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映画 見知らぬ乗客(1951米) [日記 (2020)]

見知らぬ乗客 特別版 [DVD]  原題、Strangers on a Train。『太陽がいっぱい』で有名なパトリシア・ハイスミス原作、ヒッチコックのサスペンス映画です。

 有名テニスプレーヤーのガイ(ファーリー・グレンジャー)は、列車で「見知らぬ乗客」ブルーノ(ロバート・ウォーカー)と乗り合わせます。ブルーノは大学を3回除籍されたという金持ちの放蕩息子。母親からプレゼントされた名前の入ったタイピンを付けていることから、『サイコ』のマザコンの主人公ノーマンを彷彿とさせます。マザコンのブルーノにとって、人生に立ちはだかる最大の敵は父親。いずれ父親を亡き者にしようと考えるサイコパス。
 一方のガイは、イケメンで健康的な典型的なアメリカの好青年。サイコパスと理想の好青年という対比は面白いです(名前もguy)。ガイは浮気な妻ミリアムを持て余し、上院議員の娘アン(ルース・ローマン)と不倫中。アンの父親の跡を継いで政界に打って出ようという野望がありますが、ミリアムは離婚を承諾せずこれが障壁。

 父親を亡き者にしようというブルーノ、野望達成のために不倫相手の父親を利用しようというガイ。ヒッチコックの映画には「マザコン」はお馴染みですが、「エディプスコンプレックス」も潜んでいるんかもしれません。

 父親を抹殺したいブルーノと、妻を葬りたいガイが「見知らぬ乗客」として列車に乗り合わせたということになります。「交換殺人」を持ちかけたのはブルーノ。ブルーノがガイの妻を殺しガイがブルーノ父親を殺せば、動機とアリバイで完全犯罪が可能となります。常識人のガイは一笑に付しますが、独善的なブルーノはガイの妻を殺してしまい、ガイに父親殺しを迫ります。
 何ものとも知れない恐怖が迫り来る様はヒッチコックならではのもの。ブルーノを演じるロバート・ウォーカーの演技は秀逸です。惜しくも映画の公開直後に32歳で亡くなっています。

 ブルーノがガイの妻を殺害する場所は遊園地。ガイと争ってブルーノが死ぬのも遊園地の回転木馬。遊園地というファタスティックな場所も、実は幻影を秘めた恐ろしい場所なんだと言っているようです。ファンタジーと殺人の恐怖をミックスさせたチャールズ・ロートンの『狩人の夜』を彷彿とさせます。モノクロームの映像は、ブルーノの得体の知れない狂気と実にマッチします。

 交換殺人は、現在ではありふれたプロットです。ブルーノに殺人を迫られるガイという構図以上に、この二人は、実は双生児ではないかと思わせるところが『見知らぬ乗客』の奥深いところです。
 ロバート・ウォーカーの狂気は一見の価値ありです。

監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:パトリシア・ハイスミス
出演:ロバート・ウォーカー、ファーリー・グレンジャー、ルース・ローマン

タグ:映画
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