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映画 ウィンド・リバー(2017米) [日記(2019)]

ウインド・リバー [DVD]  原題”Wind River”。ワイオミングの先住民(インディアン)居留地ウインド・リバーを舞台にした社会派ミステリです。かつてインディアンは西部劇の敵役として登場しましたが、『ソルジャー・ブルー』辺りから先住民を抑圧する白人の視点が生まれます。黒人差別は繰り返し映画化されていますが、現代の先住民を描いたものは、(ジョニー・デップ監督のものがあるそうですが)少ないと思います。『ウィンド・リバー』は、居留地を舞台に先住民の現在を垣間見させてくれます。


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 主人公は、(本人はハンターだと言ってます)野生生物局の職員コリー(ジェレミー・レナー)。コリーが家畜を襲ったピューマを追っている途上、若い先住民の女性ナタリーの死体を発見します。マイナス30度の雪原を素足で数kmを走り、肺が氷ついて窒息死したということです。FBIのジェーン(エリザベス・オルセン)による捜査が始まります。女性は先住民の娘で、レイプされレイプ犯から逃れるために雪原を走って逃げたようです。ジェーン、地元の「部族警察署」とコリーは、他殺ではないものの殺人事件として捜査を開始します。居留地では、レイプと傷害事件であれば部族警察、殺人であればFBIの管轄となります。
 ナタリーをレイプした白人グループが判明します。部族警察が捜査に向かいますが、グループの居住区域はウィンド・リバーではないため部族警察に捜査権はなく、グループは銃を構えて抵抗し一触即発の事態となります。居留地の行政は二重構造であり、先住民が置かれた複雑な環境が描かれます。

 先住民は、国によって居留地に押し込められ、差別され、アルコール、薬物に溺れ、雪と静寂以外何も無いウィンド・リバーで合衆国の「棄民」となります。
 コリーは、先住民の女性と結婚し、娘を今回の事件と似た状況で亡くし、それが原因で離婚した過去があります。元妻が先住民であることで居留地ウィン・ドリバーの住民(半先住民)であり、娘を殺された被害者であり、さらにハンター(先住民もまたバッファーローを狩るハンター)であることによって、コリーは疑似先住民となります。

 ミステリとしてはシンプルです。ナタリーを死に至らしめた白人グループが浮上し、部族警察との銃撃戦とコリーによる私的制裁により全滅します。主題はミステリではなく、入植者の白人が先住民を駆逐し彼らに取って代わった歴史が現代に及ぶアメリカの深部です。居留地に掲げられる星条旗は、上下が逆になっています。先住民の歴史認識の象徴です。声高に差別を描くのではなく、ひとりの女性の死から綻びるアメリカの現実が、荒涼としたワイオミングの雪原を背景に淡々と描かれます。地味な映画ですが、脚本がしっかりしているので見応えは十分、お薦めです。

監督:テイラー・シェリダン
出演:ジェレミー・レナー エリザベス・オルセン

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