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宮崎駿 コミック 風の谷のナウシカ(徳間書店1997) [日記 (2020)]

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 2 (アニメージュコミックスワイド判)風の谷のナウシカ 3 (アニメージュコミックスワイド判) 今更ながら『風の谷のナウシカ』。アニメは地上波で放映され何度か観ていますが、アニメと原作は別物と聞いたので、漫画(コミック)を読んでみました。1984年にアニメ化されていますが、宮崎駿は1994年まで書き継いでいったことになります。宮崎駿のアニメはたくさんありますが、漫画は本作と『風立ちぬ』2作だけ、宮崎の思い入れが窺われます。
 マンガを読むのは『カムイ伝』以来数十年ぶりで、活字慣れした身にはマンガを読むのは一苦労。

ナウシカの世界
 アニメの方は、核戦争を思わせる「火の7日間」で文明は崩壊し、生き残った人類は、巨大化した昆虫と「瘴気」を撒きちらす菌類のはびこる世界で生き残り、ナウシカが「腐海」の謎を解き、破壊さらた自然との共生を模索するエコロジー。アニメは、コミックの第1~2巻をダイジェストしたものです。コミックはアニメの終わったところから始まります。
 文明を再興した人類は、北のトルメキア帝国と南の土鬼諸侯国(ドルク、これはアニメには登場しません)が覇権を争って戦い、それに巻き込まれた辺境国の「風の谷」のナウシカが、世界に平和を取り戻そうとする話です。腐海、王蟲と巨神兵も登場しクシャナ、ユパも健在ですが、アニメとコミックは全くの別物。

 ナウシカの乗るメーヴェ(動力付きグライダー)や戦闘機ガンシップも「火の7日間」の後に興ったエフタル文明の遺物で、補修はできても航空機のエンジンを作るだけの科学文明は持っていません。政治形態は封建制、経済は農業中心でマニュファクチャーが生まれていた中世末期のヨーロッパのごときもの。工房都市ペジテが、世界を7日間で滅ぼしたという最終兵器・巨神兵を掘り出し、トルメキア帝国が巨神兵を奪おうとしたことで戦争が勃発します。ナウシカは、このトルメキア戦争に巻き込まれる形で登場しますから、中世ヨーロッパとジャンヌ・ダルクを下敷きにした騎士物語ともいえます。銃弾が飛び交いガンシップのドッグファイトがあるかとおもえば、腐海の剣士ユパがセラミックの剣を振るいます。

腐海と巨神兵
 宮崎駿の最大の妄想が「腐海」です。トルメキアも土鬼も想像の範囲ですが、腐海という発想はちょっと思い付きません。腐海は、核戦争の後に誕生した菌類の生態系で、腐海の出す毒(瘴気)を吸うと人間は5分と生きられないという、文明が生み出した負の遺産です。ところが、腐海は、核戦争で汚された大地を浄化するという役目も担っています。腐海に生息するのが王蟲などの「蟲」というのも秀逸。王蟲が大暴走(大海嘯)し、その亡骸を苗床に菌類が繁殖して腐海が広がり、人類を追い詰めてゆきますが、これは同時に人類を救うわけですから両義牲を持っています。腐海と王蟲は『ナウシカ』の重要なメタファーです。

 もうひとつのメタファーが、核の象徴の巨神兵。7日間で世界を焼き尽くした巨神兵の「火」は、アニメではトルメキア軍が王蟲攻撃に使います。コミックでは、巨神兵は単なる兵器ではなく、意識(自我)を持った存在として描かれ、自分を解放してくれたナウシカを母親と見なすようになります。宮崎駿はナウシカを何処へ誘うのか。続きます

タグ:読書
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