SSブログ

司馬遼太郎 坂の上の雲 ⑤ 日本海海戦 Z旗 [日記 (2020)]

坂の上の雲 全8巻セット (新装版) (文春文庫)  本書に登場する日露戦争当時(1904~5年)の通信を拾ってみると、陸上では伝令、命令書、電話。海上では信号旗、手旗信号、発光信号光無線(電信)です。陸戦での電話というのは有線だと思われます。司令部と前線の部隊を有線でつないでいたのでしょう。司馬遼さんはこの辺りに興味がないのか、司令部の児玉源太郎が前線司令部の参謀を電話で叱った、という程度の表現です。東京の参謀本部とも連絡をとっていますが、「電報」というだけで詳細は不明。艦船に積まれていた無線機が満州の司令部にあったのか、最寄り?の無線局まで電文を持参したのかどうか。

信号旗
 船どうしの信号旗は度々登場します。マスト旗を掲げる通信で、「石炭が無くなった」という簡単なものから、例えばバルチック艦隊がベトナムのヴァン・フォン湾を対馬海峡に向けて出航する際に、

(バルチック艦隊司令官ロジェストウェンスキー)はこの喜びをあらわすために全艦に対し、難解な信号をかかげている。
「神は、我々の精神を強化したまい、かつてなきこの大遠征を克服するための力を貸し給うた。神は我々をして皇帝の希望を果たさしめ、さらに祖国の恥辱を血をもって洗い清めるための力を与え給うた」

 信号旗でこんな文章まで表現できるのかどうか。東郷平八郎が日本海会戦で掲げたのはZ旗。これにつては、

艦隊の各艦とも信号書を持っている。その信号書に、この出動の数日前、四色のZ旗一旒が掲げられた場合の信号文が、エンピツ文字で書き込まれていた。その文章については各艦の航海長か航海士が知っている程度で、艦隊のだれもが知らない。・・・四色の旗はやがて飄風のなかに舞い上がった。
皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ、各員一層奮励努力セヨ
各艦とも、この信号文がすぐさま肉声にかわり、各部署の伝声管を通じて全員の耳に伝わった

これでロジェストウェンスキーの旗の謎が解けました。ちなみにトラファルガーの海戦で掲げられた旗の意味は「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する」だそうです。
1024px-Zulu_flag.svg.jpg J_M_W_Turner-La_bataile_de_Trafalgar.jpg
 検索すると、国際信号旗(旗旒信号)にはアルファベット文字旗(26種)、数字旗(10種)、代表旗(3種)、回答旗(1種)の計40種があるそうで、
 ・文字旗にはそれぞれ意味が込められており、例えばAは「本船で潜水夫が活動中、徐速して通過せよ」。
 ・1字信号には、数字を伴って使用する補足的な用法がある。例えばAは方位角または方位。
 ・2字信号は、 “C”“B”の順に並べて掲げると「至急救援を求める
 ・3字信号もあり、「UW」に“1”を追加して掲げると「協力に感謝する
補足用法とアルファベットで大抵の通信が可能なようです。なかなか奥が深いです。
 例えばバルチック艦隊第三戦艦隊のネボガドフが降伏した時には、X/G/Eの三枚の信号旗が掲げられます、「ワレ降伏ス」。

 「敵艦見ユ」の報を受け、聯合艦隊が出航します。出港命令は信号旗です、

これら各艦への命令伝達に無電は使われず、総て旗旒信号が用いられた。伝達は艦隊から戦隊へ、戦隊から単艦へと伝わってゆく。
信号長は、三笠の船橋の旗甲板に立っている。きらきらと綴られてゆく旗の言葉に対し、これを受ける各艦は、応旗(アンサー)を半分だけあげ、やがて三笠がことごとく言い終わると、各艦は応旗をいっぱいにあげ、了解をしたことを返答した。

信号旗が使われる様子がよく分かります。

タグ:読書
nice!(6)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 6

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。