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金完燮 親日派のための弁明 ② (草思社2002) [日記 (2020)]

親日派のための弁明続きです。
日本の統治
 日韓併合の後、朝鮮は近代化の道を歩み出します。日本の投資は、多い年には国家予算の20%にあたる2000万円に達し、経済成長率は1911年~1938年年平均3.8%、工業生産比率は18%から41%になるそうです。農業生産の増加、教育の普及など朝鮮の近代化は、呉善花『韓国併合への道』、李栄薫『反日種族主義』などにも詳しく述べられていますから、間違いのない事実なのでしょう。

 この日帝支配35年の間に、朝鮮民族は日本は国土の40%を収奪され、従軍慰安婦、徴用工と塗炭の苦しみに陥り、一方で、満州では抗日ゲリラを組織し中国共産党と共に日本軍と戦い、大韓民国臨時政府を作って独立運動を繰り広げます。さらに日本の敗戦によって独立を果たし、朝鮮戦争、軍事政権、漢江の奇跡をへて今日の繁栄を築いた、ということになっています(韓国の高校歴史教科書)。

 日本が朝鮮の農業生産性向上のために投資した灌漑事業や農村開発事業、興南(咸鏡南道)の窒素肥料工場、水豊(平安北道)の水力発電所、鎮南浦(平安南道)の工業団地などの重化学産業の建設などは、何処へいったんでしょう。

私たちが韓国社会への日本の寄与を高く評価すべきなのは、かれらが朝鮮半島に社会間接資本を建設して工場を建てて人びとを開化させたからではない。もし私たち自身が立憲君主国家をつくり、長い歳月をかけて自力で近代化をこころみたとしても、当時の朝鮮の文化、社会制度、理念といった精神的な装置は堅牢で、私たち自身の手では壊せなかった。500年という長きにわたってつくられ、改められ、ととのえられた精巧な体制だったから、すこしくらいの変化と衝撃ではびくともしない。日本という異民族の統治を受けたがゆえに、かくも短期間に前近代的な要素を徹底して破壊し、そのうえに新しい社会を移植できたのだ。

 韓国近代化のために、壬午軍乱、甲申政変、東学農民戦争、甲午改革、乙未事変と、5回の試みがあったわけですが、いずれも失敗しています。近代化のためには500年の儒教社会の破壊こそが必要であり、この破壊は外部勢力なくしてはなし得なかったのです。

 本書でも述べられていますが、台湾もまた日本の多額の投資によって近代化を果たした国です。国民党はこの日本の遺産をそっくり乗っかって今日の繁栄を築いたことになりますが、今日の台湾に韓国なような反日感情はありません。

 著者は、アメリカ自治連邦のプエルトリコを例に引き、民族の独立とは全てが善かと問います。19世紀末までスペイン領だったプエルトリコは、1898年にアメリカに占領され以来、貧しい農業国は先進工業国に変貌し、現在では一人あたりの国民所得が7000ドルを越す中南米でもっとも豊かな国となります。アメリカの統治を受けていなかったら、プエルトリコはラテンアメリカの最貧国であったことは確実。プエルトリコにも独立を訴える民族解放軍があるそうですが、独立すれば国民は現在の生活レベルを維持できるかどうか。

国益というものが支配者の利益ではなく住民の利益をさすとすれば、住民がより人間的な生活、質の高い生活を享受できるのであれば、国を失うか維持するかという命題はなんの意味もないのである。安重根や金九、あるいは金左鎮や洪範図という、かつての朝鮮の独立ゲリラは、プエルトリコの民族解放軍似た存在だといえる。韓日併合は大多数の朝鮮人にとって喜ばしいことだった。
・・・100年前、韓日併合に反対して自決したり義兵をおこして死んでいった人びとは、守る価値のないもののために犬死にしたのである。朝鮮王朝はすでに腐り果て滅びる運命にあったのに、いったいかれらはなんの理由があって高宗に忠誠を誓い、朝鮮王朝を守るために尊い命を犠牲にしたのだろうか。

犬死とはチョットと思うのですが、民族の独立とはそれほど魔術を秘めた言葉と言えます。

大東亜共栄圏
 「第1夜明けのアジア」の最終章は「二一世紀の『大東亜共栄圏』の夢」。大東亜共栄圏から、日本帝国主義の侵略の毒を抜けば、この概念は使えると著者は言います。
 日本、朝鮮、満州、中国、モンゴルの五つの民族が融和を目指す満州国のスローガン「五族協和」、さらに台湾、東南アジア、インド、オーストラリア、ニュージーランドを加えこれらも地をヨーロッパの植民地支配から解放することを目指す「大東亜共栄圏」です。「いま考えてみれば北方系モンゴロイドの単一ブロックを唱えたことになる」というのです。大東亜共栄圏が日本軍部の戦略地図だったことことから、この言葉は日本の侵略と同義語となっていますが、ASEANのような経済的ブロックと考えれば、大東亜共栄圏は「使える」と著者は言います。
 1940年にオーストラリア、ニュージーランドを加えても夢想に過ぎませんが、現在の経済から見れば、この2国と日本、中国、台湾、韓国との結び付きは強く、大東亜共栄圏は早すぎたASEANでありTPPかも知れません。

この大東亜共栄圏のスローガンを墓から掘りだし、これを活用する可能性を模索すべきときがきている。近年の世界情勢の変化がアジア人に新たな選択を突きつけている。第二次世界大戦後、半世紀にわたってつづいた冷戦構造が崩れていらい、世界は国連とWTO(世界貿易機関)体制のもとで、グローバリゼーションとブロック化という相反した潮流が同時進行する一大再編期を迎えている。そのようななかで、EUと北米自由貿易地帯が結成され、戦後世界経済の三大主軸だった西ヨーロッパと北米、東アジアのうち、唯一東アジアだけがブロック化の潮流にのり遅れる事態となっている。

 まず韓国と日本は連邦制の政治体制(新日韓併合)を築き、これに台湾、オーストラリア、ニュージーランドを加えて人口二億の「大東亜連邦」を形成し、順次北朝鮮、中国、ASEANを吸収するいう気宇壮大なプランです。中国と北朝鮮は政治体制の問題もあり、百年経っても難しいと思うのですが、現在の東アジアの覇権争いを思うにつけ、はるか未来の「大東亜連邦」を想像することは楽しいです。5~6世紀には朝鮮南部と北九州はひとつの文化圏であり、17世紀には東南アジア各地に「日本人町」があったのですから。本書が出版されたのは2002年、2020年の現在には、ポピュリズム、移民問題服、防疫まで加わり前大東亜連邦は夢のまた夢という他はありません。
 著者は、この大東亜連邦の旗振り役こそ韓国だとし、

これほど重要な時期に、韓国政府は偏狭な歴史認識にもとづいて日本に教科書の修正を要求し、総理大臣の神社参拝を問題にするなど反日策動をつづけながら、両国の文化交流を妨げている。・・・韓国政府はなぜ反日感情を真の愛国心であるかのごとく国民をごまかして、みずから日本との政治、文化、経済の交流を妨げる役割を買ってでているのだろうか。

と結びます。

 本書で述べられているのは「反日」の(失礼ながら)病理ですが、反日の根にあるものは何なのか、どうすればこの病理から抜け出すことができるのかという処方箋については述べられていません。著者が反日から親日に転向したのは、本書で述べられている〈歴史〉を知ったからだそうですから、(『反日種族主義』もそうですが)言論の自由のない韓国で実証的な歴史を書く(言う)勇気と地道な努力こそが処方箋なのかも知れません。

 昨今の「反日」を見ていると、もっと根の深い何かがありそうな気がします。

・・・目次・・・
第1部夜明けのアジア       

 私たちはかれらを「チョッパリ」と呼ぶ
 「罪」というなら負けたことこそが「罪」である
 韓国と中国に日本を非難する資格があるのか
 経済発展の種を提供した日本
 私たちはなぜ日本を選択したか
 台湾近代化の父、後藤新平
 人種優越主義を打倒したモンゴルと日本
 なぜ「オレンジ畑でリンゴを探す」のか
 日本時代は私たちにとって祝福だった
 「独立」イデオロギーの歪んだ姿
 李完用は売国奴だったのか
 二一世紀の「大東亜共栄圏」の夢

第2部 相生の歴史
 韓日共存の歴史
 革命家、金玉均
 暗い死の時代
 東学の思想、「人乃(すなわち)天」
 全羅道コミューンとパリ・コミューン
 リエンジニアリング・朝鮮
 日清戦争とはなんだったのか
 専制君主、高宗の抵抗
 朝鮮維新をめざした「一進会」
 日露戦争、朝鮮の吸収合併
 植民地は原料の供給基地と工業製品の市場

第3部カミカゼの後裔たち
 独島(竹島)は日本の領土
 対韓請求権と対日請求権
 ある留学生のメール
 日本精神、神道、靖国神社
 カミカゼの後裔たち
 ハワイとプエルトリコの選択
 「馬鹿たちの行進」はいつまでつづくのか
 日本人の本音

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