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映画 オンディーヌ 海辺の恋人(2009愛) [日記(2019)]

オンディーヌ 海辺の恋人 [DVD]  原題”Ondine”、いつものことながら「海辺の恋人」は余計。

 アイルランドの漁師シラキュース(コリン・ファレル)のトロール船の網に若い女性(アリシア・バックレーダ)がかかります。女性は生きていて自らをオンディーヌ(水の精)と名乗ります。漁師が水の精を釣り上げたわけで、罠にかかった鶴を助ける民話「鶴の恩返し」を連想します。これでだいたい分かった!→想像通りです。半裸の女性が網にかかって引き上げられるシーンで、『オンディーヌ』の世界に思わず引き込まれる仕組みです。

 シラキュースは、人と会うことを極端に恐れるオンディーヌを亡くなった母親の小屋に匿います。コリン・ファレル演じるシラキュースは、実直な「与ひょう」(「夕鶴」でつるを助ける農夫)ではなく、元アル中、これも飲んだれくの女房と別れアルコールを断って2年7ヶ月の漁師。腎臓疾患をかかえる車椅子の幼い娘アニー(アリソン・バリー)がいますが、親権は母親に取られ、母親は母親で怪しい男とくらしているという複雑な境遇。シラキュースのあだ名はサーカス、ピエロをもじったあだ名が付いているように、パッとしない人物。
 アニーにオンディーヌを釣り上げた話をしたところ、彼女はオンディーヌは水の妖精ではなく、セルキー(アザラシ女)だと思い込みます。セルキーとは、「あざらしの皮」を脱いで若い女性に変身し人間をたぶらかす北欧の民話の主人公。アニーは図書館からセルキーの民話集を借り出し研究となります。
オンディーヌ1.jpg オンディーヌ1.jpg
 アニーはオンディーヌを探し当てます。アニーによると、人間がセルキーの脱いだアザラシ皮を隠すと7年間陸上で暮らさねばならず、海に帰るために七つ涙を流さねばならないのだそうです。アニーは、オンディーヌがセルキーであることを信じるようになり、観客もアニーの創造力に引きずられように伝承世界にひきずりこまれます。
 シラキュースがオンディーヌを連れて漁に出ると、彼女が歌を歌うと豊漁になり、シラキュースもそんなわけは無いと思いつつアニーの創造力に引きずられます。アニーの存在は、この映画のポイントです。
 もうひとり、スティーブン・レイ(ニール・ジョーダンの常連らしい)演じる神父が登場します。シラキュースはオンディーヌの件を告解し、アニーは教会は人間とアザラシの結婚を許すのか?と問い、アイルランドでカトリックと庶民の関係をユーモラスに描きます。

 ストーリーはこのセルキーの伝承に沿って展開します。「異類婚姻譚」のファンタジーであるはずはなく、次第にオンディーヌの正体をめぐるミステリーとなり、やがて怪しい影が出没し始めます。幻想性は、スィフト(ガリバー旅行記)、ブラム・ストーカー(吸血鬼ドラキュラ)のアイルランド文学の伝統でしょうか。
 荒涼とした海をバックに、ファンタジーとミステリー交差する佳作です、オススメ。

 監督は『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『ことの終わり』(これお薦めです)のニール・ジョーダン。コリン・ファレルは説明の要はないですが、この人アイルランド人なのですね。

監督:ニール・ジョーダン
出演:コリン・ファレル アリシア・バックレーダ

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