SSブログ

ジョージ.R.R.マーティン 七王国の玉座 上 (2002早川書房) [日記 (2020)]

七王国の玉座〔改訂新版〕 (上) (氷と炎の歌1)ウェスタロス.jpg
ウェスタロス

ウェスタロスという架空の世界を治める「鉄の玉座」を巡って、七つの諸侯が戦うファンタジーです。人気のTVドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ 』の原作です。primeビデオで観ました、権謀詐術の渦巻くドラマは確かに面白い。原作のタイトルは『氷と炎の歌』。『七王国の玉座』、『王狼たちの戦旗』、『剣嵐の大地』、『乱鴉の饗宴』、『竜との舞踏』、『冬の狂風』の六部構成で(外伝まである)、『七王国の玉座』だけでも上下二巻、400ページに二段組で活字がビッシリ。これは読み応えがありそうです。岡部宏之の旧訳ですが、文章はこなれていて読みやすいです。それにしても、この表紙は何とかなりませんかね。

ウェスタロス
 七王国のあるウェスタロスは英国のような列島です。ウェスタロスの北には氷の(高さ200m、幅500kmの人工の壁)があり、壁の北に住む野人異形人から七王国を護っています。ウェスタロスの季節は長い夏と冬のふたつで、夏と冬は十年近く、時によっては数十年続くという異世界です。ウェスタロスの東にはブラーボス、ペントスなどの自由都市のある大陸エッソスがあります。北からの異族の侵入を防ぐ壁はハドリアヌスの長城を連想しますから、ウェスタロスとエッソスはイギリスとヨーロッパ大陸の近似と考えてよさそうです。
 ウィキペディアによると、物語りに登場するエダード・スタークはヨーク公、ティリオン・ラニスターはリチャード3世、 デーナリス・ターガリエンはヘンリー7世に相当するということです。つまり、中世ヨーロッパ(のような世界)を舞台に、諸侯の覇権を賭けた争いに騎士に魔女や異形の者、おまけにドラゴン(竜)まで登場する大スペクタクルです。『指輪物語』にも魔法使い、ドラゴン、オークが登場しますから似たようなものです。『指輪物語』が人間と悪魔が戦うファンタジーだったのと比べると、『氷と炎の歌』は登場人物たちの陰謀と詐術が渦巻くより人間臭いドラマとなっています。

 かつて、ウェスタロスの支配者はターガリエン家でしたが、ロバート・バラシオンとエダード・スタークがこれを滅ぼし、ロバートが新たな王となります。ウェスタロスは、バラシオン王朝の下にスターク、ラニスター、アリン、タリー、ティレル、グレイジョイ、マーテルの有力諸侯(七王国)が並立する連合王朝です。ロバートはラニスター家のサーセイ、エダードはタリー家のケイトリンと婚姻し、その勢力の均衡を図っています。戦国大名の政略結婚、ハプスブルグ家の結婚戦略みたいなものです、一方でウェスタロスの覇権を得るべく相手方を虎視眈々と狙っています。『国盗り物語』か中世イギリスの封建諸侯の世界です。この七王国に滅んだターガリエン家の王女が加わり、ウエスタロスの覇権を争う戦乱の物語です。
 数千ページにおよぶ大長編ですから地名と人物が数多く登場します。ウェスタロスの地図、家別の登場人物一覧がありしますから、適宜参照しないと混乱します。

七王国
 物語りは、長かった夏が終わり冬が訪れようという季節から始まります。ロバート・バラシオンの”王の手(宰相)”が死に、ロバートは北部総督エダード・スタークを新たな宰相に任命すべく王妃以下を引き連れスターク家の居城ウィンターフェルを訪れます。この訪問で、主人公となるバラシオン家、スターク家の人々があらかた紹介されます。
 『七王国の玉座(上)』は、スターク家の当主エダード、妻ケイトリン、長女サンサ、次女アリア、次男ブランドン、それにエダードの庶子ジョン・スノウ、ラニスター家の次男ティリオン、滅んだターガリエン家の王女デーナリスの視線で構成されています。この時点で、デーナリスは東の大陸エッソスにいますから、七王国に関わってくるのは後の話。ロバートの王妃サーセイ(ラニスター家)、王位継承者ジョフリー、サーセイの双子の弟でロバートの騎士であるジェイム・ラニスターも登場しますが、これも絡んで来るのは後の話です。

ターガリエン家
 エッソスに逃れていたターガリエン家の王子ヴァイサリスは、妹デーナリスを騎馬族・ドスラク人の族長に売り、ドスラク人の兵を使ってウェスタロスに攻め入ってターガリエン家再興を目論んでいます。ターガリエン家はドラゴンの血を引く家系で、ドラゴン登場の伏線となります。ウェスタロスの七王国とその東にあるターガリエン家という基本的な構図が出来上がります。
スターク家、ラニスター家
 ロバート王の訪問で事件が起きます。サーセイとジェイム・ラニスターの密会(つまり近親相姦)を目撃したブランドン・スタークは、ジェイムに突き落とされて意識不明となり、さらに口封じのため刺客に襲われます。エダードは、宰相となるためサンサ、アリアを連れて王都キングスランディングに向かい、庶子ジョンは”壁”を守る夜警団(ナイツウォッチ)に入団するためスターク家を去ります。野生人、異形の者からウェスタロスを守るナイツウォッチは、世俗の欲望を捨てて壁を守る”防人”です。実態は、ナイツウォッチに入ればすべての罪は免除されるため、七王国に居られなくなった人や元犯罪者の集団。七王国に加え、物語にナイツウォッチ、野生人、異形の者という存在が加わります。
 ケイトリンは王都に夫エダードを訪ね、刺客の持っていた短剣がティリオンのものと分かり、テリィオンを捕虜にしたためラニスター家とスターク家の確執が表面化します。
 王都に行き宰相となったエダードは、前任の宰相の死は暗殺ではないかと疑い、エダードの宰相を喜ばない勢力はエダード排除に動き出します。大蔵大臣にして娼館の主ベーリッシュ公、宦官でスパイの親玉のヴェリースが登場し、前宰相の死の謎、ブランドンに放たれた刺客の謎、謎が謎を呼んで七王国の玉座をめぐる争いは混沌を深めてゆきます。

タグ:読書
nice!(5)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。