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映画 やさしい本泥棒(2013米) [日記(2019)]

やさしい本泥棒 [AmazonDVDコレクション]  原題: The Book Thief=本泥棒。基本、ナチスのホロコーストもの、その延長線上にある映画です。ナチスは、非ドイツ的という名目でナチズムに合わない本、退廃的な本を焚書にする弾思想圧を行っています。ナチスから本を護るレジスタンスの話かと思ったのですが、違いました。読書好きな女の子が本を盗む話です。

 12歳?のリーゼル(ソフィー・ネリッ)は、共産主義者の両親から引き離され、ミュンヘンのペンキ職人ハンス(ジェフリー・ラッシュ)、ローザ(エミリー・ワトソン)夫妻の里子となります。リーゼルに甘いハンス、ハンスをロクデナシ罵りリーゼルに厳しいローザを、ジェフリー・ラッシュとエミリー・ワトソンが演じます。このふたりの演技が見ところです。

 リーゼルにからむのが同級生の隣家のルディ。駈けっこして勝ったらキスしろ、と愛情告白する辺りは可愛い。ナチスは住民を集めて焚書の見せしめを行います。リーゼルは燃え残った本を密かに持ち帰る辺りから「本泥棒」が始まります。焚書がありユダヤ人弾圧の「水晶の夜」があり、ハンスの友人の息子を匿ったり、狂気のナチズムが描かれますがかなり類型的。
 ハンスが匿うマックスが「本泥棒」のキーマン。マックスが病気で人事不省となり、マックスを目覚めさせるためにリーゼルは枕元で本を読み続けます。ペンキ職人の家に本があるはずもなく、リーゼルは蔵書を読むことを許してくれた市長夫人宅から「本泥棒」するわけです(リーゼルは借りてきたと言ってますが)。

 映画が「起承転結」から成り立っているなら、リーゼルがハンス夫妻の養子となり、ルディと知り合い新しい生活を始める「起承」の部分はまぁこんなものでしょう。大事なのは、リーゼルが本泥棒となる「転」です。リーゼルは、人事不省のマックスのために本を音読するのですが、文字や言葉が人を救う、言葉を紡ぐために本を盗むという行為が核心であるべきです。ところがここの描き方が平板。

 同様に「結」もあいまい。空襲でハンス、ローザ、ルディは死に、辛うじて生き残ったリーゼルは瓦礫の中から盗んだ本を見つけます。市長夫妻が現れ(その養子となったかどうかは不明ですが)、リーゼルは90歳の天寿を全うして幕。
 冒頭の弟を埋葬する時に拾った本(墓掘りマニュアル)、焚書で焼け残ったHGウェルズの『透明人間』、マックスが持っていた本(扉にヒトラーの写真があるから『わが闘争』?)、市長の図書室で読んだ本など本が物語を繫いでいます。タイトルが『本泥棒』ですから、本の持つ意味が十分に表現出来ているかどうか。これでは、第二次世界大戦を生きたドイツ市民の物語に過ぎず、リーゼルが生き延びるために果たした「本」の役割は何処にあるのか?。原作があるようですが、原作をなぞった映画に過ぎないように思われます。ジェフリー・ラッシュとエミリー・ワトソンが勿体ない。ラストで「語り手」の正体が明かされます、これは以外でした。

監督:ブライアン・パーシヴァル
出演:ジェフリー・ラッシュ エミリー・ワトソン ソフィー・ネリッセ

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