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映画 幸せなひとりぼっち(2015スエーデン) [日記(2019)]

幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV) 幸せなひとりぼっち [Blu-ray] 原題”A Man Called Ove”。スエーデンの映画といえば、イングマール・ベルイマン、ラッセ・ハルストレムの伝統です。『幸せなひとりぼっち』は、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を越える人気で(私も賛成)、国民の5人に1人が観たそうです。ストーリーは至ってシンプル。59歳の初老の男の孤独と、老人と交わる周囲の人々との交流、団塊の世代が高齢になってこの手の映画は多いです。

 冒頭、2束70クローナの花束を1束レジに持って行き、35クローナで買おうとする老人が登場します。1束なら50クローナだと言う店員に「責任者を出せ!」。結局2束買って向かった先は妻の墓。家に帰ると町内を見回って分別されていないゴミに舌打ちし、不法駐車のNo.を手帳に控え、犬を散歩させる女性に「小便させるな!、今度したら電気柵を設けるぞ!」。犬はマーキングが習性ですからこれは無理(笑。この嫌味な初老の男オーヴェが主人公です。

 59歳になってオーヴェは43年間勤めた鉄道会社を馘になります(早期退職勧告)。オーヴェは家に帰ると髭を剃りネクタイを絞めて身なりを整え、先立たれた妻の元に行くため自殺を図ります。ロープを頚に巻き椅子を蹴ろうとしたその時、車通行禁止の道路に入る車を見つけ、注意するため自殺は中断。この車に乗って近所に引っ越してきた家族と関わりができ、迷い混んだ猫を飼うはめとなり、首吊りのロープが切れ...と自殺は遠退きます。当然、オーヴェはロープを買ったホームセンターに苦情を持ち込みます。オーヴェが妻の墓の前で、明日はお前の側に行くからと呟く姿は、高齢化社会と福祉国家スエーデンが(日本も同じく)抱える問題の根深さです。突き詰めればけっこう深刻な話なんですが、深刻にならずコメディタッチに仕上げるのがこの映画のいいところ。

  このオーヴェの自殺をめぐる話と共に描かれるのが、妻ソーニャとの出会いと結婚。オーヴェは、ソーニャに励まされて上級学校卒業資格をとり、事故で車椅子の生活となったソーニャを助け、初めての子供を亡くすという不幸にも見舞われますが、幸せな生活をおくって来たようです。車椅子ソーニャのために家を自力で改装し、ソーニャは教師の資格を得ますが車椅子のため就職先はありません。オーヴェは学校にスロープを作って教師への道を拓きます。
 退職してすることも無くなり天涯孤独のオーヴェが思い出すのはソーニャとともに過ごした日々。なかなかロマンティック。アンタの人生はそんなに捨てたもんではない、と言いたくなります。

 オーヴェの自殺願望は強いようで、線路に飛び込んだ青年を助けたついでに自殺を図り、車の排気ガス、猟銃と次々に試しますがその都度邪魔が入って失敗。心臓発作を起こしますが、隣人に発見され救急車で運ばれなかなか死ねません。
 死神に見放されたオーヴェは「無事」自殺できるのか?。ご近所があれこれ気遣い、オーヴェも嫌々ながらそれに答えますから、結末はだいたい想像がつきます。スエーデン国民(たぶん高齢者)の多くがオーヴェに自己投影し”オーヴェは私だ!”、と映画はヒットしたのでしょう。人間の深淵を描いたイングマール・ベルイマンよりも、ラッセ・ハルストレムに近い作風の映画です。60代以降にオススメ。本もあるらしいです。

監督:ハンネス・ホルム
出演:ロルフ・ラッスゴード バハール・パルス イーダ・エングヴォ

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