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映画 天国と地獄(1963日) [日記(2017)]

天国と地獄[東宝DVD名作セレクション]
 時代劇で数々の傑作を産み出してきた黒澤明の現代劇です。企業の役員権藤(三船敏郎)は、息子を誘拐され3,000万円の身代金を要求されます。ところが、誘拐されたのは権藤の息子ではなく、一緒に遊んでいた権藤の運転手の息子。株式を集め会社権力の掌握を画策する最中の出来事であり、5,000万円の小切手があります。権藤は会社を取るか運転手の息子を取るかの選択を迫られます。権藤は身代金を払うという苦渋の選択をします。『七人の侍』『用心棒』の三船敏郎ですが、やたら怒鳴り大仰な演技で心理の綾を演じる現代劇ではいまひとつ。

 通報を受けた警察(神奈川県警)の捜査が始まり、戸倉警部(仲代達矢)の指揮のもと、ボースンこと部長刑事の田口(石山健二郎)ほか刑事の活躍が描かれます。犯人は、特急こだまのトイレの窓から鞄に入れた身代金3,000万円を指定の場所で投げることを指定してきます。車内に電話して投下場所を指定するわけですから、警察は手も足もでないわけでこれは巧妙な手口。
 権藤は指定通り身代金を投下し、運転手の息子は戻り、警察は公開捜査に踏み切ります。ここから三船敏郎はしばらくお休みで仲代達矢の一人舞台。犯人を特定する捜査が詳細に描かれる刑事ドラマです。

 犯人は、丘の上の権藤の豪邸を見上げるアパートに住む医学研修医・竹内。冬寒く夏暑い「地獄」のような部屋に住む竹内(山崎努)は、丘の上の豪邸は「天国」に映り、そこに住む権藤に「地獄」の苦しみを与えようとしたわけです。これがタイトルの謂われ。

 何だかんだで結局竹内は捕まるわけですが、誘拐の動機としては分かったような分からないような...。クレジットの筆頭は三船ですから事件にもっと裏があるのかと期待したのですが。

 映画としては、権藤の会社支配権の争い、戸倉の捜査、竹内の動機と大まかに3つのエピソードから成り立っています。比重からからいえば、竹内〈権藤〈戸倉で、メインは犯罪捜査ドラマです。3,000万円の背景として、三船を起用した権藤のエピソードは分からなくもないのですが、これがあるため冗長。権藤をカットして竹内の動機にスポットを当てた方が面白かったと思います。
  巨匠黒澤の作品としては残念です。
 
監督:黒澤明
出演:三船敏郎 仲代達矢 山崎努

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