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映画 デンデラ(2011日) [日記(2018)]

デンデラ [DVD]  浅丘ルリ子(公開当時71歳)、草笛光子(78)、倍賞美津子(65)、白川和子(64)、山本陽子(69)など往年の名女優をズラリと並べ、公開当時話題になりました。「姥捨」です。姥捨は深沢七郎の小説「楢山節考」、それを原作とした今村昌平の映画が有名です。年老いた母親を背負って山に捨てにゆく息子と捨てられる母親の、神話的世界を描いたものです。捨てられた老人たちが生き残って密かに共同体を作っていたら、というifの世界が『デンデラ』です。



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 お山参り              老婆たちの饗宴
 70歳になったカユ(浅丘ルリ子)は、ムラの掟に従って息子に背負われて山に捨てられます(お山参り)。雪に埋もれて凍死ということになる筈が、気がつくとそこは捨てられて死んだはずの村の老婆たちが暮らす村。村はデンデラと呼ばれ、100歳になるメイ(草笛光子)が棄てられた女たちを助けて作った共同体。メイは30年かけて50人もの老婆の住む共同体を作ったのです。デンデラには既存のムラのように、掟も上下関係も貧富の差も存在せず、食料は全員に平等に分配され貧しいながら飢餓もないというユートピア。
 「お山参り」によって極楽浄土に行くことが出来ると信じるカユは、不本意にも助けられデンデラに来ました。従って、デンデラに反発し、極楽よりも生きることに執着するデンデラの老婆たちを軽蔑します。老人は70歳になるとは、労働として価値が無くなり飢饉からムラを守るために山に捨てられる(口減らし)掟です。多くの老人はこの掟を受け入れ当然の勤めと考えています。なかには死ぬのを嫌ってムラに戻る老人もいます。戻ると大人たちによって責め殺されます。いずれにしろムラの人間は70歳になると死ぬ運命にあります。

歳をとることは罪だか 年寄りはクズだか (年寄りも)人だ

 と考えるメイは、デンデラの住人と共に自分達を捨てたムラに復讐をするためデンデラを作ったのです。捨てられた人々が捨てたムラに反旗を翻すわけです。まずムラ外れを家を襲い、武器の鍬や鎌を手に入れムラに攻め入るという、戦略らしきものもあります。

 当然、復讐に反対する人々もいます。掟のないデンデラでは強制はなく、恥知らずとは呼ばれるだけで基本は個人の自由意志が尊重されます。マサリ(倍賞美津子)は、復讐はメイの個人的な恨みに過ぎず、村人を殺した後どうするのかという展望に欠けていると言ってこれに反対します。マサリは、父親がムラの掟を破ったため家族を殺され、自身は片目を潰され男たちの慰みものとなった過去を持っています。ムラを憎むことはマサリが一番の筈ですが、彼女は復讐よりもデンデラを豊かにすることを選びます。
 なかなか思想的な映画、でもないですが、棄てられた老婆が力を合わせて捨てた肉親、そんな掟を作ったムラ社会を壊そうというわけです。これは面白い!。

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 浅丘ルリ子              草笛光子
 しかしそう簡単にはいきません。羆がデンデラを襲い、何人もの老婆が犠牲になり冬を越すための食料を奪われます。ムラの襲撃どころこか冬を越せなくなった老婆たちは、足を喰われた老婆を囮にして羆をおびき寄せ、ついにこれを倒します。羆と老婆たちの闘いは映画のハイライトですが、この羆は着ぐるみのため迫力に欠けます。想像力で補うしかないです(笑。羆の肉で元気を回復したデンデラの住人は村の襲撃に向かいます。ところが、途中雪崩に会いリーダーのメイと多くの老婆が亡くなり、デンデラの最終目標である復讐は潰えます。

 こうした試練を経て、デンデラに批判的だったカユは勇敢なデンデラの老婆となります。メイは、平等で上下関係もなく、リーダーのメイの復讐に反対するマサリたちの存在を認め、病人を介護するという、ムラとは異なったデンデラの組織原理を評価したわけです。
 この年は山も不作で鮭も遡上せず、飢えた羆はまたもデンデラを襲います。デンデラ存続の危機に、カユはヒカリ(山本陽子)とともに森に羆を追います。カユとヒカリは羆を倒すことができるのか?、メイは捨て身の奇策に打って出ます...。

 隠退した老人が現役の壮年に反旗を翻す話ですから、今日的でもあります。着ぐるみの羆は笑いますが、けっこう面白いです。
 原作を読みました

監督:天願大介
原作:佐藤友哉
出演:浅丘ルリ子 草笛光子 倍賞美津子 白川和子 山本陽子

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