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映画 ヒッチコック バルカン超特急(1938英) [日記(2019)]

バルカン超特急 [DVD] FRT-035  原題はThe Lady Vanishes、消えた婦人。パンドリカからロンドンに至る国際列車の中で老婦人が消える話です。ハンドリカなどという国はありませんが、この国がバルカン半島にでもあったと想定して邦題は『バルカン超特急』。
 ヒッチコックは1939年にハリウッドに招かれ、以後のすべて制作国はアメリカで、イギリスで制作した最後の(ではないですが)ヒッチコック作品となります。1938年はナチスがオーストリアを併合した年で、翌1939年にはポーランドに侵攻し第二次世界大戦が始まります。ヒッチコックは第二次世界大戦前夜にアメリカに渡り、大戦中に『レベッカ』『疑惑の影』『逃走迷路』などの名作を手掛けます。イギリスにいればとても映画どころではなかったでしょうから、大戦を見越してアメリカに行ったのかもしれません。『バルカン超特急』は、この第二次世界大戦前夜のヨーロッパを映した映画です。

 雪崩でバルカン超特急が立ち往生、乗客はホテルで一泊することになります。結婚を控えて最後の自由を満喫するアメリカ人のアイリス(マーガレット・ロックウッド)、クリケット試合に熱心なイギリス男性、音楽教師のイギリス婦人、国籍不明の音楽家、等々雑多な人々がホテルで一夜を明かします。イギリス婦人は窓辺でギター弾きの歌を聞き、唐突にこのギター弾きは殺されます。ラスト近くで謎解きがありますが、この歌が映画の重要な小道具。除雪が終わった翌朝、様々な国籍の乗客を乗せてバルカン超特急は発車します。駅で、アイリスは落ちてきた植木鉢が頭に辺り昏迷。「取って付けたような」植木鉢事件もプロットの構成要素。

 アイリスとイギリス夫人はコンパーメントで顔を合わせ、食堂車でお茶を呑み、夫人はフロイ(メイ・ウィッティ)と名乗ります。このフロイが走る列車から煙の如く消え去ります。アイリスは、ホテルで知り合った音楽家のギルバート(マイケル・レッドグレイヴ)とともにフロイを探しますが、コンパートメントの乗客はイギリス婦人など最初からいなかったと証言。食堂車のボーイも紅茶の伝票を見せて一人でお茶を飲んだと主張し、乗り合わせた脳外科医は植木鉢が頭に当ったためだと診断します。イギリス人、イタリア人、ドイツ人などの乗る国際色豊かな特急列車、走る列車という密室で人ひとりがどうやって消えたのか?、何故消えたのか?、乗客たちは何故嘘をついたのか?というミステリーです。

 アイリスと観客はフロイの実在を知っていますから、コンパートメントの乗客やボーイは嘘をついていることになります。外科医は、町の病院で手術をするため途中の駅で患者を乗せます。この患者は顔も分からないほど包帯でグルグル巻、付添いのシスターは聾唖でしかもハイヒールという怪しさ満点。これは、患者とフロイをすり替えて誘拐しようという魂胆、怪しいのは外科医だ!とアイリス、ギルバートはもちろん観客も推理するわけです。そもそもフロイとは何者なのか?。外科医はフロイを秘密裏に拉致する作戦に加わり、コンパートメントの乗客やボーイもフロイ消失に一役買っていたわけのです。アイリス、ギルバートに救出されたフロイは自らがイギリスのスパイであり、情報を本国に伝える途中でパンドリカ国の官憲に捕まったことを告白します。その情報を音楽旋律でギルバートに伝え列車から逃亡します。ホテルで殺されたギター弾きもスパイで、歌でフロイに情報を伝えたわけです。音楽がスパイの情報戦の手段となるプロットは、斬新と言えば斬新。

 フロイ拉致に現れた軍人はどう見てもナチス、乗る車もベンツに似ています。ということは、パンドリカ国とはドイツのこと?。『バルカン超特急』は、イギリスとドイツの諜報戦ということになります。この後、列車切り離し、銃撃戦などがありますが、アクション慣れCG馴れした観客にはモノ足りません。面白いかというと、ヒッチコックといえど80年前の映画ですから古さは否めません。モノ足りませんが、1938年の国際情勢を考え合わせると、何やら違って見えてきます。

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:マーガレット・ロックウッド マイケル・レッドグレイヴ  

タグ:映画
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