場が立ち、怪しげな面々がサイコロを振ります。出てくるのは内藤陳、篠原勝之、天本英世、 鹿賀丈史。この賭場で、坊や哲(真田広之)上州虎(名古屋章)ドサ健(鹿賀丈史)が出会い、女衒の達(加藤健一)出目徳(高品格)を加えて『麻雀放浪記』がスタートします。

 いずれも賭け麻雀で飯を喰っている勝負師。現在では最早絵になりそうもないバイニン(麻雀師)も、秩序が崩れ去った戦後の混乱期、焼け跡に現れるとリアリティがあります。秩序が崩れているから当然古くからの倫理、道徳も消しとんで、刹那的な世界、弱肉強食の世界が出現し、そこに賽の目、牌に人生を賭ける博徒が現れたわけです。

 主人公の坊や哲は狂言回しで、ストーリーの軸はドサ健とその愛人まゆみ(大竹しのぶ)です。敗けの込んだドサ健は、まゆみを娼婦に売った金で乾坤一擲の勝負に挑み、まゆみはドサ健を助けるために家の権利書を差し出し、身を売ことも厭わないという倒錯の恋がデンと座り込みます。まゆみを買うのが女衒の達で、ドサ健はまゆみを取り戻すために出目徳、女衒の達、坊や哲と麻雀卓を囲みます。
 この勝負が映画のハイライト。ドサ健はツキまくり、家の権利書を取戻しまゆみの「身請け」までやってのけます。勝負の最中、ヒロポン(覚醒剤)を打って集中力を保っていた出目徳は、「九蓮宝燈」をツモり、生命の糸が切れたように上がり牌を握ったまま事切れます。勝負師の壮絶な最期です。
 ドサ健たちは、負けたものは身ぐるみ剥ぐという勝負の掟に従って、出目徳の金から着ているものまで剥いで遺体を捨てます。
麻雀放浪記1.jpg 麻雀放浪記2.jpg
 映画といえばそれまでですが、何が彼らをこれほどまで熱くさせ、その熱気が映画として成り立つのか?。賭け事は偶然に支配されるゲームですから、勝敗は人間の能力を超えたところにある筈です。確率という自然の摂理を拒否する快感、あるいは運命を切り拓く、拒否する快楽なのではないかと思われます。

 1984年(舞台は1946年、原作の発表は1969年)の映画です。1984年、日本がバブルに走り始めた頃、勝負に命をかけるバイニンが 戦後の焼け跡から亡霊の如く立ち現れたことになります。お薦めの一本です。

監督:和田誠
出演:真田広之 鹿賀丈史 加藤健一 高品格 名古屋章 大竹しのぶ 加賀まりこ

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