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映画 エル ELLE(2016仏独ベルギー) [日記 (2020)]

エル ELLE [DVD]  原題もELLE、フランス語で”彼女”という意味だそうです。このELLEことミシェル(イザベル・ユペール)が覆面の男に自宅でレイプされるシーンから始まります。彼女は荒された室内を掃除し、ゆっくり風呂をつかい、宅配寿司を注文する余裕。警察は信用ならないと被害届けも出さず、レイプ犯撃退用に辛子スプレーと斧を買いますから、今度来たら”殺す!”ということなのでしょう。

elle(ミッシェル)
 ミシェルの人物像が次第に明らかになります。彼女はゲーム会社の社長でバツイチ。元麻薬の売人という出来の悪い息子にはもうすぐ子どもが生まれるようですから、彼女はいい歳のオバサン。母親は整形を重ね若い男と結婚を目論み、父親はミシェルが10歳のころ無差別殺人を犯し無期懲役で刑務所。こうした過去が彼女を強くしたことが想像できます。
 会社ではやり手の社長として社員からは嫌われ、ミシェルがモンスターに襲われるという動画が社内にバラ撒かれる嫌がらせまで起きます。おまけに共同経営者アンナ(アンヌ・コンシニ)の夫とオフィスラブという無軌道振り。またも覆面男が現れて彼女をレイプしますが、灰皿でこれでもかと相手を殴りつけ...→これはミシェルの妄想で、その後ニヤリ。まるで襲われるのを待っているかの様。フェミニズムもジェンダーも吹っ飛び、後になって”mee too”などとは決して言わないタイプです。

 レイプ犯からメールが届くようになります。ベージュの服が似合っているなどと、犯人はミシェルを見張っている、あるいは身近の人間ということになります。犯人は社内にいる? →コイツか?と思う男性社員を社長室に呼んで、「ズボンを脱げ」。この社員は割礼していなかったのでシロ、いくら社長とはいえ、です。誰がレイプ犯なのかという一応ミステリ仕立てですが、真犯人などどうでもよくなり、ミシェルの悪女振り?に見とれてしまいます。二度目に襲われた時、レイプ犯の覆面を剥ぎ取り掌にハサミを突き立てます。なんとレイプ犯は向かいに住む銀行員のパトリック。その後何食わぬ顔で近所付き合いをし、”目覚めた”ミシェルは、パトリックを誘惑します。ミシェルの悪女振りはとどまるところがありません。

elles(女たち)
*アンナ
 ミシェルの親友でゲーム会社の共同経営者。夫がミシェルと浮気していることを知ると夫を叩き出し、その後ミシェルと同棲 →ふたりとも「男など要らない!」ということでしょう。
*ミシェルの母親
 夫が服役中に女手ひとつでミシェルを育て、ひ孫ができるという歳で整形して若い男を漁る。
*ジョジー
 ミシェルの息子ヴァンサンの同棲相手。ヴァンサンを完全に支配。生まれた子供は肌の色が黒く、父親は彼ではなさそう。
*エレーヌ
 ミッシェルの元夫リシャールの恋人、ヨガのインストラクター。売れない作家リシャールを見限る。
*レベッカ
 ミシェルの家の向かいに住む銀行員の妻。レイプ事件終了後、「変態の夫と付き合ってくれてありがとう」とミシェルに言う度胸がある。

 つまり、登場する女性は誰もが精神的に自立し”したたか”。

ils(男たち)
*リシャール
 ミシェルの元夫で売れない作家。レイプ犯に間違われ、撃退スプレーをかけられる間抜けぶりを発揮。恋人のエレーヌに捨てられる。
*ロベール
 アンナの夫でミシェルの不倫相手。ミシェルはセックスだけの関係と割り切っている。「嘘をつくのが嫌になった」とミシェルがアンナに浮気を告白したため家を追い出される。
*ヴァンサン
 元麻薬の密売人で現在はファーストフード店の店員。恋人ジョジーの生んだ肌の色が違う子供を我が子と疑わないお人好し。母親を襲ったレイプ犯を撲殺するはめに。
*パトリック
 向かいに住む銀行員、レベッカの夫。レイプでなければ性的に満足できない変態 →つまりミシェルを襲ったレイプ犯。懲りずにミシェルを襲撃し、ヴァンサンに殺される。
*ミシェルの父親
 無差別殺人で服役中、動機などは不明。ミシェルは母親のたっての願いで面会に行くが、彼女が面会に来ると聞いた途端自殺してしまう。スマホの画面と死体でのみ登場。

 男性は皆ひ弱で線が細い。何やってるんだ!と言いたくなります(笑。

 『エルELLE』は、カトリーヌ・ドヌーヴ、ブリジット・バルドー、アンナ・カリーナなど美女を据えて「男と女」を描いてきたフランス映画の最右翼のような映画です。
 “性悪女”の物語というと、映画『黙秘』があります。キャシー・ベイツの圧倒的な存在で、見ごたえがありました。『黙秘』のドロレスは「悪態が生きるよすが」とつぶやきますが、ミシェルなら「性悪こそ生きるよすが」と言いそうです。イザベル・ユペールの存在感も強烈で、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされたそうです。amazonのカスターレヴューを見ていると好悪分かれるようですが、ミシェルの痛快無比な悪女振りには脱帽というほかはありません、さすがフランス映画。オススメです。

監督:ポール・バーホーベン
出演:イザベル・ユペール クリスチャン・ベルケル アンヌ・コンシニ クリスチャン・ベルケル

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