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ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q-自撮りする女たち- [日記(2019)]

特捜部Q―自撮りする女たち― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)  『特捜部Qシリーズ』第7弾。これがシリーズ最新作です。
 社会福祉事務所で知り合った3人の不良娘のどうでもいいお喋りと、彼女等に対応する女性ソーシャルワーカーの愚痴を読まされます。失業給付や生活保護の金を求めて福祉事務所を訪れ、一向に働く意欲の無い市民と、就業先や職業訓練を斡旋するソーシャルワーカーの不毛で果てしない戦いです。「世界で一番幸せな国」の皮肉な一面が、『自撮りする女たち』の背景です。

 特捜部Qは災難に見舞われます。ローセは前回の『吊された女』の際受けた精神療法で病が悪化し、報告書の手違いで検挙率15%(カールの試算では65%)とされ特捜部Qは閉鎖の危機にさらされます。
 そんな折、退職した殺人捜査長マークス・ヤコプスンが再登場、最近起きた「老婆撲殺事件」と17年前の「女教師殺人事件」の共通性を指摘し、未解決事件の捜査をカールに持ちかけます。マークの持ち込んだ2つの殺人事件の捜査と平行して、社会福祉事務所の女性ソーシャルワーカー・アネリの物語が進行します。アネリはガンを宣告され、福祉制度に寄生する女たちがノウノウと暮らし、真面目に働く自分が何故ガンなのか。アネリの怒りは、カウンセリングする怠惰な3人の女達に向かいます。アネリは、残された時間で福祉制度に寄生する女たちの「駆除」を思い立ちます。幸福度No.1のデンマークにも、このストーリーが成り立つ背景があるということでしょう。アネリは『吊された女』の轢き逃げ殺人をヒントに、盗んだ車で轢き殺す計画をたて、この計画と実行はアネリに新たな生き甲斐をもたらします。
 一方でローセの精神疾患は、特捜部の勤務が不可能となるほどに悪化、カールとアサドはローセの抱えるトラウマを解き放つため彼女の過去を探ります。アネリによる福祉制度の寄生者殺しを軸に、黒づくめのパンクファッションに身を包む多重人格者ローセの謎が明らかにされます。特捜部Qファンにとっては、この謎解明が一番面白いところです。

 何しろ多くの事件を抱え込んだため、少々粗っぽく、ご都合主義なところもあります。3人娘のひとりは殺された老婆の孫で、老婆の隣にローセが住み老婆宅に孫が現れ...とあれよあれという間に事件と事件が結びつき最後はたたみ掛けるように全部解決。そんなに都合よくはいかないだろう...とは思いつつ一気に読んでしまいます。

 第8作の情報はありませんが、ローセの謎が明らかにされたわけですから、次はきっとアサドの謎解きでしょう。予測すると...アサドはシリア軍の兵士としてイラク戦争に参加し、スパイとして捕まり拷問を経験したようです。刑務所で後のコペンハーゲン警察殺人課長のラース・ビィアンと知り合い、戦後デンマークに移住、ビィアンの引きで特捜部Qに入ります。アサドの高い身体能力、情報分析能力、武器に対する知識を考えると、情報将校、諜報員だったかも知れません。

 第一作『檻の中の女』を読み始めたのが5月上旬ですから、約1か月でシーリーズ7作読破。久々にミステリを堪能しました。


特捜部Qシリーズ
檻の中の女
キジ殺し
Pからのメッセージ
カルテ番号64
知りすぎたマルコ
吊された少女
・自撮りする女たち・・・このページ、シリーズ7冊読破。

タグ:読書
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