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ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q―キジ殺し―(2011ハヤカワ・ポケット・ミステリ) [日記(2019)]

特捜部Q ―キジ殺し― 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕  『檻の中の女』に続く『特捜部Q』の第2作、この手のシリーズモノはついつい手を出してしまいます。
 今度の事件は、寄宿学校の兄妹が撲殺された「ラアヴィー事件」。9年後に同級生のひとりが犯行を自供し、裁判も終わった解決済みの事件。誰かが事件の捜査資料を特捜部に送りつけ、事件の背後に寄宿学校の不良グループが存在し、彼らは「ラアヴィー事件」以外にも多くの暴力事件・殺人事件に関係している事を示唆したことで、「特捜部Q」が動き出します。
 『檻の中の女』は、動機と(未遂ですが)殺害方法をめぐる謎解きでしたが、『キジ殺し』は犯人を見つけるのでは無く、分かっている犯人を追い詰める倒叙ミステリ。

 「ラアヴィー事件」を犯した6人グループは、ドラッグ、セックス、暴力と無軌道の極みを走る(今時珍しい?)グループ。作中、映画『時計仕掛けのオレンジ』への傾斜が語られますが、あれは1960~70年代の話で、昨今ではリアリティに乏しい設定だと思いますが...。

 ストーリーは、この6人のうち唯一の女性キミー、キミーを追う残りの5人、事件を捜査するカールとアサドの三つの視点で犯罪の真相が描かれます。キミーは鉄道の変圧器施設を寝ぐらにするホームレス。5人は、病院経営者、有名ファッションデザイナー、株取引会社、船舶会社の経営者(狩猟事故で死亡)、自首した犯人。いずれも上流階級に属するデンマークの有力者。
 キミーは何故ホームレスになったのか?
 キミーは何故3人を狙うのか?
 5人(正確には3人)は何故キミーを探すのか?
 船舶会社の経営者は果たし殺されたのか、誰に?
 カールとアサドは如何に3人の犯罪を立証するのか?
と謎満載で『キジ殺し』は進行します。

 第2作からカールとアサドに女性秘書ローセが加わります。普通なら紅一点となる筈ですが、ローセは 警察学校を最優秀の成績で卒業したものの車の運転免許試験に落ち、前の警察署では問題を起こしたという落ちコボレ。助手アサドに加え謎めいた女性秘書まで加わります。もちろん、殺人捜査課長、カールの義理の息子、カール家の下宿人、セラピストの女性とお馴染みの面々も健在。カールが密かに想いを寄せるセラピストの指から結婚指輪が消えているようなので、カールの恋の行方は...、と盛り沢山。

 ホームレスのキミーのキャラクターが立って、キミーの復讐物語の感があります。それはそれで面白いのですが個人的には『檻の中の女』の方が好みです。

タグ:読書
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