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浅田次郎 天子蒙塵 第一巻 [日記(2018)]

天子蒙塵 第一巻 天子蒙塵 第一巻  『蒼穹の昴』『珍妃の井戸』『中原の虹』『マンチュリアン・リポート』のシリーズ続編です。「天子蒙塵」とは、天子が塵をかぶって逃げ出す謂いで、清国最後の皇帝・愛新覚羅溥儀が廃帝となって紫禁城を追われることを指します。シリーズは『天子蒙塵』に至って満州国皇帝・溥儀が登場し、舞台は満州、日本の昭和史が描かれることになりそうです。

 新聞社の北京特派員・北村は、大学の恩師・梁文秀を探すうちに、文秀と同じ音の小学校教師、文繍と出会うこととなります。文繍とは、愛新覚羅溥儀の第二夫人・文繍のことで、北村は数奇な人生を歩む文繍を取材し始めます。北村はつてを求めて文繍にインタヴューします。この「つて」というのが、『蒼穹の昴』の主人公・李春雲(春児)で、インタヴューの聞き役でもあります。第一巻は、この文繍を語り手として、紫禁城からの退去、天津日本租界内「張園」での亡命生活、天津脱出が描かれます。

 愛新覚羅溥儀については、映画『ラストエンペラー』を観ればだいたい分かります。わずか2歳で清の皇帝となり、辛亥革命によって6歳で退位。紫禁城に軟禁され、後紫禁城を追い出され、日本の傀儡国家満州帝国の皇帝となります。日本の敗戦によってソ連の捕虜となり、後中華人民共和国で一市民となって61歳で亡くなります。数奇と言う他はない一生です。

 溥儀は17歳で婉容を皇后、文繍を第二夫人として迎え、以後25歳で長春に脱出するまで「妻妾同居」の生活が続きます。この文繍によって溥儀が語られることになります。若い溥儀にとって、妻と妾両方に気を使う「妻妾同居」の生活もそれなりに気苦労のある生活だったというところが面白い。

 かつて皇帝であったとはいえ、6歳で退位していますから、皇帝としての権威権力行使したことはなく、退位の後は清室優待条件による莫大な財産と、ふたりの妻と召使いにかしずかれて安逸な生活を送る遊民だったようです。その遊民振りが文繍によって語られますが、長編『天子蒙塵』の序論ですからそんなに面白いわけではありません。文繍と溥儀の離婚の経緯が語られ、李春雲の他、戊戌の変法で姿を消した梁文秀とその妻で春雲の妹・玲玲が登場し、『蒼穹の昴』以来の読者の興をそそる程度です。
 第二巻からいよいよ満州帝国です。

タグ:読書 満州
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