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いしい しんじ げんじものがたり(2021講談社) [日記 (2021)]

げんじものがたり  『源氏物語』を「京ことば(京都弁)」に訳した『げんじものがたり』です。源氏物語は当時の書き言葉、今でいう文語体で書かれていますから現代人には敷居が高い、で与謝野晶子や谷崎潤一郎等が現代語に訳し身近になったわけです。作者の紫式部は京都人ですから、普段は京ことばを話していたはず。まぁ今の京都弁とは幾分違っていたにしてもです。
 「こんど紫式部はんの書かはった物語り、ごっつう面白い!、あんたも読んでみぃ」と内裏の女房の間で評判になったはず。じゃぁいっそのこと、源氏を京都弁で訳せば(少なくとも標準語に訳するよりも)当時の雰囲気に近づけるんじゃないか、というわけでしょう。取り合えずは桐壺~葵までの9帖、続編が出るのかどうかは?。でどんな訳かというと、冒頭の「桐壺」から、

【原文】
いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。はじめより我はと思ひ上がりたまへる御方がた、めざましきものにおとしめ嫉みたまふ。同じほど、それより 下臈の更衣たちは、ましてやすからず。

【いしい しんじ訳】
どちらの帝さまの、頃やったやろなあ。女御やら、更衣やら……ぎょうさんいたはるお妃はんのなかでも、そんな、とりたててたいしたご身分でもあらへんのに、えらい、とくべつなご寵愛をうけはった、更衣はんがいたはってねえ。
宮中で、フン、うちがいちばんに決まったあるやん、て、はなっから思いこんだはった女御はんらみんな、チョーやっかんで、邪魔もん扱いしはるん。おんなしくらいのご身分や、それより下の更衣はんらにしても、ずんずんあからさまに、いらいらを募らせはってね。

あまたさぶらひたまひける →ぎょうさんいたはる
はじめより我はと思ひ上がりたまへる →フン、うちがいちばんに決まったあるやん、て、はなっから思いこんだはった
めざましきものにおとしめ嫉みたまふ →チョーやっかんで、邪魔もん扱いしはるん

「ぎょうさんいたはる」マァそんなものですが、「フン、うちがいちばんに決まったあるやん」、「チョーやっかんで(妬っかむ)」になると、なるほどナァ…。

 源氏には和歌が付き物です、これどうするんだろう、

咲く花に うつるてふ名はつつめども 折らで過ぎうき けさの朝顔
(咲いたばかりの花に浮気した、いうて評判になるんは かなんけど、このまま手折らんと帰るんはもったいなさすぎる、朝顔みたいな君) 
かなんけど →かなわないけど、です。訳を訳して「どないすんねん」というところですがw。いきなり京都弁の訳が登場しても「なんやコレ?」ですから、和歌は和歌として記して訳を付けるというスタイルです。
 「かなん」という語感、関西人以外の方分かるのでしょうか?。関西のお笑いも今や全国区ですから、問題ないか?。
 「もののあはれ」もブッ飛ぶ『源氏物語』ですが、これはこれでアリです。源氏は、与謝野晶子訳で挫折して林望センセイの『謹訳 源氏物語』でやっと54帖を読み、『カラマーゾフ』も亀山郁夫センセイの新訳で制覇できました。現代語訳京都弁バージョンですから、源氏物語を読むハードルが一層低くなったようです。

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Lee

源氏物語は定かではありませんが円地文子か田辺聖子の訳で読んだことがあります。ストーリーの大筋はつかめたので知識としては役に立ちます。当時の雰囲気を感じるには京都弁も有効かもしれませんね。
by Lee (2021-08-01 11:18) 

べっちゃん

関西以外の方にはけっこう読み辛いとおもいます。林望センセイの『謹訳 源氏物語』が読みやすです。
by べっちゃん (2021-08-01 11:36)