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毛利敏彦 明治六年政変(1979中公新書) (2) [日記(2019)]

明治六年政変 (中公新書 (561))続きです。
朝鮮問題
 幕府の朝鮮外交は対馬藩を通じて行われていました。新政府の誕生によりこれが外務省の管轄に変わり、対馬藩の「草梁倭館」を「大日本公館」として外務省の管轄下におきます。これが朝鮮(李氏朝鮮)を刺激し、外務省の文書に宗主国・清を指す「皇」や「勅」の文字があったこともあり(日本は思い上がっている!)、朝鮮は貿易活動を制限し公館への生活物資の供給を止め、「無法之国」と非難する事態に至ります。朱子学の伝統でしょうか、いずれにしろ、現在に至るまでかの国と付き合うことは難しいようです。
 朝鮮問題が留守政府の閣議に上り、「討つべし」という意見が出て西郷が手を挙げます。戦争を避けるため自分を「遣韓使」として派遣せよということです。8/17の閣議で西郷の韓国派遣が決定されます。

 西郷が板垣に送った手紙に、遣韓使として韓国に渡り殺されれば開戦の口実となる(使節暴殺論)、是非渡韓させてほしいという文言から、西郷は征韓論者であり死場所を求めていたという説があります。この「使節暴殺論」は西郷が板垣に送った手紙にしか現れず、征韓強行派の板垣を西郷遣韓に賛成させるための方便ではないかというのが著者の見解です。参議のメンバーは、西郷、大隈、大木、江藤、板垣、後藤で、佐賀閥の大隈、大木、江藤は同じ佐賀閥の外務卿で対清外交で手腕を発揮した副島種臣を遣韓使に推すと考えられ、西郷は板垣を味方に率いれようとしたわけです。西郷の目的は征韓ではなくあいくまで遣韓、戦争を避け平和裡に解決を図ろうとします。西郷は、幕末維新の動乱期に革命家、軍事指導者として活躍しますが、第一次長州征伐、江戸無血開城など、実力闘争に訴えるよりも交渉によって対立を平和的に解決に導こうとした傾向があります。したがって、西郷=征韓論という従来の構図は成り立たないというのが著者の主張です。
 西郷は何故朝鮮との修好にかくもこだわったのか。いろいろ理由はあると思いますが、師である島津斉彬の、ロシアの南下に備えるとい外交戦略が視野に入っていたことが考えられます。

伊藤博文の暗躍
 一足早く帰国した木戸は、一連の長州閥の汚職問題、特に槇村正直の小野組転籍事件など司法省の強権に手を焼いています。岩倉とともに帰国したは伊藤は、親分の木戸を助け旅行中に大久保近づいたため不仲となった木戸との仲を修復するため陰で動きます。

かれ(伊藤)の戦略とは、個々の事件にこだわるよりも大局に立ち、岩倉を軸に木戸と大久保とを和解、協力させて陣営を固め、他方では西郷と江藤とを切り離し、江藤を孤立させて叩くというものであったと思われる。

 何の成果も出せなかった使節団の失地回復と、留守中に権力を増大させた留守政府、特に司法省の江藤からの権力奪還を狙ったというのが著者の考えです。大久保を参議にし木戸とともに閣議に復帰させたい三条の人事に加担します。
 岩倉が帰国しても閣議は開かれず(朝鮮問題はさしたる重要課題ではなかった)、西郷は三条に噛みつき三条は混乱。伊藤はこの機に乗じます。朝鮮使節問題が戦争に直結すると危機感を煽り、遣韓に反対する三条・岩倉・木戸を焚きつけて新任参議(江藤、大木、後藤)を追い落とし、大久保を参議に復帰させ、井上(尾去沢事件)、牧村(小野組転籍事件)らの救済を目論見ます。

大久保の逆転劇、「一の秘策」
 10/12:大久保、参議に任命、翌日福島参議に任命
 10/14:閣議開催、翌15日西郷派遣を閣議決定
 10/17:大久保辞表提出、三条発病
 10/19:大久保、黒田「一の秘策」相談
 10/20:岩倉、太政大臣代理に就任
 10/23:岩倉上奏、西郷派遣延期を引き出す、西郷辞表
 10/24:板垣ら四参議辞表提出

 14,15日の閣議で西郷派遣は正式決定となり、心労がたたって三条が人事不省に陥り天皇への上奏ができない事態となります。ここで伊藤は次の策に出、18日木戸、大久保と相談のうえ岩倉を太政大臣代理とし逆転を画策。大久保は黒田清輝と「一の秘策」を練り、これも薩摩閥で天皇側近の吉井友実を使って岩倉の太政大臣代理を実現します。岩倉は西郷派遣案と自説の派遣延期案を上奏し、天皇より延期案を引き出し西郷の「遣韓」は潰されます。

大久保を「一の秘策」に駆り立てたのは、俺がつくった政権を遅れてきた徒輩におめおめ渡してなるものかという執念だったといえよう。もはや、大久保にとっては、朝鮮使節の是非などは枝葉の問題だったにちがいない。大久保が政権争奪の敵手とみなしたのは、「ことに副島氏、板垣氏断然決定の趣にて」と日記に書き留めた両人であり、さらに閣議でかれの議論に致命的な一撃を加えた江藤新平だったであろう。とくに、実践家大久保は、自分とは異質な江藤の論理的・組織的な卓越した才能に絶大な脅威を感じたのではなかろうか。ここに、かれは、「丁卯の冬」(王政復古のクーデタ)の同志西郷を巻き添えにしてでも、反対派の一層を決意したものと思われる。

 著者は、大久保は内治優先の政策論「征韓論」を阻止したのではなく、「明治六年政変」は、血なまぐさい闘争と謀略のもとで作った維新政府が、後からやってきて権力を貪る江藤や副島、板垣を追い落とすクーデタだとします。こうした想いが、「佐賀の乱」を起こした江藤の苛烈な処分( 梟首)となって表れたのかもしれません。政変後、桐野利秋ら西郷派の陸軍士官、板垣系の官吏は辞職し、土肥勢力は後退、薩長中心の「有司専制」の大久保時代が出現します。

 書簡、回想録を手掛かりに、通説を覆し歴史の闇に潜む伊藤の暗躍を炙り出すあたりは、ミステリより面白いです。
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毛利敏彦 明治六年政変(1979中公新書) (1) [日記(2019)]

明治六年政変 (中公新書 (561))  『素顔の西郷隆盛』に、征韓論は征韓論(明治六年政変)は、大久保、木戸、伊藤たちによる主導権回復運動だったのではないか?という記述があり本書を読んでみました。西郷が不平士族の不満をそらすために武力による征韓を企て、海外視察から帰った岩倉、大久保の反対にあって下野、明治10年の西南戦争に至る、というのが征韓論の教科書的説明です。

 本書はこの常識に疑問を呈し、岩倉使節団と留守政府、薩長閥を軸に、かつての盟友西郷と大久保が何故「征韓論」で対立し西郷は下野するに至ったかを解明します。

岩倉遣米欧使節の失敗
 この時期、岩倉使節団が欧米を回ったのは、「視察」とともに条約改正の下工作のためです。廃藩置県でやっと維新の基礎が緒に付いた時期に、政府首脳の半数が海外に出ることは常識的ではありません。
 元々大隈を長とする小規模な使節団が計画されていたようです。佐賀閥の大隈が外交において主導権を握ることを危惧する大久保が、岩倉を説いて使節団を改組拡充したのが岩倉使節団だと言います。さらに、木戸を海外に連れ出して政局から外し、廃藩置県後の改革を西郷託した、これが遣米欧使節のもう一つの真相だと言うのです。木戸は神経質で小うるさい小姑のような性格だっと云いますから、木戸を棚上げしたわけです。
 新しい政策は一切やるな、と一札を取られたにも関わらず、留守政府は府県の統廃合(3府72県)、学制の制定、身分制度撤廃、 陸軍省・海軍省の設置、国立銀行条例、徴兵令、地租改正条と次々に改革を推し進めますが、裏にはこうした密約があったのです。

 使節団はアメリカに到着し大歓迎を受けます。気をよくし条約改正もイケルと考えた使節団は、条約改正の全権委任状を取りに大久保、伊藤を一時帰国させます。政府はこの委任状を出さず米政府も条約改正に難色を示し、使節団は何の成果もあげず、米国に6か月も滞在したため予定は大幅に狂う結果となります。
 通説では、欧米文明を目の当たりにした岩倉使節団の一行は、日本の近代化のためには外征よりも内治を優先し征韓論に反対した、ということになっています。著者によると、それは勝者の事後的正当化だと云います。

留守政府の改革実施と権限の強化
 この間留守政府は、封建的身分制度の撤廃、司法制度の確立、地租改正、徴兵令と、封建制度を根本からひっくり返す施策を次々と発布します。留守政府は目覚ましい成果を上げ、改革実施によって権限は強化されます。一方の使節団は1年10か月も日本を空け外交は失敗、派遣団と留守政府の実力の差が開いてしまいます。

 留守内閣も安泰だったわけではなく、大蔵省の予算問題で混乱が生じます。明治6年の各省の予算請求を井上薫、渋沢栄一(いずれも長州)が半減させ、汚職事件(山城屋事件)を起こした山県有朋(長州閥)の陸軍省のみ全額を認めたことで、江藤は抗議の辞表(弾劾書)を出し政府は混乱します。この大蔵省問題をきっかけに、正院、左院、右院で構成されていた太政官の正院の権限を拡充し、後藤象二郎、大木喬任、江藤を参議に任命し正院に迎え入れます。これによって権力は正院に集中しす、べての権限を参議が握ることになります(太政官制潤飾)。つまり、大久保、木戸、伊藤等外遊組の政府内における相対的地位が低下し、西郷、江藤等留守政府側の地位が上がったわけです。

汚職事件
 明治六年政変の背景には、岩倉使節団、留守政府の改革ともうひとつ、長州系高官による汚職事件があります。山県有朋の関わった山城屋和助事件、三谷三九郎事件、井上薫、渋沢栄一の尾去沢銅山事件、槇村正直の小野組転籍事件です。司法制度の確立を推進した江藤と司法省は、これら汚職事件を厳しく追求し、長州閥にとって江藤は目の上の瘤となります。

 「明治6年政変」には、使節団の失敗と留守政府のめざましい改革、長州高官等による汚職事件という背景のもとに、大久保と長州閥よる、失地回復と江藤駆逐のクーデターだったいうのが著者の主張です。続きます。

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ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q―カルテ番号64- [日記(2019)]

特捜部Q―カルテ番号64―(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫) 特捜部Q-カルテ番号64-(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)  りずに『捜部Q4冊目。
 プロローグ、パーティでこの物語のヒロイン・ニーデはダークヒーロー、クアト・ヴァズと出逢い、夫の面前で過去を暴露されます。パーティの帰途交通事故(ニーデによる無理心中)を起こし、夫は死亡、ニーデは辛くも生き残ります。
 特捜部Qの秘書ローセが、1987年に起きたマッサージサロンの女経営者失踪事件(自殺として捜査打切)に疑問を抱き調べ始めます。この売春業者が失踪した週に、弁護士、漁師、看護師が行方不明となり、人口570万人のデンマークではこの失踪者数は異常。カールとアサドは、ローゼに引きずられるようにこの失踪事件の捜査を開始し、1987年の失踪事件と2010年のデンマークの政治結社明確なる一線が繋がります。

明確なる一線
 明確なる一線とは、ダークヒーロー、クアト・ヴァズが率いる「デンマーク人の血の純潔と倫理観を守ること」を使命とする政治結社。「血の純潔」とは、移民を排斥してケルマン人の純潔を保ち、社会的落伍者、遺伝病者や精神病者、移民を排除しようという主張を掲げ、次期国政選挙で国会に議員を送り込み政策の実現を狙う右翼政党です。

それは人々が、”ハイル!”と叫び、靴のかかとを打ち鳴らし、狂信に駆られて生きていた時代に掲げられた目標だった。支配的多数民族がそうでない民族より優れており、生きる価値のある人間と価値のない人間を選別する権利を主張できていた時代の目標だった。

とニーデに語らせていますから、ミステリの裏側には、世界的にはびこるポピュリズムへの批判が見て取れます。

 ヴァズは産婦人科の医師で、「密かなる闘争」という秘密の運動を組織し、生きるに値しない胎児を選別して非合法の堕胎を行い、本人の了解無しに強制不妊手術まで行っています。性的に堕落した母親から生まれる子供は堕落した人間に成長し社会を堕落させるから「浄化」が必要、これが「血の純潔」の正体です。

 デンマークは1960年代から労働力として移民を積極的に受け入れたため、移民は人口の9%に達し、福祉制度に頼って生活する移民が増えたため厳しい移民法を制定して流入を抑え、さらに隔離する政策まで実施しています。シリア移民アサドがデンマーク警察でカールの助手を勤めている設定が不思議だったのですが、こういう背景があったわけです。

優生法
 作者の「あとがき」によると、

本書に描かれている女子収容所は、1923年から1961年まで、大ベルト海峡に浮かぶスプロー島に実際に存在し、法律または当時の倫理観に反したか、あるいは”軽度知的障害”があることを理由に行為能力の制限を宣告された女性を収容していた。
 また、無数の女性が不妊手術の同意書にサインしなければ、施設すなわちこの島を出られなかった・・・不妊手術の実施に適用されていた民族衛生法や優生法といった法律は、1920年代から30年代には、欧米の三十ヵ国以上で公布されていた(日本でも、旧「優生保護法」(1948〜1996年)下での強制的な不妊手術があったことが話題になっています)。

 ニーデは知的障害があるとされ、ヴァズによって非合法の堕胎、性的暴行を受け、このスプロー島に送られ不妊手術を施された女性だったと云うわけです。
 前作とは異なり、『カルテ番号64』は社会派ミステリの趣ですが、松本清張のような叙情性はありません。

特捜部Q
 今回はローセが大活躍。アサドと資料を調べ独自に推理し事件を解明し、ローセという特異な女性の背景も徐々に明らかにされます。『Pからのメッセージ』で、ローセの双子の姉ユアサはローセ自身であり二重人格であることが明かされました。本書では、ローセはユアサ以外の人格にも変身する多重人格であることが明かされます。このことはローセ自身も理解しているようで、障害を持つ女性が矯正施設に隔離され不妊手術を受けることに、激しい怒りを表します。プロー島の懲罰房にあった爪痕にアサドが反応する辺りも、アサドの過去を垣間見る思いです。
 特捜部Qのそもそもの発端であった「ステープル釘打機事件」が又も蒸し返されます。カールが撃たれた家の地下からバラバラの遺体が発見され、遺体からはカールの指紋の付いた硬化が出、遺体の人物と映る写真まで発見されます。カールを陥れようとする存在匂わされ、事件の背後には何があるのか、乞うご期待と作者は次作へと引っ張って行きます。
 前作で活躍した元鑑識係ラウアスンも健在。「ステープル事件」で首から下が麻痺したハーディには回復の兆しが現れています。心理カウンセラーのモーナとの仲も順調で一見順風満帆で、カールは家出した妻ヴィガとも離婚きそう。カールは3度も殺されかけアサドは瀕死の重傷を負うという波乱万丈もあり、本作もなかなか楽しませてくれます。

特捜部Qシリーズ
檻の中の女
キジ殺し
Pからのメッセージ
・カルテ番号64・・・このページ
・知りすぎたマルコ
・吊された少女
・自撮りする女たち ・・・あと3作読めます!

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磯田道史 天災から日本史を読みなおす-先人に学ぶ防災-(2014中公新書) [日記(2019)]

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)  著者は、NHK『英雄たちの選択』でお馴染みの磯田道史先生、『素顔の西郷隆盛』に続いて2冊目。最近の地震や台風に阿ったものだと思ったのですが、第5章を読むと、著者の防災について並々ならぬ思いが伝わってきます。そう言えば、15.5mの防潮堤を築き2011の東日本大震災で村を守った岩手県普代村の元村長の話を同番組で観た記憶があります。災害を歴史(古文書)から見れば様々な事実と知恵が見えてくるという本です。


第一章 秀吉と二つの地震
第二章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
第三章 土砂崩れ・高潮と日本人
第四章 災害が変えた幕末史
第五章 津波から生きのびる知恵
第六章 東日本大震災の教訓

 本書で取り上げられる天災は、地震、津波、高潮、土砂崩れ、噴火・降灰と多岐にわたります。東日本大震災と1946年の南海地震で著者の母の家族が被災したこともあり、地震、津波に力が入ります。
 私の住む地域は「南海トラフ地震」で被害を受ける地域にあり、他人事では無く興味深く読みました。「日本史」で南海トラフが「動いた」事実は、

684年白鳳地震203年→887年仁和地震209年→1096年永長地震265年→1361正平地震137年→1498年明応地震107年→1605々慶長地震102年→1707年宝永地震147年→1854年安政南海地震90年→1944/1946年昭和南海地震 (赤字は間隔)

 100年から200年周期でM8の巨大地震が起きていますから、次は2045年頃が危なそう?。

 古文書によると、1854年の安政南海地震の津波は津波は道頓堀川大黒橋の手前、金谷橋が落橋(波高2.5~3m)。1707年の宝永津波はさらに上流の戎橋、相生橋を落とし現在の日本橋付近まで津波が押し寄せたそうです(3.6m)。1361年の正平津波は、四天王寺近くの安居神社まで押し寄せ、波高は5~6mあったことが想像されるそうです。正平津波級が来れば、海抜5m未満の低地に300万人が暮らす現在の大阪の被害は甚大です。故に、大阪府の災害計画は津波高6mが想定されているそうです。大阪南部に住んでいるので難波、天王寺辺りは土地勘があり、被害が実感できます。

 「第四章 災害が変えた幕末史」では、1828年のシーボルト台風が幕末の軍事大国佐賀藩を産んだという話が出てきます。シーボルト台風は935hp、最大風速55kmで5mの高潮が佐賀平野を襲い、佐賀藩は領民の約3%、家屋の7割、石高の9割を失うという未曾有の惨事を引き起こします。この大惨事が藩主・鍋島直正(閑叟)の思い切った藩政改革を産み幕末の佐賀藩を産んだ、という話ですがどうなんでしょう?。

 防災は、自然科学だけではなく歴史学からのアプローチも有効という一冊です。

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OM-SYSTEM ZUIKO75-150mm F4 [日記(2019)]

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 OLYMPUS OM-1用の75-150mmズーム、いわゆるオールドレンズです。E-PL1にアダプタ経由で付けると、約2倍150-300mmの望遠になります。問題は絞り優先(Aモード)でしか使えないので、シャッタースピードはISOを上げて対応してます。100-200mmもあったのですが、分解してカビ除去しても曇りが取れずお払い箱。300mmは何とか手持ちで使えます、但し重いです。
 カメラはスマホとXZ-1ばかりでE-PL1の出番がないので、これ付けて野鳥でも狙ってみます。今のところカラス、スズメ、鳩e.t.c.しか出会っていませんが...(笑。
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映画 終電車(1980仏) [日記(2019)]

終電車 Blu-ray  原題”Le Dernier Metro”。タイトルが『終電車』で、カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワ・トリュフォーの仏映画とくれば、誰だってこれはもう「アレ」だと思いますねぇ。ところが、終電車は登場しません。冒頭で、ナチスに占領された夜間外出禁止令が敷かれたパリは、映画、演劇がハネた後、観客は終電車に急いだというナレーションが入ります。観劇を終えた男女が終電車で出逢い…というわけでがありません。

マリオンとベルナール
 舞台は1942年ナチスに占領されたパリ。モンマルトル劇場のオーナーで演出家のルカは、ユダヤ人のために海外に逃亡、劇場は妻で女優のマリオン(カトリーヌ・ドヌーヴ)が支えています。マリオンは、ルカの脚本『消えた女』を上演するするため、相手役として男優ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)と契約します。ジェラール・ドパルデューは、『あるいは裏切りという名の犬』(オススメ)の容貌魁偉のはみ出し刑事、『シラノ・ド・ベルジュラック』の鼻のシラノです。1980年ですからさすが若い、特徴的な鼻は隠すべくもありませんが…。冒頭で、ベルナールは路上で女性を口説いていますから女たらし。このドパルデューと美女ドヌーヴの競演となります。
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 海外逃亡を図ったルカは、実はマリオンがモンマルトル劇場の地下に匿っています。ルカは地下室で『消えた女』の舞台稽古を聞き、マリオンを通じて演出します。表ではナチスが支配しているように見えるが、実はフランス人がすべてを仕切っているのだということでしょうか。

劇中劇
 脚本はナチス検閲があり、ナチスに協力するフランス人にすり寄って検閲を通すという苦労があります。ナチスの文化政策をかいくぐって作られたマルセル・カルネの『天井桟敷の人々』を連想します。『天井桟敷』でも劇中劇が演じられ、『終電車』でも劇中劇『消えた女』演じられます。ということは、この映画は『天井桟敷』へのオマージュ?。であれば、ガランスとバチストの関係はマリオンとベルナールの関係ということになります。ところがふたりの恋愛は微塵も描かれません。モンマルトル劇場のオーナーで看板女優のマリオンは、ナチスにも時代にも媚びず凛とした姿勢で劇場を守り、かくまった夫を甲斐甲斐しく世話します。一方のベルナールは、劇場の美術担当を熱心に口説く有り様。美術担当は実は同性愛者で、これを知ったマリオンは「恋愛は劇場の外でやって!」と厳しい態度。舞台稽古でベルナールに触られることも嫌います。

 劇中劇『消えた女』では、男(ベルナール)の愛を愛される資格がないと女(マリオン)が拒む、実は女も愛しているが…というような劇です。

ふたりの女
 『消えた女』はナチス寄りの批評家にけなされますが興行的には大成功をおさめ、劇場の所有権を巡って取り潰しの危機に瀕し、ルカを探してゲシュタポが現れ…等々、マリオンに時代の波が襲いかかります。女たらしのベルナールは実はレジスタンスで、戦局急を告げるなか、レジスタンスに専念するため劇場を辞めます。面白いことに、ルカは地下でふたりの演技を聞いている間に、マリオンがベルナールを愛していることを見抜いています。ゲシュタポが地下室に踏み込んだ時、ルカとベルナールは初めて顔を会わせ、ベルナールにこれを告げます、「妻は君に惚れている」。
 ベルナールが劇場を去る日、ふたりは結ばれます。エッそう云うこと?、忍ぶ恋?。そう思って観ると、マリオンのベルナールに対する態度は不自然。惹かれまいとする頑なさが随所に現れています。

 ベルナール得意の口説き文句”あなたの中にはふたりの女がいる” →これが主題です。マリオンのなかに、ベルナールに惹かれる女と夫を愛し劇場を護る女優がいたわけです。何のことはない、映画の冒頭からこの科白はあったのです(ベルナールが通りすがりの女を口説くシーン)。

 ここからがフランス映画のフランス映画たるところ。ナチスはパリから撤退し、マリオンは、レジスタンス活動で負傷したベルナールを病院に見舞います。あなたを忘れられないと言うマリオンに、愛している振りをしていたんだとベルナールは答え、(病院の窓から見える背景に注目!)…病室はモンマルトル劇場の舞台に変じ、ふたりの会話は劇中劇の科白ととなります。フィナーレでルカが登場し、カーテンコールでマリオンはベルナールとルカの手を取ります。右にルカ左にベルナール、”マリオンの中のふたりの女がいる”シーンで幕。

 なかなか意味深長な映画で、トリュフォーとドヌーヴは一時恋愛関係にあったと言いますから、”あなたの中にはふたりの女がいる”は、以外と本音かも知れません。

 久々に「フランス映画」を観たという実感、それにしてもカトリーヌ・ドヌーヴは綺麗。

監督:フランソワ・トリュフォー
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ ジェラール・ドパルデュー

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絵日記 駄犬 [日記(2019)]

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 家の駄犬は雑食で何でも食べます。カッパエビセンでビールを飲んでいたら欲しそうな素振り。ひとつやってみると食べます、三つ、四つ。試しに甘夏をやってみると、匂いを嗅いでソッポを向きました。さすがこれは食べませんね、美味しいのに ...。

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ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q―Pからのメッセージ―  [日記(2019)]

特捜部Q-Pからのメッセージ(上) 特捜部Q-Pからのメッセージ(下) ボトルメール
 『檻の中の女』『キジ殺し』に続く特捜部Qシリーズ第3作。コペンハーゲン警察の未解決事件捜査班「特捜部Q」が、13年前1996年に書かれたボトルメールを解読し誘拐事件に挑みます。ボトルメールとは、手紙を瓶に入れて海に流すアレです。失踪事件(檻の中の女)、すでに犯人の捕まった殺人事件(キジ殺し)、今度は犯罪があったのかどうかも不明の事件。特捜部Qは未解決事件捜査班ではなく、事件を掘り出して自ら解決するマッチポンプ捜査班では、と突っ込みたくなります(笑。

 基本は4グループ
 ・カール、アサド、ユアサ(ローセの双子の姉)の特捜部Q三人
 ・1966年誘拐された〈エホバの証人〉信者一家
 ・新興宗教〈神の母〉の信者一家
 ・誘拐犯と妻、妻の愛人
この4グループが1996年と2009年(現在)を行きつ戻りつ、事件の全貌が明らかとなります。

新興宗教
 ボトルメールの解読から特捜部Qは1996年の誘拐事件を捜査し、新興宗教〈エホバの証人〉信者一家のふたりの子供の誘拐事件を突き止めます。この2009年の捜査と〈神の母〉信者一家誘拐事件が同時進行します。ふたつの誘拐事件は同一犯で、新興宗教の信者の子供を狙うという特殊な犯罪です。兄弟ふたりを誘拐し、身代金を得た後はひとりを殺しひとりを解放します。新興宗教の信者は排他的であり、誘拐、殺害という家族の不幸も信仰の力で堪え忍ぶため、警察に駆け込む恐れがないと誘拐犯は考えたわけです。さらに、ひとりを殺しひとりを助けることで、両親の恐怖を煽ります。この設定は秀逸です。
 誘拐犯は、父親が牧師を務める新興宗教の厳格な戒律のなかで育ちます。宗教に対する憎しみから、信者を殺すことためらいはなく、むしろこの世の悪が減ると考えています。作者としては、生い立ちのなかに犯罪の背景を求めたわけです。作者の描く犯罪のなかでも、誘拐を生業として妻と子を養う犯罪者は、飛びきりの異常。

天国と地獄
 身代金の受け渡しは、走る列車の窓から金の入ったバッグを指定の場所に投げるというもの。これ黒澤明の『天国と地獄』のパクリでしょう。このパクリ?を、列車と車のカーチェイスに繋げるあたりはさすが。カーチェイスを文字で読んで面白い?と思うのですが、これがけっこう面白い。誘拐された子供の母親と犯人に騙された女性のふたりが追うわけですが、さながら『テルマ&ルイーズ』。

 特捜部Qシリーズの面白さのひとつは、カールを取り巻く面々。今回はローセがムクレて帰ってしまったため、双子の姉ユアサが代役として登場します。これが何とローセ自身で、彼女は二重人格だったというオチ。アサドは、アラブ人の警察職員と大喧嘩をしてシーア派であるあることが判明し、カンフー?を披露し、この人物の謎は深まるばかり。今回もこのふたりの助手が大活躍し、事件を解決に導きます。

 カールは、「ステープル釘打機事件」で首から下が麻痺した元同僚ハーディを自宅に引き取り、下宿人モーデが介護。ハーディの活躍はありませんが、ゆくゆくは「アームチェア・デティクティブ」として活躍しそう。義理の息子のイェスパも健在で、血のつながらない4人が「家族」となります。元鑑識係ラウアスンが登場し、ボトルメールの解読に協力します。ラウアンスは、宝くじを当てて警察を辞め、投資に失敗して無一文となってコペンハーゲン警察の食堂で働いているという設定。カールの周りは奇人変人ばかり。『キジ殺し』で離婚したセラピストのモーデとの恋はどうなったのか? →見事射止めます。

 面白さに釣られて3冊読みました。特に本書は1日半で読了。食事と駄犬の散歩と風呂以外ずっと読書。シリーズ第4冊も発注したので、引きこもりになりそうです(笑。

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映画 ブラジルから来た少年(1978英米) [日記(2019)]

ブラジルから来た少年 [DVD]  ネタバレです。
 テーマはネオナチ。南米に逃れたナチスの動きが慌ただしいと、パラグアイからナチハンターのリーベルマン(ローレンス・オリヴィエ)の元に情報が入ります。アウシュビッツの医師で人体実験に手を染め、ブラジルに逃れたメレンゲ(グレゴリー・ペック)が、2年半の間に94人の暗殺をナチスの残党に指令したというもの。94人は国籍もバラバラで職業も公務員 、郵便局長など固い職業の一般人で、ナチスとの関係性は無さそう。唯一の共通点は、いずれも2年半の間に65歳の誕生日を迎える男性。メレンゲの指令は、一人ひとり暗殺の日時が指定され、65歳の誕生日の前後に暗殺せよというもの。ナチスのホロコーストに関わった医師ですから、アーリア人種優越論(「雪の階」で学習済)か人体実験、はたまたオカルティズムかと思ったら、これを越えていました。

 65歳の不審死を追うリーベルマンは、西ドイツ、イギリス、アメリカの不審死の家族を訪ね、そこで瓜二つの少年を発見します。夫を亡くしたアメリカの女性は少年が養子であることを明かし、リーベルマンは、養子を斡旋した元ナチスの女から、夫が1910年~14年の生まれで、妻が1933年~37年生まれの夫婦に子供を斡旋し、子供たちはブラジルから送られて来たことを明かします。タイトルの「ブラジルから来た少年」です。メレンゲは何を企んでいたのか?。

 メレンゲは、第三帝国再生のためにヒトラーの細胞からクローンを誕生させ、世界各国に養子として送り込んでいたのです。クローンがヒトラーとなるためには、ヒトラーが育った同様の環境が必要であり、14歳で父親を亡くしたヒトラー同様に養子の父親を暗殺しようと企んだわけです。

 クローン羊の誕生は1996年ですが、ナチスなら「あるいは?」と思わせるところがミソ。現在であれば「なんだ…」の一言ですが、1970年代にこのプロットを思い付いたのですから革新的?、『ローズマリーの赤ちゃん』のアイラ・レヴィンですから目のつけどころが違います。

 で映画としてはどうなんだと言うと、予備知識無しに観たので「ヒトラーのクローン」には度肝をぬかれました。グレゴリー・ペックは62歳、ローレンス・オリヴィエは72歳の老人コンビですが、アウシュビッツの医師とホロコースト生き残りであれば、これくらいの歳なんでしょう。グレゴリー・ペックの悪役は初めて。
 クローン・ヒトラーはカメラマン志望(本物は画家志望)、メレンゲの死体を写し現像してほくそ笑み、未来の総統を予感させて幕。
 アイラ・レヴィンの原作に、シェイクスピア俳優とハリウッドの名優、監督は『パットン大洗車軍団』(これお薦め)のフランクリン・J・シャフナーというけっこう贅沢な映画です。

監督:フランクリン・J・シャフナー
出演:グレゴリー・ペック ローレンス・オリヴィエ ジェームズ・メイソンーレンス・オリヴィエ ジェームズ・メイソン

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絵日記 特定外来生物 オオキンケイギク [日記(2019)]

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 土手などでよく見かける黄色い花です。コスモスに似ているので親戚かと思っていたところ、これが特定外来生物に指定されたオオキンケイギク 。去年あたりから庭に咲いていて、今年も盛大に葉を茂らせています。現在は栽培が禁止されているそうなので、「駆除」です。その旺勢な繁殖力で、庭を荒らされてはたまりません。

タグ:野草
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