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梅原猛 葬られた王朝 古代出雲の謎を解く(2) [日記(2019)]

葬られた王朝―古代出雲の謎を解く (新潮文庫) 続きです。
オオクニヌシ
スサノオ→ヤシマジヌミ→フハノモヂクヌスヌ→フカチノミズヤレハナ→オミズヌ(国引き)→アメノフユキヌ→オオクニヌシと、オオクニヌシはスサノウから6代下った「因幡の白兎」で有名な出雲王朝の王です。「因幡の白兎」の神話は因幡の国の征服だといいます。オオクニヌシはスサノオの血をひくスセリビメを娶り、越に行ってムナカワヒメと婚姻し、出雲、因幡、越の日本海沿岸を統べる大王となります。
 このあとオオクニヌシはヤマト(蘆原中国)に進出します(オオクニヌシの国づくり)。ヤマト進出は記紀には記載されていませんが、ヤマト征服は、関西各地に出雲系の神を祭る神社が多数存在することで裏付けられるといいます。11月を神無月といいますが、日本各地の神が出雲に集まりますから、出雲王朝の支配が近畿、四国、山陽まで及んでいたと想像されます。

 このヤマト進出の協力者としてスクナヒコとオオモノヌシが登場します。スクナヒコは「摩(かがみ)の船」に乗って現れたといいますから、スサノオ同様「韓の国」から来たとも想像されます。オオモノヌシもまた韓の国から来た外来神です。進出はすんなりとはいかず敵も現れます。新羅国から渡来し但馬を本拠としたアメノヒボコとオオクニヌシは壮絶な戦いを演じます(播磨風土記)。
 中央進出を果たした(らしい)オオクニヌシは、この後「天孫系」のニニギに「国譲り」をし出雲に隠棲します。政権が出雲系から天孫系に移るわけで、おそらく壮絶な戦いがあったはずですが「記紀」では「国譲り」の一言で片付けられます。

 天孫系(天津神):アマテラス(姉)・・・ニニギ・・・カムヤマトイワレヒコ(神武天皇、ヤマト王朝)
 出雲系(国津神):スサノオ(弟)・・・オオクニヌシ

 大雑把な理解では、日本列島に割拠する豪族の中で、渡来系のスサノオが日本海沿岸に出雲王朝を築き、その系列オオクニヌシが近畿、中四国を制覇します。蘆原中国の豪族ニニギが勢力を得てオオクニヌシと戦った末これを退けヤマト王朝を建てる、そんなことではないかと思います。古事記、日本書紀は、大和朝廷が記紀以前の歴史書(帝紀、旧辞)から編集し直した勝者の歴史書です。天皇家に神聖性を付与するためのフィクションですから、出雲王朝 →大和王朝の政権交代が「国譲り」となるのでしょう。

出雲王朝
 第三章『考古学が語る出雲王朝』で、記紀から解き明かした出雲王朝の存在を考古学で裏付けます。

 1984年、島根県出雲市の荒神谷遺跡で銅剣358本、銅鐸6個と銅矛16本が発見され、1996年には加茂岩倉遺跡(雲南市)で銅鐸39個が出土します。この大量の出土品と「四隅突出型墳丘墓」は、出雲の地に畿内に匹敵する豪族が存在していた証拠ではないかというのが、第三章の主旨とになります。
 出雲王朝より面白いのが、著者の銅鐸、銅剣の考察です。銅鐸の起源は朝鮮の馬の首に付けた鈴であるという説を紹介し、

鈴も鐸もその音色が神秘的であり、神を喜ばせる音を響かせるものであろう。聖徳太子の怨霊鎮魂のために建てられた法隆寺の金堂の四隅には風鐸が、それは鐸そのものが怨霊鎮魂という呪力を持っている故ではなかろうか。

 自然界には存在しない銅鐸の音が死者への鎮魂だといいます。能楽『翁』で三番叟が鈴を鳴らして荒魂を鎮める段があるそうです。そう言えば神楽舞を舞う巫女も鈴を持っていますいます。神社の拝殿にある鈴、寺院の梵鐘もその延長で、「鎮める」「祓う」という行為に関係があるといいます。2017年淡路島出土の銅鐸には「舌」と舌を吊るした紐がついており、銅鐸が鳴らすための楽器であったことが確認されています。
 荒神谷遺跡出土の銅剣358本のうち344本に、銅鐸14個にX印が付けられています。このX印には何の意味があるのか?。著者は、死者と共に埋葬される土偶は壊されていることから、X印は「壊した」印ではないかと想像し、荒神谷遺跡のは銅剣銅鐸は死者にむけた鎮魂の埋蔵品ではないかと想像します。

 弥生時代に出雲に朝鮮から渡来した古代王朝があり、畿内に進出してヤマト王朝の基礎を築いたという説は、学問的真偽はともかく何ともロマンを感じさせます。古代史ミステリとして楽しめます。

タグ:読書
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omachi

お腹がくちくなったら、眠り薬にどうぞ。
歴史探偵の気分になれるウェブ小説を知ってますか。 グーグルやスマホで「北円堂の秘密」とネット検索するとヒットし、小一時間で読めます。北円堂は古都奈良・興福寺の八角円堂です。 その1からラストまで無料です。夢殿と同じ八角形の北円堂を知らない人が多いですね。順に読めば歴史の扉が開き感動に包まれます。重複、 既読ならご免なさい。お仕事のリフレッシュや脳トレにも最適です。物語が観光地に絡むと興味が倍増します。平城京遷都を主導した聖武天皇の外祖父が登場します。古代の政治家の小説です。気が向いたらお読み下さいませ。(奈良のはじまりの歴史は面白いです。日本史の要ですね。)

読み通すには一頑張りが必要かも。
読めば日本史の盲点に気付くでしょう。
ネット小説も面白いです。
by omachi (2019-03-27 23:16) 

べっちゃん

藤原不比等でしょうか?、読んでみます。
by べっちゃん (2019-03-29 08:28) 

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