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映画 セデック・バレ(2011台) [日記(2019)]

セデック・バレ 第一部:太陽旗/第二部:虹の橋【通常版 2枚組】[DVD]  台湾の映画は初見です。1930年(昭和5年)日本統治時代、台湾先住民による抗日・蜂起事件「霧社事件」を描いた映画です。「太陽の旗」、「虹の橋」の2部構成、4時間を超える大作です。
 台湾は、明治28年日清戦争で割譲されてから終戦までの50年間日本の統治地でした。異民族による支配ですから多くの抵抗運動もあり、そのなかで原住民による日本人惨殺という特異な事件と思われます。

 事件は、台湾原住民セデック族の頭目モーナ・ルダオが6部落の300余人が、駐在所を襲い銃器を奪って霧社の運動会に乱入、日本人130余人を惨殺したというものです。反乱は、日本軍によって2日で鎮圧され、セデック族は山に逃げてゲリラ戦を展開、1ヶ月で鎮静します。
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 映画は、モーナ・ルダオを中心に、狩り、原住民同士の抗争、首切りの風習など原住民セデック族の誇りが描かれます。
 セディックの村人が、日本人の警官を婚礼の宴席に誘い、警官がこれを拒否して揉み合いになったことから事件が起こります。日頃の抑圧が堰を切ったように噴出し、日本人排斥運動、それも武力による排斥が原住民の間に起こり、6部属300人が襲撃を計画するに至ります。
 原住民と日本人の関係が険悪だったかというとそうでもなく、モーナ・ルダオの妹は日本人に稼し、セデック族の若者ふたり(ひとりは日本の師範学校卒)は霧社の警察官となり、原住民の子供は学校で教育を受けています。日本人が支配者として上から目線で見ていたでしょうが、搾取していた事実があったのかどうか。映画では安い賃金で使役される程度です。神聖な狩場に他部族を入れるな、というセリフが何度も出てきますから、日本帝国主義の台湾近代化が彼らの狩場を荒らしていたのかもしれませんが、アヘンを武器に中国に進出したイギリス帝国主義、先住民から土地を奪い彼らを居留地に追いやり、アフリカから黒人奴隷をつれて来て使役した北米の白人ほどの悪辣さはありません。日本人の驕りが原住民の誇りを傷つけていた、その反動がささいな事件をきっかけに噴出したというのが映画の解釈だと思われます。
 日本軍相手に戦うことの無謀を主張して蜂起に加わらなかった部族もあり、蜂起しても待っているのは死だとモーナ・ルダオに言わせていますから敗北は覚悟のうえ。蜂起はセデック族の誇りの表現だということです。

 セデック族の女性の歌をバックに描かれる日本人襲撃シーンは悲惨です。殺された日本人は、彼らの風習によって首を落とされます。日本軍はわずか二日で霧社を制圧し、原住民は山岳地帯に籠ってゲリラ戦を戦い自滅し、セデック族の兵士の妻は子供を殺し自決します。男は身勝手だという古謡をバックに次々と自決するシーンは胸を打ちます。多大の犠牲を払って護らねばならなかった彼らの誇りとは何なのか。タイトルの「セデック・バレ」とは現地語で「真の人」、「霧社事件」は人間の尊厳を賭けた戦いだったということでしょう。ラストで日本軍の司令官に、彼らには日本人が忘れつつある武士道があると言わせています。

 南京事件を描いた『南京!南京!』、この『セデック・バレ』と最近観た中国・映画が、自国に阿らず冷静に人間を見つめる視点に立って描かれていることに感心しました。アクション映画としてもお薦めです。

監督:ウェイ・ダーシェン
出演:リン・チンタイ マー・ジーシアン 安藤政信 ビビアン・スー

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