SSブログ

映画 戦う翼(1962米) [日記 (2021)]

戦う翼 [DVD]  原題、The War Lover。スティーヴ・マックィーン主演の戦争映画 + ラブストーリーです、モノクロ。
 この映画がマックィーンの主演映画かというと?。マックィーンはTVドラマ『拳銃無宿(1958~1961)』で人気が出て、『荒野の7人(1960)』『大脱走(1963)』で群像劇のひとりとして映画に進出、主演するのは『シンシナティ・キッド(1965)』からだと思います。1962年のこの映画でも、マックーンは戦時のパイロットの生態描いた群像劇の配役のひとりです。

 舞台は1943年イギリス・ケンブリッジ近郊のバッシングボーン基地。第二次世界大戦で、アメリカは連合国の一員としてバッシングボーンを基地にドイツ本土を爆撃します。この爆撃に使われたのがボーイングB-17で戦争映画の方の主役。ラブストーリーの方は、B-17のパイロット(機長)のバズ・リクソン大尉(スティーヴ・マックィーン)、コ・パイロット(副操縦士)のエド・ボーランド中尉(通称ボー、ロバート・ワグナー)、イギリス女性フネ(シャーリー・アン・フィールド)の三角関係です。

爆撃機 B-17
 爆撃機は、目的地まで戦闘機に守られて飛ぶのが普通ですが、B-17は重火器を備え戦闘機の護衛なしで飛ぶことのできる爆撃機です。そのため機体の前後、左右、上下部、下部の7つの銃座を持っています。(memo:B-17の乗員は機長、副操縦士、航法士、通信士、爆撃手、7箇所の銃手の計10人)また、

4発機のB-17は頑丈で優れた安定性を持つ機体でもあるため、エンジンの一つや二つが止まっても機体や翼が穴だらけになってもイギリスまで帰ってきたものが多数あった。(Wikipedia)

 映画でもメッサーシュミットの攻撃を受け、エンジンが1機停まり、3機のエンジンで帰還することになります。バズが腕のあるパイロットとして乗員と第8空軍から評価されているのも、こうしたB-17を操縦する技量に優れているからです。但し、唯我独尊で一匹狼と性格に問題あり。これは『拳銃無宿』以来のキャラクターで、晩年の『トム・ホーン』まで一環したものです。
 ドイツ北部の軍港キール爆撃作戦では、厚い雲のため指揮官は作戦を中止しますが、バズは命令を無視し8500ftまで降下して爆弾を投下。キール軍港に多大の被害を与えます。また、ドイツ本土にビラの投下を命じられると、ビラ投下など下らない仕事をさせるな!とばかり基地を超低空飛行で威嚇します。このキャラクターは、捕虜収容所で執拗に単独脱走を試みるアメリカ兵ヒルツに結実するわけです。
戦う翼.jpg 戦う翼2.jpg

三角関係
 戦争のパートを演じるのがスティーヴ・マックィーンで、ラブストーリーのパートを受け持つのがロバート・ワグナー。バズとボーはパーティでダフネに出会います。戦争の最中、酒を飲んで美女を集めてパーティーをやっていた国と日本は戦争をしていたわけですw。イギリスにとってドイツを空爆するB-17の米兵は大事なお客さんですから、自国の女性スタッフを接待係りにかり出すのは十分考えられます。ボーとダフネはたちまち恋に落ちます。デートの待ち合わせ場所がケンブリッジ大学の図書館ですから、映画とは言え優雅なものです。その頃日本軍は慰安婦を引き連れて(正確には彼女たちが日本軍を追って)中国大陸を転戦しています(『独立愚連隊』)。
 ボーはダフネの下宿に押し掛けまぁ結ばれるわけです。これも映画の話ですが、イギリス軍の暗号解読基地ブレッチリー・パークで似たようなプロットがあります(『エニグマ』)。日本陸軍に女性スタッフはいたんでしょうか?。『陸軍中野学校』にも女性スタッフは登場しません。

 バズは、俺の好みではないとか言ってますが負け惜しみ。バッシングボーンの兵士は、出撃回数が25回に達すると故国に戻ることができ、ボーに帰国の時が近づくともにダフネの心は揺れ動きます。戦時の恋愛は、男にとっては命の危険と背中合わせの一時の遊びに過ぎない、ボーは故国に帰ればダフネを忘れるに違いないと。一方、平和より戦争を好むバズはダフネの下宿に押しかけ、バッシングボーンに残るから俺の女になれとダフネに迫ります(マックィーンですからそんな下品なことは言いませんが)。迫るバズにダフネは言います。

あなたは破壊や殺しが大好きよね、だから終戦まで残るんでしょ
戦争はいつか終わるのよ、帰る場所がないのが怖いのね
あなたは憎むことしか知らない、わたしはボーを愛している

 これがタイトルの”The War Lover”の意味です。「帰る場所がない」というフレーズは映画の冒頭でのバスのセリフで、故郷喪失者のバズの生きる場所は戦争でしかなかったわけです。ロバート・ワグナーもシャーリー・アン・フィールドはスティーヴ・マックィーンのキャラクターを際立たせるための存在であり、『戦う翼』の主役は間違いなくマックィーンです。バズはダフネに見事にフラレます。

 ドイツ深部のライプツィヒへの爆撃命令が出て、1,000機のB-17が出撃します。ドイツ軍の燃料庫を破壊した帰路、バズとボーのB-17にメッサーシュミットが襲いかかります。この空中戦が映画のハイライト。4機のエンジンの一つや二つが止まっても機体や翼が穴だらけになってもという被害を受け、ヨタヨタとバッシングボーンを目指します。北海に不時着すれば助かるわけですが、弾倉に不発弾が引っ掛かっているため、不時着すれば機体は木っ端微塵。バズは乗員をパラシュートで脱出させ、機を基地に向けます。ボーは、そんなに英雄になりたいのかとバズを詰り、バズはダフネにはフラれたことをボーに言い残し、機を基地に向けます。

 この映画の魅力は、B-17という戦闘機の援護を受けない爆撃機とスティーヴ・マックィーンというキャラクターを重ねたことです。個人的には主役はB-17ですね。B-17がお好きなら『メンフィス・ベル』がオススメです。

監督:フィリップ・リーコック
出演:スティーヴ・マックィーン、ロバート・ワグナー、シャーリー・アン・フィールド

タグ:映画
nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:映画

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。