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映画 ナチスの愛したフェルメール(2016オランダ、ベルギー、ルクセンブルク) [日記 (2023)]

ナチスの愛したフェルメール [DVD]   画家が登場する映画は、当blogでも『レンブラントの夜警』(ピーター・グリーナウェイ)、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』、異端審問を扱った『宮廷画家ゴヤは見た』(ミロス・フォアマン)、モディリアーニの『モンパルナスの灯』(ジャック・ベッケル)、『カラヴァッチョ』を取り上げています。5作品ともなかなか面白いです。贋作では『鑑定士と顔のない依頼人』(ジュゼッペ・トルナトーレ)がオススメ、ナチスの略奪美術品では『黄金のアレーデ』も面白いです。

 原題は”Een echte Vermeer(本物のフェルメール)”。有名なオランダの贋作画家ハン・ファン・メーヘレンの話です。メーヘレンについて予備知識があると、映画が理解し易いです。
 1947年、留置所のメーヘレン(ユルン・スピッツエンベルハー)から始まります。贋作を作ったために捕まったのかと云うとそうではなく、ナチスの占領下の1942年にゲーリングにフェルメールの絵を売ったためです。ナチスに絵画を、それもオランダの国民的な画家フェルメールを売ったことは国家反逆罪に当たるというわけです。裁判が始まり、フェルメールの入手経路を問われたメーヘレンは、絵は自分が書いたものだと主張しメーヘレンが贋作作家になった経緯が語られます。

 メーヘレンは、デルフト芸術協会のブレディウス教授の若い夫人ヨーランカ(リゼ・フェリン)に横恋慕、アンタはミューズだとか何とか口説いて彼女をモデルに絵を描きます。ブレディウスは、メーヘレンの修復したフランス・ハルトの絵がに贋作だと見抜き、メーレヘンをエセ芸術家とこき下ろします。ヨーランカを巡るメーヘレンとブレディウスの嫉妬の鞘当てです。
 画商に誘われて描いた贋作が15,000ポンド売れ、メーヘレンは顔料を工夫し古いキャンバスと額縁を使った贋作制作にのめり込めます。美術史家であるブレディウスは、フェルメールにはカラバッチョの影響を受けた絵が何処かに埋もれているという説を持っています。1669年から1673年の間に描かれたフェルメールの作品は見つかっていません。メーレヘンはこのミッシングリンクを埋めるカラバッチョの影響を受けた宗教画の贋作を作り、画商を通じてブレディウスから真作の「お墨付き」を引き出します。もうひとつ、メーレヘンは、『寺院で教えを授ける幼いキリスト』でキリストをヨーランカに似せて描きます。法廷で語る様に、贋作制作の動機はブレディウスへの「復讐」です。学者の自惚れに付け込み、復讐と富手に入れたわけです。この辺りが映画のキモだと思うのですがサラッと描かれるだけです。ヨーランカはブレディウスからメーヘレンに乗り換え、復讐と富だけではなくヨーランカまで手に入れます。

 1940年にナチスがオランダを占領が始まり、美術収集家のゲーリングはフェルメールの贋作に大金を投じます。ゲーリングに売った絵のタイトルが『姦通の女』ですから、ヨーランカを暗示していることになります。この事実が戦後明らかとなって、メーヘレンはナチスにフェルメールを売った裏切り者として逮捕され、冒頭の留置所に繋がります。
 斯界の権威ブレディウス教授の鑑定があり、誰もメーヘレンの贋作を認めません。『姦通の女』がメーヘレンの作であること証明したのはヨーランカで、法廷に贋作の証拠を持ち込んで夫の危機を救います。国家反逆罪なら極刑もあり得ますが、詐欺罪で懲役1年となります。ブレディウスは、姦通の元妻とその相手の手酷い復讐にあったことになります。
 で、面白いかと云うと?、絵画好きな方にはオススメですが…。

 メーヘレンの贋作は、オランダ政府まで購入し、贋作と分かった後もアムステルダム国立美術館に収蔵されているそうです。メーヘレンは贋作で3,000 万ドル以上を得たと言われています。

 ナチスというのは芸術についてこだわりを持っていたようで、ヒトラー好みの美術品を集めた「大ドイツ芸術展」や反ナチ的な作品を集めた「頽廃芸術展」を催したり、ヒトラーやゲーリングはダ・ヴィンチ、ラファエロを始め美術品の収集に余念がなかったようです。収集というより、圧力をかけて巻き上げる、ユダヤ人から略奪するというもので、ゲーリングに至っては、「退廃芸術」として没収したピカソやゴーギャンの絵を横領していたようです。そうやって集めた美術品が戦争のドサクサで行方不明になり、21世紀にひょっこり出てきてはニュースになっています。

監督:ルドルフ・ヴァン・デン・ベルフ
出演:ユルン・スピッツエンベルハー、リゼ・フェリン

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