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映画 KT(2002日韓) [日記 (2022)]

KT 特別版 [DVD]  『団地』『一度も撃ってません』に続き、阪本順治監督3本目。KTとは韓国第15代大統領、金大中のことです。1973年、KCIA(韓国中央情報部)が、南北統一を画策する民主活動家・金大中を東京のホテルから拉致した事件を描いたサスペンスです。

金大中事件
 金大中事件に陸上自衛隊が関わっていたというがあります。韓国大統領・朴正煕と日本陸軍士官学校同窓の自衛隊幹部が朴正煕を支援し、金大中事件に加担したというのです。映画は、陸自の三佐が金大中の所在を突き止め、KCIAが拉致する迄をドキュメント風に描きます。
 自衛隊幹部が金大中事件に関与したのかどうかは謎ですが、事件に関わった日本の調査会社があったことは事実。その経営者が「陸上幕僚監部第2部(情報部門)」の「別班」に所属していた元自衛官・某であり、拉致グループのリーダー金東雲と面識があったことも判明しています。米CIA、KCIA、陸自情報組織が繋がっていたとしても、何の不思議もありません。某は、金東雲から依頼はあったがこれを断り、自衛隊も関与を否定しています。

自分の戦争
 冒頭、三島由紀夫の市ヶ谷乱入事件が描かれます。主人公・富田(佐藤浩市)が自決した部屋の扉の前に菊の花を手向けるシーンがあり、「憲法改正のクーデターを起こしていれば三島を無駄死させなかった」と語ります。冨田が、自衛官でありながら国家の主権を犯す犯罪 、金大中事件に荷担した理由です。

 陸自幹部は、中央調査隊(陸上自衛隊の情報組織)で北朝鮮、韓国のスパイを内偵していた冨田にKCIAに協力することを命じます。富田は、興信所を立ち上げ、金東雲(韓国大使館一等書記官、KCIA)の依頼の形をとって金大中の行方を追います。冨田は、金大中と接触を図るジャーナリスト(原田芳雄)の動きから、金大中が九段下のホテル・グランドパレスに宿泊していることを掴み、KCIAは拉致を実行します。KCIAは金大中を車で神戸の領事館に運び、貨物船から海中に投棄して殺害する計画でしたが、海保ヘリに追跡されKCIAの関与が明らかになっため殺害を思い止まり、釜山に運びソウルの自宅付近で解放します。

 映画は、金大中事件の経緯を忠実に再現し、冨田の「職務」遂行を描きます。拉致ではなく殺害計画であることを知った自衛隊は中止を命じますが、冨田は止めません。金大中の南北統一を阻止することが、日本の国益だと考えたのです。これは「自分の戦争」だと表現しています。
 陸自は冨田を逮捕して自決を迫り、「二・二六の野中(四郎)大尉ですか?、自分は自決はしません」と。二・二六事件の背景には陸軍内部の皇道派と統制派の派遣争いがあり、青年将校の決起には陸軍中枢が関わっていると言われます。三島由紀夫とこのシーケンスで、冨田の憂国を語りたかったのでしょう。

 冨田は事件の経緯を件のジャーナリストに話し、記事にしろと。ヤバくないのかと問う彼に、冨田は、特捜に呼ばれた方が(口封じ、暗殺の)保険になる。自衛隊は日陰でコッソリ生きていたんだよ 、災害出動以外で日が当たっちゃ困るんだ、と。この保険については伏線があり、事件の首謀者・金東雲も拉致した現場に指紋を残すという保険をかけています。
 ラストは、冨田が恋人と会うシーンで画面が暗転し、銃声。保険は無駄だったのか?。

 メッセージ性を持った様々な人物が登場します。原田芳雄演じるジャーナリストは特攻隊の生き残り。金大中のボディーガードは韓国語の話せない在日二世、その母親は息子が日本人と結婚することを許さず、冨田の恋人は政治運動で捕まり拷問を受けた韓国女性。神戸領事館の女性は、日本人の冨田が加わっていることを知り「日帝36年の恨(ハン)」と宣う。これがストーリーに上手く乗っているかというと、イマイチですが。
 個人的には面白かったですが、韓国の近現代史に興味が無ければスルーの映画でしょう。ちなみに、韓国では2週間で公開打ちきりなったそうです。監督が阪本順治ですから石橋蓮司、岸辺一徳が出演かと思ったのですが、残念ながら出演していません。

監督:阪本順治
出演:佐藤浩市、キム・ガプス、チェ・イルファ、原田芳雄

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