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お手軽簡単 読書感想文 百田尚樹『海賊とよばれた男』 [日記(2016)]

海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)
 夏休みに入って当blogも感想文のアクセスが増えています。久々に「お手軽簡単読書感想文」シリーズを一本。『海賊とよばれた男』は上下巻で740ページの小説ですから、「お手軽簡単」というにはちょっと気が引けますが、文章が平易で物語として面白いので取り上げてみます。何しろベストセラーですから、公立図書館であれば在庫が豊富ですぐ借りることができます、たぶん。

 敗戦の混乱に立ち向かう序章と第一章「朱夏」の前半、主人公の生い立ちを綴る第二章「青春」の前半、日彰丸事件を扱った第三章「白秋」を読むだけでも、この小説の中身はほぼ分かります。

 石油元売り会社、出光興産の創業者・出光佐三をモデルとした産業人の一代記です。『永遠の0』の百田尚樹ですから、話は主人公・田岡鐵造の人間尊重の精神と愛国心です。

 鐵造の哲学は第一章でほぼ明らかです。敗戦で資産を失い借金と千人の社員を抱えた鐵造は、石油販売の事業が継続出来ない中、私財を投げうちひとりの馘も切らず会社を存続させます。鐵造には、社員は家族であり、人材こそが最大の資産であるという信念があるわけです。経営が苦しくなるとすぐリストラに走る昨今の経営者とは、根本的に考え方が違うわけです。社員を家族と考える鐵造の会社には、出勤簿がなく、定年も、馘首もありません。これで千人を越える社員を擁する企業が成り立ったわけですから、驚く他はありません。

 第二章では、石油との出会いと鐵造の社員(人間)尊重の精神がいかに育まれたかが描かれます。石油を積んだ鐵造のタンカーが、イギリス軍の眼をかいくぐって日本を目指す第三章は、冒険物語で面白いです。

 ということで感想文にまとめてみます。

 民族資本の石油元売り会社、出光興産の創業者出光佐三をモデルとした国岡鐵造の一代記です。明治40年の東北旅行で秋田の油田を見学してより石油に取りつかれ、以来70数年、石油一筋の反骨の人生が描かれます。

 作者が『永遠の0』百田尚樹で舞台が「石油」ですから、太平洋戦争はアメリカに石油を止められことによって起こり、ミッドウェーもガダルカナルの大敗も石油の枯渇が原因ということになっています(やや疑問)。作者が本書を執筆した動機もここにあり、百田は、繰り返し主人公の国岡鐵造の人間愛と愛国心を描きます。

 明治41年の神戸高商の卒論で、当時花形の石炭産業の衰退を予見し、政府による統制経済を批判しているそうです。23歳の時、陸軍やGHQを相手に弧塁を守った出光佐三の原型が出来上がってことになります。もうひとつ、「大地域小売業」の発想があります。幾つもの問屋を経由して商品を消費者に届けるのではなく、自前の店舗で製造から直接消費者に届けるという、今では当たり前のユニクロのような小売業を明治41年に目指していたというのですから驚きます。

 明治44年、鐵造は念願の石油販売業を立ち上げます。社員を家族と考える鐵造の国岡商店(出光興産)には出勤簿、定年がなく馘首もありません。これは、後に社員が1000人を越えても続けられたということですから驚きます。すべて、社員を信用するという鐵造の信念から生まれたものです。信用された方は、それに値する働きをするということです。
 敗戦によって資産のすべてを失い、借金と千名近い社員をかかえた鐵造は、ラジオ修理などの副業で
ひとりの馘も切らず社員を支え続けます。

 戦略物資でもある石油を、外資(メジャー)の手を経ることなく(メジャーの支配をはね除けて)日本人の手によって確保することが悲願となり、戦後の出光佐三の活躍となります。
 この愛国心が遺憾なく発揮されるのが、イランから石油を運んだ「日章丸事件」(1953)です。メジャーと政府によって石油(ガソリン)の供給を絶たれつつあった国岡商店は、イランからの輸入を企てます。イランはイギリスから独立を果たし、油田と製油施設の国有化を絶行していますから、メジャーから独立した数少ない生産国です。一方、イギリスは油田の所有権を主張し、イランから石油を積み出したタンカーを拿捕するという緊迫した状況下で、鐵造は自社のタンカー日彰丸で石油を運びます。
事が公になれば妨害が起こることは確実。社員の渡航から資金の調達、信用状の取得まで極秘裏に進め、日彰丸はイギリス海軍を降りきって石油を日本に運ぶわけです。運んだら運んだで、今度は英企業との法廷闘争が待っているという具合で、手に汗を握る企業ドキュメントです。

 メジャーの包囲網を潜り抜け、政府の護送船団方式に楯突く出光佐三の一代記、面白いです。大企業を一代で築いた起業家は多いと思いますが、人間尊重と愛国心にあふれた伝説の一生がベストセラーの要因だと思います。
 
 これで1,208文字、大体原稿用紙3枚です。
 
【お手軽簡単 読書感想文】
読書感想文の書き方
『蟹工船』を材料とした書き方実践編
小林多喜二 『蟹工船』・・・青空文庫利用
芥川龍之介 『藪の中』・・・映画併用、青空文庫利用 
山際淳司  『スローカーブを、もう一球』 [手(チョキ)]
須川邦彦  『無人島に生きる十六人』 ・・・青空文庫利用
坂口安吾  『ラムネ氏のこと』 ・・・青空文庫利用
藤沢周平  『蝉しぐれ・・・原稿用紙約3枚
吉村昭   『漂流』 ・・・原稿用紙約3枚
笹本稜平  『春を背負って』 ・・・原稿用紙約3枚
遠藤周作  『沈黙』 ・・・原稿用紙約3枚 
百田尚樹  『海賊とよばれた男』 ・・・このページ

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