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東京発 ラムゼイ ① 三国同盟 スパイ・ゾルゲの昭和 (4) [日記 (2022)]

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 ゾルゲは数百通の《電報》をモスクワに送っています。「上海諜報団」の無線技師であったマックス・クラウゼンを東京に呼び寄せ、クラウゼンが組み立てた無線機を使って報告書をウラジオストックに(電波事情が悪い時には、上海経由で)送信しています。

 ゾルゲは、日独伊三国同盟、ドイツ軍のソ連侵攻(バルバロッサ作戦)とそれに伴う日本の政策について、重要な情報を打電しています。

 ・ドイツのソビエト侵略準備を報告(1940年2月)
 ・ソビエト国境のドイッ軍師団集結を報告(1940年12月)
 ・ドイツ軍のソ連侵攻は6月15日と報告(1941年6月)
 ・日本のソ連への侵攻はないと報告(1941年7月)
 ・ 日米開戦の可能性を報告(1941年10月)

 『国際スパイ ゾルゲの真実(1992角川)』にはゾルゲが送った電文とマイクロフィルムの報告書が収録されています。

【1939年2月1日電文】
暗号解読電報 1945 極秘
受信 1939年2月1日20:00
伝えられた 2月3日11:30 2月4日17:50
2月4日17:50 特別重要

翻訳 モスクワ、労農赤軍諜報部長宛
1939年1月31日
ショル少佐の情報によると、日独伊軍事条約は、秘密裏にすすむならば二か月以内に締結されるであろう。
 条約にはソビエトだけではなく、第三国〔複数〕に対しても向けられている特別条項がある。条約では、イタリア、ドイツ、日本の異なった見地のために、妥協的な決定に達している。
 数か月前には、日本側と、ドイツとイタリア側との間で、要求に大きなくい違いがあった。日本は、条約がもっぱらソビエトに向けられるものであることを要求したが、イタリアとドイツは、条約の及ぶ範囲の拡大を主張した。
条約締結の問題は、極秘にされており、参謀本部に近い筋の人のみが知っている。このことをオット大使とショル少佐も同様に知っているが、ベルリンからは、この条約につき何らの情報も受け取っていない。

no.98 ラムゼイ
暗号解読、マリンニコフ 翻訳、ポポフ少佐

一部印刷
読むだけ
読んだのちは、直ちに労農赤軍諜報部「Ⅲ」部の部長に返却すること

 1939年1/31にゾルゲが労農赤軍諜報部長宛に送信し、2/4に解読して回覧されています。島とは日本列「島」を指しラムゼイとはゾルゲのコードネームです。情報源がドイツ軍のショル少佐ですから、駐日ドイツ大使館から得られたものです。

【1939年4月9日電文】
大島(駐独大使)は、日本政府の回答を求めて軍事条約の問題を再び提起した。 長い討議ののち、日本はソビエトにのみ向けられた軍事条約を認めることに決定をした。

【1939年4月9日 第二報電文】
オット大使は、日本の内閣が、大島と伊藤(駐伊大使)両大使に対して、三月二二日にソビエトおよび国名を示すことなく、ソビエトと結んだある国々に対して向けられた軍事条約を、一年の期間でドイツ、イタリアと締結するようにという指示をあたえたことを明らかにした。このことは、ヨーロッパにおける今後の状況の発展のいかんにかかわるだろう。

【1939年4月15日電文】
ドイツとイタリアがソビエトと戦争をはじめる場合には、日本は無条件ですぐに彼らと同調する。しかし、戦争が民主主義国家 (イギリス、フランスを指す)とはじまった場合には、日本が同調するのは、極東が攻撃される際、もしくはソビエトが民主主義国家の戦争に同調する場合だけである。

この電報の欄外に受け取ったソビエト赤軍情報部によって特別報告第一号と書かれ、コピーを九部作って配布されます。その送付先は、スターリンに2部、ウォロシロフ、モロトフ、カガノビッチ、ベリアなど、ソビエトの最高首脳八人の名前も書き込れています。重要な情報だと認識されていたのでしょう。ドイツは、日本の海軍力をもってアメリカを牽制して、ヨーロッパ戦線に参入してこないようにしたいわけです。三国同盟が締結され参戦条項が盛り込まれれば、ソ連は東のドイツに加え西の日本という脅威を抱えることになり、同盟の帰趨は重要な問題です。
 これらの情報はドイツ大使館から得たものであり、ゾルゲがオット大使の信頼を得て大使館に深く浸透していたいた様子が伺えます。1940年にドイツの特使ハインリヒ・スターマーが来日し「日独伊三国同盟」の交渉が始まりますから、ゾルゲは早い時期に三国同盟の情報をつかんでいたことになります。
 日独伊三国同盟は、1940年9/27に締結されます。

スパイ・ゾルゲの昭和 (1) ゾルゲ諜報団 
スパイ・ゾルゲの昭和 (2) 魔都・上海のゾルゲ 
スパイ・ゾルゲの昭和 (3)諜報団 東京ニ集結ス! 
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