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映画 南京!南京!(2009中) [日記(2019)]

City of Life & Death/ [Blu-ray] 英題:City of Life and Death。「南京事件(1937)」を描いた歴史映画(モノクロ)です。所謂「南京大虐殺」の犠牲者数は、スマイス調査(南京安全区国際委員会)の6600人から中国政府の主張する30万人まで幅があり、定説はありません。中国の映画ですから、『南京!南京!』の献辞は犠牲者30万人となっています。いずれにしろ、日本軍による捕虜、一般市民への虐殺、性的暴行があったことは事実でしょう。南京事件はデッチ上げだという意見もありますが、30万という数字は別にしても、どの時代のどの民族も多かれ少なかれ同じ様な「事件」を起こしています。映画は、日本兵の視点を交えることによって、加害者=日本軍、被害者=中国一般人という類型的な反日プロパガンダとは一味もふた味も違った戦争映画となっています。   

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 一貫したストーリーはありません。日本軍による虐殺、強姦、略奪、放火等の残虐行為と、日本軍から南京市民を守ろうとする「南京安全区国際委員会」、赤十字の救援活動を中心に、ジョン・ラーベ(ドイツ人、ジーメンス社南京支社支配人)等欧米人、ラーベの秘書、金陵大学の教職員の中国民間人の苦闘が描かれます。もう一つの視点が、日本軍の行動に疑問を抱く憲兵将校・角川(中泉英雄)の存在です。この視点を加えることで映画に奥行きが出ます。ラストで角川は捕虜を逃し自殺しますが、これも戦争においては加害者と被害者は等価であるということでしょう。日本軍の悪の象徴として、南京安全区国際委員会に100人の女性を慰安婦として要求し、狂った慰安婦を無造作に殺す、将校・伊田(木幡竜)が登場します。この伊田さえも、戦争という狂気の被害者として描かれます。日本兵のレイプが執拗に描かれる一方で、角川と日本人慰安婦との恋もあり、戦争と性の問題も、例の「慰安婦問題」とは異なった視点で捉えられます。

 南京陥落の祝勝会が開かれ、日本兵による和太鼓と「田植え踊り」?が描かれます。占領した他国で自国の文化を堂々と誇示する倨傲、それこそが非難されるべき「日本」なのだという監督・陸川の強いメッセージでしょう。

 日本人が他国で残虐行為を働く映像に抵抗を覚えますが、人類が歴史のなかで繰り返してきた行動を考えれば、これもまた有り得た真実のひとつなのかもしれません。

監督:陸川
出演:劉燁 中泉英雄 木幡竜 高圓圓 范偉

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