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映画 ヒッチコック パラダイン夫人の恋 (1947米) [日記(2019)]

  パラダイン夫人の恋 [DVD] ヒッチコックのモノクロです。原題:The Paradine Case。caseは訴訟、事件という意味ですが、『パラダイン事件』より邦題の『パラダイン夫人の恋』の方が映画の内容を適確に表しています。

 舞台は1946年のロンドン。弁護士のキーン(グレゴリー・ペック)は、パラダイン大佐毒殺容疑で起訴された夫人を弁護することとなります。キーンは美貌のパラダイン夫人(アリダ・ヴァリ)に一目惚れし、夫人の無実を証明するために奔走し始めます。この手の映画では、美貌のヒロインが殺人犯ということはマズありませんから、誰だって弁護士がパラダイン夫人の無実を晴らすサスペンスと考えます。これが落とし穴。
 キーンは愛妻のゲイ(アン・トッド)と結婚11年目で、結婚記念日にイタリア旅行に行こうと相談していまいます。倦怠期の弁護士が依頼人に惚れ、それを感じ取った妻がこれを克服しようというのがこの映画のサイドストーリーです。面白いのは、判事(チャールズ・ロートン)がゲイに不倫を持ちかけるシーン。リズは軽くいなしますが、ストリーの進行と無関係なこうしたシーンが挟まれることこそが、この映画の本質を表していると思われます。婦人の弁護で妻との関係がギクシャクしてきたことに気づいたキーンは、弁護を降りようとしますが、はゲイは反対しキーンを励まします。

 キーンは、歳の離れた盲目のパラダイン大佐と結婚した夫人の過去を知りたがります。美貌の若い女性が年配の、しかも盲目の男性と結婚したわけですから、結婚は遺産目当てと考えるのが普通。パラダイン夫人の美貌に眼の眩んだキースは、夫人の無実を疑わないわけです。弁護のためにはあなたの過去を知必要があると夫人に持ちかけますが、夫人は語りません。キースはパラダイン大佐の館を訪れますが、これも夫人を知りたいためです。館でキースは大佐の使用人ラトゥール(ルイ・ジュールダン)と出会います。映画ではラトゥールの顔を影で隠し、こいつが犯人だ!と言わんばかり。その夜、ラトゥールはキースの宿に現れ、パラダイン夫人は悪魔のような女だと告げます。夫人とラツゥールの間には何がある?謎は深まるばかり。大佐を殺したのはラトゥールでパラダイン夫人は無実という描写で映画は進行します。

 裁判が始まり、判事はキースの妻を口説いたチャールズ・ロートン。検事、弁護士、判事の駆け引きが始まり、検事はラトゥールを証人に呼び、弁護士はパラダイン夫人を証人に召喚します。キーンとパラダイン夫人がメインキャストですから、キースがラトゥールの犯罪を暴き、夫人の無罪を勝ち取ってメデタシで終わるはずですが、そうはなりません。ヒッチコックが用意したのは、夫人が有罪となってキースは裁判に破れ、妻の元に帰る結末です。この結末を面白いと見るかどうか。

 ヒッチコックの妻アルマ・レヴィルは脚本家、編集者としてヒッチコックの映画を支えるパートナー。ヒッチコックは金髪フェチで女優にセクハラするマザコンで、『ヒッチコック(2012)』では妻の浮気を疑い嫉妬の炎を燃やす人物として描かれています。すべてをお見通しの妻アルマが怖いヒッチコックは、『パラダイン夫人の恋』でキースと夫人の恋を成就させる勇気がなく、妻の元に帰る結末しか描けなかったわけです。タイトルをつけるすれば「弁護士キースの恋」、裏の題は「ヒッチコックの恋」です。
 と考えると、ヒッチコックの中ではマイナーなこの映画もけっこう楽しめます。ヒッチコックの映画は斜めから見ると面白い映画が多いです。

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ、ルイ・ジュールダン

タグ:映画
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