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馳星周 少年と犬(2020文藝春秋) [日記 (2021)]

【第163回 直木賞受賞作】少年と犬 (文春e-book)  2020年、163回直木賞受賞作。東日本大震災で飼い主を失ったシェパードの雑種「多聞」が、かつて結んだ絆を頼りに岩手県釜石から南を目指す物語です。多聞が旅の途上で織り成す人との出会いを、『男と犬』『泥棒と犬』『夫婦と犬』『娼婦と犬』『老人と犬』『少年と犬』の6編の短編にまとめた連作集です。連作の主人公は「多聞」ですが、本当の主人公はやはり人。

 第1話『男と犬』では、大震災で生活基盤を失い窃盗団の片棒をかつぐ男と「迷い犬」が出会います。第1話で、犬の名前が多聞であること、犬は鼻先を絶えず南の方角に向けるため、男は「南には誰がいる?」と多聞に問いかけます。本書は、この問いが全6話を引っ張るミステリー風でもあります。
 第1話で、多聞はの避難生活で認知症を患った母親のセラピー犬となり、男は、大震災で失った家族の幸せを取り戻します。多聞は、仙台から新潟(泥棒と犬)、富山(夫婦と犬)、滋賀(娼婦と犬)、島根(老人と犬)と南を目指し、行く先々で人に癒しをもたらします。末期癌で余命幾ばくもない老人は呟きます、

(犬は)人という愚かな種のために、神様だか仏様だかが遣わしてくれた生き物なのだ。
人の心を理解し、人に寄り添ってくれる。こんな動物は他にはいない。(老人と犬)

 第6話『少年と犬』で、「南には誰がいる?」という第1話の問いの答えが明かされます。多聞は少年会うために岩手からはるばる熊本まで旅をしてきたのです。第1話~第5話は人の物語でしたが、第6話は犬の物語、多聞の物語となります。帰巣本能に導かれて、犬が何百キロも旅をする話は実際にあるそうです。岩手で結んだ絆を頼りに、少年に会うため日本列島縦断の旅をする犬の物語は荒唐無稽ですが、犬と人間は数万年来の友達ですから、数万年の間にはこんな話もあったかも知れません。

 作者も犬のために軽井沢に引っ越した愛犬家、この短編集を直木賞に推したのもきっと愛犬家、読んでいるあなたも愛犬家?w。
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 我が家の駄犬”ターボ”。「多聞」に比べると、名前からして駄犬ッポイ w。
 面白かったので、夏休みの宿題「読書感想文」にまとめてみました

タグ:読書
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Lee

犬は飼ってみたいけれど余裕がなくてお世話できなければかわいそうなので悩ましいところです。ターボ君にとっては暑い夏ももう少しの辛抱かな?
by Lee (2021-08-28 11:30) 

べっちゃん

朝夕の散歩、月に1度のトリミング、予防接種とそれなりに手間がかかりますが、犬と過ごす楽しさはそれ以上です。
by べっちゃん (2021-08-28 19:51) 

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