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映画 ヒッチコック 海外特派員(1940米) [日記(2019)]

海外特派員 [DVD] FRT-257  原題、Foreign Correspondent、ヒッチコックがアメリカに渡って制作した第二作目。ニューヨークの新聞記者が、第二次世界大戦前夜のヨーロッパでスパイ事件に巻き込まれる話です。アメリカに渡って間のないヒッチコックは、当時の複雑な国際情勢を背景に故郷ロンドンを舞台としてスパイミステリーを作ったことになります。

 主人公はNYの新聞記者のジョーンズ(ジョエル・マクリー)。海外特派員としてロンドンに赴任し、オランダの政治家、イギリスの平和運動家をめぐるナチスドイツの謀略に巻き込まれます。
 平和運動家フィッシャーのパーティーでフィッシャーの娘キャロル(ラレイン・デイ)と知り合い、ヒーロー、ヒロインが出揃います。ジョーンズは、オランダの政治家ヴァン・メアを取材するためアムステルダムに向かい、ヴァン・メアはジョーンズの眼の前で暗殺されます。「都合よく現れた」キャロルと新聞記者フォリオットと共に犯人を追い、(オランダですから)郊外の風車小屋に忍び込み、殺されたはずのヴァン・メアを発見します。ジョーンズは、暗殺されたのは替え玉でヴァン・メアは某国の諜報員に拉致され、国外に連れ去られる謀略を知ることになります。オランダは1939年にナチスの侵攻を受けていますから、この謀略の黒幕はナチスドイツということになります。

 事件に首を突っ込んだジョーンズは命を狙われることになります。ロンドンに戻るフェリーの上で、ジョーンズとキャロルのロマンスが生まれます。ロンドンに戻ったジョーンズは、フィッシャーの屋敷で風車小屋で見かけた誘拐犯のひとり(バビロニア大使館の外交官、架空)と出会ます。フィッシャーは誘拐犯と裏で繋がっており、ジョーンズがヴァン・メア誘拐を新聞に書くこと恐れ、殺し屋をさしむけます。

 ヴァン・メイはオランダが結んだ条約の密約条項を知る人物で、その密約条項を聞き出すために誘拐したのです。某国はこ秘密条項を理由にオランダに侵攻し、覇権を全ヨーロッパに及ぼそうという野心を持っているという設定。平和運動家が戦争を企む国に加担しているわけで、フィッシャーとはいったい何者なのか?。これだけで政治サスペンスとなるはずですが、映画ではサラッと流します。ヒッチコックが狙うのは、ハリウッドが期待するのは、あくまで海外特派員vs.スパイ組織の活劇とそれに付随するラブロマンスのエンターテインメントです。

 この謀略を暴くのが、何故かジョーンズではなく新聞記者のフォリオット。フィッシャーがヴァン・メアを拷問する現場を押さえ活劇を演じ警察に通報します。フィッシャーは、自分の諜報が戦争を引き起こすことを知っていますからアメリカ亡命を企てます。このアメリカ亡命は、ハリウッドに移ったヒッチコックを連想させます。フィッシャーとキャロルの乗った旅客機(何故かジョーンズとフォリオットが同乗)はドイツの戦艦の対空砲火を受けて墜落。フィッシャーは、自分の国籍は英国ではなく自らの行動は祖国のための戦いあったことをキャロルに伝えます。これはヒッチコックのアメリカ行きの言い訳でしょう。フィッシャーはそれを後悔していると言い、ヒッチコックの言い訳は続きます。乗客は墜落した飛行機の主翼に乗って漂流し、定員オーバーとなった為フィッシャーは自らを犠牲にしますが、これはヒッチコックの懺悔でしょうか。

 Wikipediaによると、ヒッチコックはハリウッド入りするに当って、イギリス保守党から反ナチスのプロパガンダ映画を作るように指示を受けていたそうです。ヒッチコックは反ナチスのプロデュサーのウェンジャー(駅馬車のプロデュサー)と組んで『海外特派員』を制作したといいます。ナチスの宣伝相ゲッペルスは、この映画は最高のプロパガンダ映画だと言ったとか。ゲッペルスのお墨付きですから、『海外特派員』は名作と言えるかも知れませんが、斜めから見るとヒッチコックの「言い訳」映画だと思います。

監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジョエル・マクリー ラレイン・デイ

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