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赤坂憲雄 ナウシカ考 風の谷の黙示録(2019岩波書店) ③ [日記 (2021)]

ナウシカ考 風の谷の黙示録 シュワの庭
 第7巻、シュワの庭から墓所に至る辺りが、本書のハイライトです。
 庭の主は、ナウシカと森の人セルムに「この世界の成り立ち」、腐海と王蟲の秘密を教えます。
「火の7日間」の後、生き残った一群の人々が残された知と技術をかき集めて、腐海や王蟲を主役とする世界の浄化システム、人間を含む新たな生態系を構築したといいます。天地創造の物語です。汚染された世界で生きてゆけるように(遺伝子操作で?)人間や動植物を作り変えた、それがナウシカ、アンタだといいます。「創造主」がいると。世界は、「火の7日間」を境にそれ以前の旧世界と以後の新世界に分かれ、人類も旧人類とナウシカたち新人類に分かれているというのです。
 ナウシカの物語を読んできた読者は、ここに来て見事に大逆転を喰らうことになります。今さらナウシカの世界を作った創造主がいると言われても、です。

 さらに腐海が大地を清浄化した時、汚染された土地で生きてゆけるように改造された人間(新人類)は、浄化された大地では腐海と共に滅びる運命にあるのだといいます。その創造主(旧人類)は土鬼の首都シュワの墓所にいるといいます。

 シュワの庭とは、大地が浄化された後に地上で再び繁栄すべき旧世界の動植物を集めたノアの方舟だと。さらに人類が旧文明で築いた文学や音楽など芸術のアーカイブだと。一方の墓所は、旧文明の科学技術を詰め込んだアーカイブであり、墓所に両アーカイブを作った旧人類の末裔、それは人間を汚染された地上で生きるように改造した旧人類ですが、未だ彼らが生き長らえているといいます。シュワの庭と墓所は、地球再生計画の拠点ともいえる施設で、こうなるともうSFの世界です。シュワの庭の主は旧人類かというと、実は旧人類が作った地球再生計画に奉仕する人造人間ヒドラ。
 旧人類は、アーカイブと方舟を作り人間を改造して、破壊された自然と文明の再興を計画していたのです。墓所の主によるこの地球の再生、文明の再興が、『ナウシカ』の隠されたテーマです。で、ナウシカは、

ナウシカ:たとえどんなきっかけで生まれようと生命は同じです おそらくヒドラでさえ...
 精神の偉大さは苦悩の深さによって決まるんです
 粘菌の変異体にすら 心があります
 生命はどんなに小さくとも 外なる宇宙を内なる宇宙に持つのです

セルム:この世界に仕組まれた秘密がシュワの墓所の中にあると・・・

ナウシカ:この庭は墓所の貯蔵庫です 中心ではありません。セルム、私は行きます。扉をとざしにではなくこじあけてでも真実を見極めるために…(7-132)

 新人類ナウシカは、真実を見極めるためシュワの墓所に向かい、墓所の主である旧人類と対決します。

当blogのナウシカ

タグ:読書
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