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映画 イリュージョニスト(2010仏) [日記 (2020)]

イリュージョニスト [DVD]  『ぼくを探しに(2013仏)』のシルヴァン・ショメのアニメです。この監督は元々アニメ作家で、『ぼくを探しに』が最初?の実写映画だったようです(但し完成度は高い)。『ぼくを探しに』同様、この映画の面白さも文章にし難いです。会話の少ない全編パントマイムのようなアニメで、ですから映像そのものを楽しむことができます。適度にデフォルメの効いた手書き風の絵は、ノスタルジックで癒やされます。


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 ストーリーはシンプル、老手品師タチシェフと少女アリスの出会いと別れに過ぎません。1959年パリ、ミュージックホールで幕間に手品を演じるタチシェフは、売れない芸人。帽子からウサギを出す手品がウリのようです。手品師と旅するこのウサギは、シチューの具にされかかったりと映画にアクセントを添えています。タチシェフの手品を見たスコットランド人が「オレの故郷に来ないか」と誘い、手品師とウサギはパリからロンドン、スコットランドへと旅に出てストーリーが動き出します。都会では売れなかったタチシェフの手品も、田舎(離島?)のパブでは拍手喝采。タチシェフは、このパブ兼宿屋のウェイトレス兼女中のアリスと出会います。アリスは、「田舎のパブで燻ぶっていても仕方がない」と思ったのかどうか、島を去るタチシェフに付いてゆき、手品師と少女の旅が始まります。

 「旅芸人」は、『道』『ロスト・チルドレン』『魔術師』『旅芸人の記録』などなど映画の伝統なんでしょうか、漂泊と哀愁の象徴です。「日々旅にして旅を栖(すみか)とす」と、句会を開きながら旅をした芭蕉もまた旅芸人?。タチシェフはエジンバラ?のミュージックホールに出演し、アリスはタチシェフと暮らし始めます。アリスはタチシェフのために食事を作り、ふたりで街を散歩してフィッシュ アンド チップスを食べたり、まるで父と娘のような生活です。タチシェフはアリスを喜ばすために、服や靴を買って与えます。そのためアルバイトを始めます。タチシェフは時折写真に見入りますから、故郷に残した娘がいるのか、幼い娘を亡くしたのか。タチシェフは、その娘を想ってアリスを慈しむのでしょう。
 少女から娘に脱皮したアリスに恋人が出来ます。ふたりのデートに遭遇したタチシェフの慌てぶりは、父親そのもの。娘の成長を見届けた老手品師は引退を決意し、ウサギを野に放し、「魔法使いは、いない」と置き手紙を残して去ります。「魔法使いは、いない」とは、アリスへの別れの言葉であり”はなむけ”の言葉なのでしょう。
 老手品師が少女と出会って分かれるそれだけですが、ほのぼのと心にしみるアニメです。オススメ。

監督:シルヴァン・ショメ
脚本:シルヴァン・ショメ
原作、オリジナル脚本:ジャック・タチ


タグ:映画
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コメント 2

Lee

大好きな作品です。セリフが無くモゴモゴとつぶやく声がかすかに聞こえるのが面白いですね。パントマイムの伝統なのでしょうか。これを観てからスコットランドのエディンバラに旅行したのを思い出しました。
by Lee (2020-03-29 16:48) 

べっちゃん

アリスの話す言葉はゲール語なんでしょうか。シルヴァン・ショメは、言葉のコミュニケーションが成立しない世界、スコットランドをアニメの舞台に選んだのでしょうね。
by べっちゃん (2020-03-30 21:50) 

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